275話 停戦に向けて
〜メグミside〜
全てを燃やして炭にするという方法で、胃腸と肛門が終わる<早食いフロア>を乗り切った勇者<マサル>は……
25階層を出て安全地帯に入った後、すぐに胃に残った内容物を吐き出し、ポーションと回復魔法・浄化魔法の併用で、ダメージを最小限に抑えた。
だが……さすがに、大量のスパイスを食わされて身体も悲鳴をあげたのか……ホッとしたのも束の間、(コッソリ持っていたと思われる)痔が爆発して終了。
絶叫しながらピョンピョン飛び跳ねたり、床に諸々撒き散らしたりと、ハッキリ言って超迷惑だったよ。
「ただまぁ、なんだかなぁ〜。炭化するまで飯を燃やして滅菌したうえ、上・下両方からあそこまで排泄されると、寄生虫や病原菌は何の役にも立たないのか」
停戦協定を結ぶ可能性がある相手を、寄生虫の宿主にして殺す気などないので、それ自体は別に構わないが……
今後アイツと同じ手段で、25階層をかわす相手が出てきた時のためにも、「<早食いフロア>の弱点」として認識しておく必要がある。
「あらら。イスの上に古着を重ねてクッションにしちゃった。自分で用意しておいてなんだけど……そんなに、"激辛×粗末なイス"のコンボって嫌なのかね?」
僕は、身をもって<早食いフロア>の激辛料理を完食した訳じゃないし、そこまでケツ事情が悪化したこともないので、イマイチよく分からないよ。
以前ハイドン達も、<早食いフロア>で勘違いして「運営規約違反だ! チクってやる!」と騒いでいたが……
コチラは「誰が食ったか」をボカしただけで、事実しか書いていないので、「嘘つき」呼ばわりされるのは心外だ。
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〜<早食いフロア>のルール説明〜
その1:レベル1〜レベル5の料理が順番に出てくるので、それを時間内に食べ切ってください。
出てくる料理は全て、ダンジョンマスターが制限時間内に食べきれたメニュー……人間に食べられないモノは出てきません。
スープ含めて"お残し"厳禁。作った料理人に感謝して、最後まで食べましょう。
3回失敗した者には、重いペナルティーを受けてもらいます。
全ての料理を食べ終えるまで回復魔法は使用禁止なので、心してチャレンジしてください。
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実際に<早食いフロア>の鬼畜飯を味見したのは、大地獄ルーレットで18禁動画を撮影されるハメになった、ロミオット・ホムビッツ・ナステックの3人。
奴等は、屈強なオリハルコンゴーレムに身動きをとれなくされたうえで、巨大漏斗を口に押し入れられ、鬼畜飯を直接胃にブチ込まれた訳だが……
その状況になったとき、まだ奴等は生きておりダンジョンマスターだったので、ルール説明の記載に嘘はない。
僕は、こう書けば「それほど酷いモノは出ないかな?」と侵入者を勘違いさせられるし、レベル1の料理を見たときのショックも大きい……
と考え、あえて表現をボカしただけだ。
「まぁでも……勇者君、安心してよ。停戦の申し込みをする前に恨まれても困るんで、君へ今後出す激辛飯には"ドブ食材"を使わないようにするから!」
<早食いフロア>では、仕様上「ロミオット達が食べた鬼畜飯を再現したもの」しか出せないので、食材があんな事になっちゃったけど……
僕はアンタが停戦の申し出を拒否するまでは、極力穏和な対応を心がけるつもりだし、悪意を具現化してぶつけるつもりもないんだよ。
「あっ、"例の映像"が流れ始めた。勇者の反応も上々……このまま、魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>の本性を知り幻滅してくれ」
停戦協定を結ぶにしても、勇者<マサル>にだって背負っているものはあるし、アイツの人間関係を無視して事を進めると、後々墓穴を掘る可能性が高い。
そのため僕は、26階層<映画鑑賞フロア>の設備を利用して、アイツに「撮れたてホヤホヤのスクープ映像」を見てもらい……
尻軽女3人への恋愛感情を断ち切らせるところから、始めなきゃいけないと思ったんだよ。
僕の手駒はモンスターばかりなので、魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>がいる教会の総本山で、衝撃映像を撮るのは骨が折れたけど……
<農民>同盟と取引して各所にカメラを設置してもらい、彼女達の行動範囲に"数の攻め"で罠を張ったら、「いい感じに勇者を罵倒している映像」が撮れた。
監視カメラには気配がないので、設置場所の清掃や修理をされない限り、見つかって撤去される可能性は低いし……
そもそもこの世界に、カメラみたいな「超技術を駆使した代物」は出回っていないから、仮に発見されたとしても致命傷にはならないはずだ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






