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274話 愛した女の裏の顔

明けましておめでとうございますm(_ _)m


今年もよろしくお願いします!


〜勇者<マサル>side〜




 致死量を完全にオーバーするまで激辛料理を食べさせ、爆発したケツに"殺意増し増しのイス"でトドメを刺すとか、悪意あり過ぎだ。


「座布団なんて持ってきてないよなぁ〜。何か敷ける物とかあったっけ?」



 殴っても壊れなさそうな金属でできたイスは、中央部分が露骨に盛り上がっており、どう考えても"座るとケツに負担がかかる"構造。


 そんなイスに座って映画なんか視聴させられたら、下痢と圧力のダブルコンボに意識を持っていかれて、感想を書く余裕など残らないだろう。



「あっ、そうか。イスの上に服を何十枚も重ねれば、それなりにフカフカしたクッションになるかも」


 ゲスくて徹底された嫌がらせに絶望していた俺は、アイテムボックスから使用済みの服を取り出して、「痔のクッション」を意識しながら積み重ねていく。



 着飾るのが大好きな、魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>とは違い、俺は勇者だけど「この世界の服のクオリティー」に耐えきれず……


 それほど枚数を持っていなかったため、限界はあったが、足りない分はモンスターの毛皮や納品袋を敷くことで補って、なんとか危機を回避。



 それでも長期間ケツに負担をかけ続けると、本格的に症状が悪化して、女性と交わるとき痔で恥をかいてしまうので……


 「辛くなったら空気イスに切り替える」と心に決め、「映画の上映を始めてくれ」と、監視カメラの向こう側にいるオートマタへ頼んだ。






<−−− かしこまりました。只今より上映を開始します −−−>


 人の神経を逆撫でする天才である魔王<メグミ>が、わざわざこんな奥深くの階層で上映する映画なんて……



 絶対「俺の失態をまとめた恥ずかしい映像」だと思ったが、映し出されたのは、つい先日まで俺が住んでいた教会の総本山がある街。


 そして……そこで3人集まり、俺の悪口に花を咲かせる魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>の姿だった。



『あ〜ぁ、なんであんな粗チン野郎に惚れていたのかしら。お陰で出世ルートから外されかけるわ、同期の連中に蔑まれるわ。もう限界!』


『マジで最悪よね〜。なんとか次期勇者のパーティーメンバー候補に返り咲いたけど、最有力候補を潰さないと、私達に勝ち目はないわよ!』


『ホント、あの粗チン野郎は疫病神ね。大人しく、命じられた仕事だけこなしていればいいものを……とんだ貧乏クジを引かされたわ』



 ついこの間まで、俺のことを「素敵。最高の男」と称えてくれていた筈なのに……


 目の前のモニターに映っているのは、優しく慈愛に溢れた自慢の彼女ではなく、見栄とプライドで堕ちるところまで堕ちた性悪女だった。






「いや違う。きっとドッペルゲンガーが、彼女たちの容姿をマネて、俺を陥れようとしているんだ! そうに違いない!」


 頭の中であらゆる可能性を考え、最低限の防衛意識すらかなぐり捨てて、全集中でモニターを凝視するが……俺だって、本当は分かっている。



 ドッペルゲンガーが再現できるのはターゲットの容姿だけで、彼女たちの背後に見える馴染み深い景色までは、コピーできないと。


 また魔王<メグミ>が、ダンジョンマスターの力を使って風景ごと再現したとしても、ここまで高い精度でパクれる筈などないことを。



 ただ、それでも……俺は本気で彼女達のことを愛していたし、こんなにアッサリと裏切られた事実を認められないのだ。


 認めたら心が壊れてしまいそうで、到底受け入れられない。



『ハァ〜。次期勇者のパーティー候補になるのに、何人の幹部と枕営業するハメになったか! 奴等、足元見て小遣いケチってくるし』


『でも数打ったから軍資金にはなったじゃん。もし次期勇者のパーティーメンバーになれなかったら、引退して贅沢三昧するのもアリかもよ』



『まぁそうなったら出世は絶望的だし、ほとぼりが冷め次第抜けるのは良い案だと思うけど、一人になると"粗チン野郎"がヒモしに押しかけるかも』


『うわっ、最悪! もしそうなったら、寝ている間に毒でも飲ませて財布だけ回収するわ』






 俺が打ちひしがれている間にも、魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>の暴言映像は流れ続け、心に二の矢・三の矢を放ってきた。


 もし映像が編集されていれば、コンテンツ自体も"切り取り"で捏造したと思えるけど、「素人が撮った下手くそな動画」が流れているだけの状態だからなぁ。


 動画周りの処理が拙過ぎて、素人の俺でも編集点は殆どないと丸分かりだし、捏造ではなく「撮ったものをそのまま出した」と理解できてしまうのが辛い。



「上の階層で、モニターに映っていたゴシップ雑誌の記事……。あれも、無理やり協力させられたとか嘘っぱちじゃなくて……彼女達自身の意思……なのか?」


 認めたくない。


 だが……さっきの発言で彼女達の本性を知ってしまった以上、もう俺は魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>を愛せないだろう。



<−−− 以上で上映を終わります。5000文字以上の感想文を書いて、提出してください −−−>


 感想?


 そんなの、狂いそうな程の絶望しかないよ。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで来て怒りに身を任せず、心も折れず、最善を尽くそうとするマサル。 いや、女癖の悪さ加味しても人間的にマジで尊敬するわ。 作品違えば完璧な主人公ムーブだわ。 [一言] よくもまぁ、こ…
[一言] 勇者、さすがに可哀想すぎる…。
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