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277話 寝首掻いてくれねぇかなぁ


〜勇者<マサル>side〜




 気が狂いそうな程の絶望感と、脱力感に襲われた俺は、今日中の26階層攻略を諦めて眠ることにした。


「本当ダメだよな……俺…………」



 滞在時間が延びると延長料金を取られるし、こんな状態で眠ったら、諸々ぶっ壊れるどころか殺される可能性まであると、理解している。


 理解しているが……それでもいい、むしろ寝ている間に殺して……全て終わらせてくれと、思ってしまったのだ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜<映画鑑賞フロア>のルール説明〜



このフロアでは、挑戦者全員に素敵な映画を視聴していただき、その感想文を書いてもらいます。


視聴部屋の中は「モンスターが出ない安全地帯」となっておりますが、滞在時間が1日を超えると、延長料金(1日あたり1万バイト)が発生。


払えない場合、23階層に戻って<アルバイトフロア>で強制労働してもらいますので、財布と相談して滞在時間を決めてください。


感想文は、「5000文字以上で意見をキッチリ書けているもの」のみ受け付けます。


他の視聴者に意見を聞いたり、不正を行おうとした者にはペナルティーがありますので、誠意をもって取り組んでください。


連絡を取ろうとした段階で不正予備軍として注意し、注意2回でペナルティーとなります。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「当然、ルールの下にある不正行為一覧に"モンスターの召喚"も入っているから、完全無防備な状態で寝るしかないわけだけど……。ダンマスさんよぉ〜」


 寝首をかくなら、せめて苦しまない方法で始末してくれよ。


 それなら恨まないし、望むなら「アイテムボックスの中に入っている私財」も全てあげるからさぁ。



 そんな事を思い、アイテムボックスをひっくり返して私財を出した俺は、それ等を全て床に置き……


 イスに敷いていた古着を枕代わりにして、現実逃避するように目を閉じた。






 しかし現実は非情なもので……俺は殺されることも捕えられることもなく、五体満足のまま目覚めた。


 唯一の変化は、床に置いた"ダンジョン内通貨"が減っている点か。



 魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>の裏切りに、よほどショックを受けたのだろう。


 俺は飯すら食わずに丸3日眠っており、延長料金の3万バイトが徴収されていたのだ。



「近くの床に置いてあった金を取ったって事は、魔王側の誰かが俺のすぐ側まで来たんだよな? ついでに、寝首でも掻いていきゃ良かったのに」


 自分でも投げやりになっており、気持ちを立て直さなければならない事は分かっているが、その活力が湧いてこない。



 あの映像を見せられた直後に比べると、幾分マシにはなったし、水を飲んだりトイレに行く余裕くらいは出てきたが……


 まだ何も考えたくない気分だし、自分でも怖いくらいに表情筋が動かなくなってしまっている。



「宿代は7万バイト残っている。つまり、もう少しゆっくりしても平気な訳で……ちょいボーッとさせてもらおう」


 寝ている間に<聖者の祈り>が消え、残金7万バイトじゃきっとこの先どこかで詰むことも、頭では理解しているけど……いいんだ。



 現在の俺は、心のエネルギーが枯渇して動けなくなっている状態。


 そんな時に何かをしようと思っても出来るわけないし、その失敗でさらに自己嫌悪して負のスパイラルに入ってしまうから、今はひたすら休むしかない。






 結局、俺はその後もダラダラと休み続け……バイト代が尽きたところで、映画の感想文を書き26階層を出た。


 ひたすら食っちゃ寝したおかげで体調が戻り、それに伴って心の傷も少しは癒えたため、改めて映画の振り返りをすることが出来たのだ。



「うん、しゃあねぇよ。俺だって、アイツ等と一緒に修道士<ジン>の悪口言っていたし、勝手に動いてアイツ等の立場を悪くしちまったのは事実だもん」


 もちろん彼女達とは二度と会いたくないし、恋心も消え失せたが、30%くらいは「失恋した過去の出来事」として割り切れた。


 まだうまく笑えないし、生きている意味も見出せないけど……ドン底は乗り越えたので、あとは時間が解決してくれると思う。



「不思議なのは、なぜ俺が凹んでいる間に魔王<メグミ>が手を出さなかったか……だよなぁ〜。いくらでも殺せる隙はあった筈だけど」


 もしかして、俺が絶望するさまを見て嘲笑っていたとか?



 いや、でもさ……俺だって、曲がりなりにも元勇者だぞ。


 魔王にとっては「一刻も早く殺したい天敵」なのに、自分のマウント欲を満たすためだけに、俺を生かし続けるか?



「まぁいいや。命拾いしたのは事実だし、"借り1"と思っておこう。それにしても、27階層<内職フロア>が楽チンで良かった〜」


 「脂取り紙の袋詰め」を1万セットやるまで出られないし、もらえる給料も端金だから、貧乏暮らし未経験者にはキツイけど……


 日本にいた頃、バイト三昧していた経験のある俺に取っては楽勝だぜ!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
勇者…すごいな…肉体的な苦痛ならステータスがあるから耐えれるだろうけど、精神ここまで削られて前向いて「しゃーない」って飲み込む努力するなんて、本当の勇者だよ。
[一言] 脳が破壊されてる…
[一言] え、なんでこいつ立ち直ってんの……? 笑
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