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272話 人間を内部から破壊する




 俺の前に出された「養殖ゴキブリの辛々炒め」なる物を、改めて見つめると、激辛ソースの中で「ピクッ! ピクッ!」と足を動かす特級呪物ゴキブリ


 そう……この料理?のメイン食材であるゴキブリは、激辛ソースと絡ませてあるだけで、ろくに火が通っていないのだ。



「おどり食いにしてもタチ悪すぎ。もし魔王<メグミ>が本当にコレを食ったんだとしたら、俺は土下座で降伏宣言するぜ。マジで、人間の食いもんじゃねぇ」


 微妙に焼かれて死の間際にいるゴキブリが、それでも逃げようと足を動かしもだえる様子は、極限まで食う側の食欲を減退させる悍ましさだ。



「とはいえ……もし時間内に食い切れなくても、完食しないと次の料理へ進めないっぽいから、俺には"食う"選択肢しかねぇんだよなぁ。ハァ〜」


 なんで俺、誰に頼まれた訳でもないのに<恵のダンジョン>でこんな思いをしているんだろう?



 もし<オアシスフロア>の住民が無理やり囲われているというなら、こういう鬼畜試練だろうと、挫けずに立ち向かえるが……


 彼等は自分の意思でココに定住しているだけだし、なんだったら今も俺の醜態をモニターで見せてもらって、ゴシップ誌の代わりにしているかもしれない。






<−−− 残り、20分です −−−>


「あぁ、分かったよ。食えばいいんだろ!?」



 オートマタによる無機質なアナウンスを受けて、ヤケになった俺は……ピクピクしているゴキブリ達を、炭化するまで丁寧に燃やしてすり潰した。


 そして"原型が分からぬよう"完全に証拠隠滅した後、彼女3人と過ごした夜を思い出して意識を逸らしながら、出来上がった激辛炭団子を食べる。



<−−− 残り時間3分でチャレンジ成功、おめでとうございます。"レベル3の料理"へ、5時間以内に挑戦してください −−−>


「ふぅ〜。なんとか完食! さすがに、あれだけ燃やせば病原菌も死んでいるだろう。もしかすると魔王<メグミ>も、こんな感じで無理やり食ったのかもな」



 もう十分過ぎるほど「鬼畜料理の早食い」には付き合ったし、本音を言えば、この休憩時間に<万能スコップ>で床を掘り26階層へ降りたいが……


 このフロアは、俺みたいなチート野郎を想定したのか、正規ルートじゃないと通り抜け出来ない構造になっている。


 部屋へ入る時点で挑戦者の手形を認証し、出る時用の認証装置も部屋に置かれているため、ズルして下へ降りるとその痕跡が残ってしまうのだ!



 この場を切り抜けるだけなら<万能スコップ>一発で解決だが、下で「この人は不正しています」云々言われて、シャットアウトされる可能性を考えると……


 地獄から逃げる手段があるにも関わらず、大人しく出された鬼畜飯を食い、正規ルートを進むしかないのである。



「休憩終わり! とっとと、次の鬼畜飯を持ってこい!」


<−−− レベル3のメニューは、ドブネズミのスパイス漬けです。風味豊かなドブネズミと、たっぷり染みこんだピリ辛ソースの味をお楽しみください −−−>



「…………。(このドブネズミも、<汚物フロア>産じゃねぇかよ! しかも保管状態が悪くて腐臭を放っているし)」


 俺が凹もうが発狂しようが、<恵のダンジョン>は嬉々として「どう考えても食い物じゃないブツ」を出してくるため……


 「やるしかない」と分かっていても、手早くパパッと済ませる事はできないのだが。






<−−− 残り時間1分でチャレンジ成功、おめでとうございます。"レベル4の料理"へ、5時間以内に挑戦してください −−−>


 「ゴキブリの辛々炒め」と同じ方法で、「ドブネズミのスパイス漬け」を胃袋に収めた俺は、達成感などカケラもない気持ちでアナウンスを聞く。



 これでレベル4〜5を失敗しても、25階層突破の条件は満たした事になるため、本来なら喜ばしい話なのだが……


 異物を取りこみすぎたせいで既に胃が崩壊の危機だし、頭も痛くなってきて、本格的な体調不良におちいったからだ。



 だからと言ってこの場で眠れば、給仕係を務めているオリハルコンゴーレムが、即刻俺の頭をカチ割って殺すかもしれないし……


 スライムを寝袋にしてガードしようにも、規約に触れて先へ進めなくなる可能性があるため、回復するまで寝ることすらできない。


 そもそも2日目に突入すると、宿泊料として"10万バイト"没収されるから、無一文になりたくなければ1日で無理やりクリアするしかないしな。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


その4:早食い部屋には、必ず1人(または1体)で入ってください。

もし不正が発覚した場合、内部の者が全員死亡するまで部屋のドアが開かなくなります。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「つ、次の料理を……」


<−−− レベル4のメニューは、"目玉のスパイス詰め"です。つるんとした食感と、シンプルな辛さをお楽しみください −−−>



 今回はゲテモノ感が薄いけど、その代わり……この量のスパイスは、一気食いしたら致死量に達すると思うんだ………………より悪質だぜ。


 一眼巨人のデカい眼球に、ここぞとばかりにスパイスを詰めてんじゃねぇよ!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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