268話 勇者<マサル>の進路希望
メグミが今後の方針を固めて、砂龍の扱いについて悩んでいる頃……
21階層でようやくマトモな休憩をとれた勇者<マサル>は、この先どんな鬼畜フロアが待っているか分からないため、ここぞとばかりに休んでいた。
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〜勇者<マサル>side〜
「ふわぁ〜、眠い。何も考えず布団に包まりたい。でも、此処でデスマーチしているうちに随分痩せちまったからなぁ。もうちょい食い溜めしておかないと」
勇者時代、180cm・75kgで維持していた俺の体重は、<恵のダンジョン>で極限の生活をおくる間にみるみると落ち、70kgを切ってしまった。
落ちたのが贅肉なら「ダイエット成功」で済む話だけど、元々体脂肪率1桁だった俺の場合、確実に"筋肉が削がれたカタチ"なので……
これ以上の体重ダウンは致命的。
何としてでもコンディションを戻して、70kg以上の体重を維持しないと、いくら優れたステータスを持つ勇者とはいえ、基礎体力不足で参ってしまう。
そして敵地である<恵のダンジョン>で、露骨に弱った俺を待っているのは、尊厳を破壊し尽くしてからの処刑一択ゆえ……
1秒でも早く先へ進みたいこの状況でも、ゆっくり休んで回復しなければならないのだ!
ただ、もちろん食っちゃ寝しているだけでなく……回復後の探索をスムーズに進めるため、召喚モンスターに21階層の様子を探らせている。
<MAP>持ちの俺が直接調べるのに比べれば、そりゃあ精度は劣るけど、疲れていて端の方まで調べられない今の状況でも、代わりがきくのは助かるよ。
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〜MAP〜
頭の中に地図を思い浮かべ、現在自分が何処にいるのかを把握できる能力。
バカでも半径1kmは調べられるが、それ以上は使用者が賢くないと処理能力が追いつかなくなり、頭がパンクして気がふれてしまう。
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「おぉ、帰ってきたか。お疲れさん。ソッチの方はどうだった? ふむ、なるほど。横の壁に仕掛けアリ……ね」
さすが、"性悪"なことで知られる魔王<メグミ>というべきか……21階層<手形フロア>は、端に行くほど「一発アウトな罠」が仕掛けられていた。
また罠の数が20階層までの比じゃないため、21階層からは「侵入者を本気で仕留めるエリア」に入ったと考えていいだろう。
「ククッ。ビビリな連中なら落ちこむかもしれねぇが、俺にとっちゃあ嬉しい話だ。"本気で仕留める"って事は、それだけ最下層に近づいたって意味だもんなぁ」
俺の目的は、あくまでも<恵のダンジョン>の対処。
勇者をクビになり、教会に騙されていたことが分かった現在……自分の正義を盲信して、<恵のダンジョン>を一方的に断罪する気はないけど……
それでも納得できない部分はあるし、ケリをつけたいから命懸けで潜っているわけで、早く<オアシスフロア>か<コアルーム>へたどり着きたい。
そして自分がどうしたいのか・どうするべきなのかを、改めて考えて、「勇者<マサル>の幕引きとなる仕事」に繋げるべきだ!
「地上に出た後はどうしようかなぁ〜。日本にいた頃、ラノベで読んだ"教会が害悪パターンの勇者転生"だと、俺の状況は詰みに近いし。困ったもんだぜ」
さすがに苦楽を共にしたパーティーメンバーである、魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>は、話せば協力してくれると思うが……
魔王<メグミ>に見せられたゴシップ誌が、マジで刊行されたものだとすると、教会の息がかかった組織には就職できないし、最悪"国から締め出される"。
「だからと言って、教会に飼い殺されたままブラック労働を続ける未来を選ぶくらいなら、苦労してでも自分の脚で歩く方を選ぶけど……」
<恵のダンジョン>とケリをつけて、此処を出たあとの身の処し方は、今から考えておかないと後々困る超重要事項だ。
「ん……そろそろ3時間経つな。睡眠時用の<能力玉>をもう1セットきめて、3時間爆睡したらダンジョン探索を再開しよう」
スピーディーな攻略を諦めて体調回復に努めたため、<スキル図鑑>ギフトの欠点である貧血は落ち着いてきたし、飯を食べて身体も温まった。
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〜スキル図鑑〜
相手の許可を得ることで、スキルおよびギフトが図鑑に登録され、登録された任意の能力を一時的に模倣できる、特殊な<能力玉>を生みだせるようになる。
ただし<能力玉>をつくる際は、己の血とHPを対価として捧げる必要があり、事前準備ナシでは役に立たない。
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21階層は、入り口に貼ってあったルールを読む限り、時間制限ナシの"足止めフロア"だから、端の方に行かなければ比較的安全だけど……
あまりにダラダラと休みすぎて魔王<メグミ>を苛立たせ、四方八方からモンスターに攻められると、リンチみたいになって詰みかねないんだよ。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






