266話 本能が序列を求めるんだ
<恵のダンジョン>は僕の城だけど、だからといって独断専行でこんな重要事項を決めると、後々シコリが残るので……
僕はサーシャを呼んで、モンティート先輩のメールを見せた上で、彼女の気持ちを聞かせてもらった。
「うん。別にいいんじゃない? コアルームに入れるとか、メグミ君が"自由に動ける状態の勇者"と対面するのはダメだけど、協定を結ぶだけなら私は賛成!」
一般的に、女性は男性に比べてリスクを取りたがらない傾向にあるから、てっきりサーシャは反対するかと思ったけど……
顔色一つ変えずに即"OK"を出すあたり、彼女の心臓には剛毛が生えていると思う。(もちろん、その毛も可愛いし触りたい!)
「ちなみに、"賛成"の理由を聞いていい?」
「そりゃあ……勇者<マサル>を倒したところで、定期的に勇者襲撃が起きるなら、戦力を削ってまで頑張る意味ないし……」
ないし……?
「その度に、ダンジョンの防衛で離れ離れになるのは寂しいもん! それに命のやり取りでストレスを受けて、メグミ君が老けちゃうのは嫌だ!!」
え〜〜〜〜。
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メグミ(17)
種族:魔人族(魔王)
職業:ダンジョンマスター・勇者
HP:49869/49869
MP:77090/77090
スキル:剣術C・狙撃F・噛みつきE・火魔法S・水魔法S・風魔法S・土魔法A・氷魔法D・回復魔法S・聖魔法SS・闇魔法B・遠視F・物理耐性B・精神耐性A・呪縛耐性C・お笑い耐性E・アイテムボックスA
ギフト:自販機作製S・統率A・聖者の祈りA・看破B・火魔法の才B・水魔法の才SS・土魔法の才C・風魔法の才C・ゴーレムマスターB・透明化E・魅惑の蝶D・龍の涙C・若返りC・変身E・鑑定C・偽装C・水分身D・改造阻害E・遠隔商談E
その他:称号(蟻マスター・異端児・超新星・ゲス鬼畜・ドラゴンキラー・水龍殺し・モンスターの天敵・ジジィ狩り・魔王を狩る魔王・クズキラー・報復ソムリエ)
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一応僕には<若返り>ギフトがあるから、勇者襲来のストレスで老けることはないだろうけど……
巻き込まれたサーシャがストレスを受けて、お肌とかスタイルに支障が出る可能性はあるので、彼女の言い分も一理ある。
別に僕は、サーシャがお婆ちゃん姿になったところで、愛せる自信があるし全然構わないんだけど……
女性にとって「自分の容姿」というのは、自己肯定感に関わる超重要なファクターだから、僕の事情に巻き込んでサーシャを老けさせるのは絶対にNGだ!
「じゃあ、とりあえずサーシャは"賛成"ってことで……。次は、ウチのモンスター達に許可取りしてくるよ」
「うん。頑張って! あっ、メグミ君。OK出したけど……あくまでも私は、"メグミ君にとって有利な停戦協定"なら賛成……なんだからね」
「えっ?」
「面倒かもしれないけど、勇者<マサル>が泣きながら命乞いするところまで追い込んで、メグミ君にとって都合がいい条件を押し付けるんだよ!」
「イェッサー! 死ぬ気で頑張ります!」
勇者<マサル>が聞いたら泣きそうなセリフを残して、サーシャは自分の仕事に戻ったため、僕は知性あるモンスター達を集めて"停戦協定の件"を報告。
新入りやランクが低いモンスター達にも、知性がある者には発言権を認めて、話し合いをおこなわせた。
「私は、いいと思いますよ。打算的に考えたら、停戦の方がウチにとって好都合。"勇者の裏切り"も抑え込める可能性が高いなら、戦い続ける意味がありません」
「ボクハ、ハンタイデス。ケッチャク、ツケナイト、ドチラガウエカ、ワカラナイカラ」
「最低でも、ウチに被害を出した分の"ケジメ"はつけさせるべきですよね〜。二度とウチに手を出せぬよう、ばら撒かれたらマズイ映像でも撮りませんか?」
様々な意見が出たが、全体的には「条件付き賛成」が多数派であり、反対理由も「どちらが上かハッキリさせないと、勇者がつけ上がる」というものだった。
モンスターの社会は実力主義ゆえ、勇者<マサル>と停戦協定を結ぶにしても、上下関係がハッキリするまで戦った後じゃないと、スッキリしないらしい。
こればかりは本能的なものだから、説得云々でどうにかなるとは思えないし、サーシャの希望にも沿う形になるので、彼等の意向を汲むべきだろう。
「でも、いいの? あの勇者と上下関係がハッキリするまで戦うって事は、より多くの殉職者が出るし、後遺症が残る子もいるかもしれないけど……」
「「「「「「「「「「カマイマセン!」」」」」」」」」」
「マスター。戦って敗れ散るのは、我々モンスターにとって"納得できる最期"ですし、そこまで恐れる必要ないですよ」
「そうかな?」
「はい。<恵のダンジョン>から所属が外れてしまうのは残念ですが、これだけ良い生活環境を与えられて、殉職を恐れる臆病者なんてウチにはいません!」
「執事君……」
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






