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283話 アパートの大家やってる婆じゃん!


〜勇者<マサル>side〜




 俺が頭を掻きむしり呻いていると、酒を飲んでいい感じに酔っ払ったクリークさんが、周囲の住民達と話し始めた。


「プハー! 思ったより、勇者の兄ちゃんが"話の通じる奴"で安心したぜ」



「ガハハハハ。熊みたいな脳筋が来て、とって食われるかもって、恐怖で小便チビった奴もいたもんなぁ〜」


「クククッ。違いねぇ」



 貧困層が多く住む地域っていうのは、大抵治安も悪くギスギスしているものだけど、ここは住環境が快適なためか皆に余裕があり……


 探知スキルで調べても、強い負のオーラを放っている人の気配はない。



 いや、俺に対する敵意を持った住民なら数名いたな。


 だけどソレは当然のことだし……理由なく他者を害して金品を奪うような治安の悪さじゃないなら、問題もないのだろう。



「あれ? そういえばココ、男性ばかりしかいませんよね? クリークさん。女性や子供なんかは?」


「あぁ。兄ちゃんが来るからって、魔王様が念のために避難させていたぞ。ここに残っているのは、"殺されても自己責任"って覚悟を決めた奴だけだ」


「…………!!!?」



 慌ててクリークさんの心鏡こころかがみを覗いてみると、宣言通りの覚悟が映っていた。


 周りにいる住民達も、楽しく酒を飲んでいるが同じく覚悟をきめていたし……今更だけど、俺……相当迷惑をかけちまったんだな。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


心鏡こころかがみ


対話している相手の心情を、自分にしか見えない鏡越しに知ることができる。


その状態でマナをこめて心鏡を砕くと、鏡に映っていた感情は一時的に壊れ、相手の本音を(限定的にだが)変えられる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「マジですみません! 危険人物に見えるなら、このフロアを出るまで手錠とか嵌めておきますんで、遠慮なく指示してください」


 というか魔王さんよぉ……危ないと思っているなら、女子供だけじゃなくて、勇ましい男性陣も避難させてやってくれよ!






 クリークさん達は「気にすんな」と言ってくれたものの、気まずさからガチ飲みしてしまった俺は、情けなくもベロベロに酔っ払ってその場でダウン。


 起きた時には、ザラザラした床の跡がクッキリと頬につき、口内に残った僅かなゲロが酸っぱいニオイを漂わせていた。



「オェッ……寝落ちしちまったのかよ、最悪だ。でもまさか、魔王<メグミ>が俺に殺意を抱いていないとは……!」


 昨晩ベロンベロンに酔いながら、<オアシスフロア>の幹部達から話を聞かせてもらったのだが、今のところ彼等に俺の抹殺命令は出ていないらしい。


 それどころか、魔王<メグミ>はこれまでのフロアでも、幾度となく俺に手心を加えており、「条件次第では停戦もアリ」と考えているそうだ。



「俺が死んだところで、勇者の召喚枠が増えて、結局新たな勇者が連れて来られるだけだし、それだと消耗戦になるから俺を生かしたい……ねぇ」


 にわかには信じられない話だが、<映画視聴フロア>で絶望のドン底に落ちたとき等、本気なら俺を殺せる場面など幾らでもあったため、説得感がエグい。



 <オアシスフロア>の住民も、魔王<メグミ>と直接話す機会はなく、宝箱便で届く彼からのメッセージを元に、語ってくれたらしいが……


 もし魔王<メグミ>が俺に殺意を抱いていないなら、俺は今からでも詫びを入れて彼との関係を修復したいし、一度彼の考えを直接聞いてみたいと思う。


 とはいえ、勇者と魔王っていうのは相容れない存在なうえ、恨まれて粛正の機会を狙われている可能性もあるから、あと一歩が踏み込めないんだけど。






「う〜ん。まぁ確かにそうだよなぁ。じゃあ……アンタからも一度、魔王様に話しかけてみたらどうだ? タイミングが合えば宝箱便で返信くれるぜ」


「なるほど。このタイミングなら、彼は俺の動向をモニターで監視しているでしょうし、失礼を承知で話しかけてみます」



 俺と同じようにゲロリアンとなり、未だ二日酔いが治らず頭をさするクリークさんに、思い切って相談したところ……


 3秒で「監視している魔王<メグミ>に、直接思いの丈をぶつければいいじゃん!」と返ってきた。



 どうやら俺の予想以上に、<オアシスフロア>の住民と魔王の距離は近く、魔王は「アパート大家のお婆さん」のように彼等を見守っているみたい。


 話を聞くたびに、俺の中の"魔王のイメージ"がガラガラと崩れていくが、心鏡を見れば嘘をついていない事は分かるので、マジで"婆スタイル"なのだろう。



「ほらよ、此処だ。この祭壇の前で話しかけると、宝箱が出てきたとき見つけやすいから、皆コッソリ"お悩み相談"していたりするんだぜ」


「なるほど」



 回復魔法で二日酔いを治す代わりに、魔王<メグミ>とコンタクトをとる方法を教えてもらった俺は、半信半疑ながらも祭壇の前に座る。


 そして魔王を神様に見立てて、一応ペコリと頭を下げ思いの丈を述べた。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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