表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
285/940

285話 魔王からのメッセージ


〜勇者<マサル>side〜




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


勇者殿



貴殿の事情はおおよそ理解した。


ある日突然、望んだわけでもないのに異世界へ飛ばされて、教会関係者を頼るしかない状況に立たされたのだ。


貴殿が奴等の言葉を信じ、魔王を悪だと断じたのも無理からぬこと。


信心のない我から見ると、自分達の都合だけで突然他者の人生を壊して異世界へ呼び寄せるという、非情な事をする時点で、彼奴等は信用に値しないが……


他に寄るべがない状態でその価値観に染められたら、疑問を持つことさえ難しくなるのだな。



実際のところ、我も其方と似たような境遇なのだ。


平凡な学生として暮らしていたら、ある日突然クラスメイトと共に邪神に喚び出され、有無を言わせず魔王にされた。


幸か不幸か、我の学生生活はお世辞にも楽しいものではなかったし、学園の権力者に目を付けられていた故な……そこから脱出できたのはラッキーだった。


だが、巷で言われている「悪人の末路」を、思い当たる節もないのにある日突然自分が歩むハメになり、魔王になった当初は苦心したものだよ。


その後は、自分……そして大事な相手を守るために、ダンジョンを強化して侵入者を屠ってきた。


我々魔王を"悪"と断じる連中に情けをかければ、相手方に攻略情報が貯まってしまい、それがいつか我から大事なモノを奪い去るかもしれぬゆえ。


手加減はしなかったし、サイコパスかつ何一つ得られぬケチダンジョンとして、人々を遠ざけるための手段は選ばなかったぞ。


その結果、<恵のダンジョン>の悪名はとどろいた。



貴殿の事情は分かったが、それによって<恵のダンジョン>が本格的にマークされ、我の首元に刃が迫ったのもまた事実。


二つ返事で許すことはできないし、貴殿もまた、軍人や冒険者とはいえ"人間"を手にかけた我を許す必要などない。


だが現在、貴殿も我も教会勢力によって追い込まれており、我等が争うほど奴等が得をする状況なのだ。


それゆえ我は感情よりも実利をとり、貴殿に停戦を申し入れる。


貴殿にとっても、我を滅ぼす程の動機がなくなった今、悪くない提案だと思うぞ?



魔王<メグミ>


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






 俺が思いの丈を述べたところで目の前に宝箱が出現し、魔王<メグミ>からの誠意あふれる返答が届いた。


「ウッ……ウゥゥ…………ッ!!」



 不安だった……急に家族と切り離されて一人ぼっちになり、見知らぬ土地で、自分の力だけで生きていかなきゃいけなくなって……


 だけど魔王もまた、俺と同じような思いをして、たった一人で命を狙われる日々に耐える、癒えぬ孤独を味わったんだな。



 それなのに俺は、そんな相手にさらなる脅威を持ち込んで……チクショウ!


 言われてみれば、たしかに自分達の都合で勇者召喚する奴等なんてクソだし、そんな奴等を一時とはいえ信じた自分が情けない。



「魔王<メグミ>殿……停戦の申し入れ、受けさせていただきます。条件については一切文句を言いませんので、其方でお決めくださいませ」


 これで罪滅ぼしになるかと言われれば、教会の後ろ盾もなくなった元勇者なんて戦力……微妙すぎる供物だが、現在の俺にはコレしか差し出せない。


 この期に及んで些細な待遇でモメるなんてダサすぎるし、やり取りの中で「俺はコイツに勝てない」とハッキリ分かった以上、全面降伏する方がいいだろう。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


勇者殿



自ら権利を手放すのは感心しないが……このような条件でどうだろう?


我とて、我に害をなさぬ無垢な民を傷つけたくはないので、その辺については配慮してある。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜その1〜

本契約は、決して破れぬよう第三者の縛りによって結ばれる。


〜その2〜

勇者<マサル>は、恵のダンジョンにおいてオアシスフロア以外の立ち入りを禁ずる。ただし魔王<メグミ>が正式な書面にて許可した場合、この限りではない。


〜その3〜

勇者<マサル>がオアシスフロアに滞在する時は、前日までに魔王<メグミ>に連絡を入れることとする。なお、連絡手段の携帯電話は魔王<メグミ>から支給される。


〜その4〜

事前に要請があった場合、勇者<マサル>と魔王<メグミ>は互いに軍事同盟を結び、相手を支える努力をする。ただし双方が納得できない理由の場合、要請を断ることもできる。


〜その5〜

勇者<マサル>が定価の10倍の金額を払うことを条件に、魔王<メグミ>は勇者<マサル>へ、公に販売されていない自販機商品を販売する義務を負う。ただし武器および医薬品等、使い方を誤れば人災が起きる物品については、理由を説明したうえで断る権利を有する。


〜その6〜

魔王<メグミ>は、オアシスフロアに勇者<マサル>用の私室を用意して、勇者<マサル>が生涯そこで暮らせるよう備える。ただし過度な同伴者の連れ込みは、たとえ相手が一般女性であったとしても、"戦力"とみなして拒否する権限をもつ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 〜その3〜 勇者<マサル>がオアシスフロアに滞在する時は、前日までに魔王<メグミ>に連絡を入れることとする。 緊急的に勇者マサルが、戦力として、または、緊急的に避難するために、オアシスフロ…
[気になる点] 勇者、感染症大丈夫かな?
[一言] おー!良かった良かった 面倒見の良い大家の婆さんに 心強い用心棒までGET 更に最高の住環境になりそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ