260話 2連続「冷凍庫」の絶望
〜勇者<マサル>side〜
全身を駆け巡るスーッとした清涼感と、凍えるような寒さのコンボに耐えきれなくなった俺は、否応なくギフト玉をつくり……
気温の影響を一切受けない、オリハルコンゴーレムに姿を変えた。
「ふぅ〜。これで凍死の心配はなくなった! でも早急に15階層を抜けないと、3時間おきにギフト玉を作るハメになり、いずれ限界が来る。だから……」
「睡魔に耐えきれず爆睡してしまい、そのまま<変化>が解けて人間の姿に戻り、凍死する展開」を避けるためにも、早急にココから動かなければならない。
「しかし……明かり一つねぇうえ、歩くたびに足をとられる砂漠の地面は"昼間と同じ"とか……夜の砂漠も、結構恐ろしいんだな」
俺は、<MAP>という能力を使って位置を把握できるので、気力・体力さえもてば一人で対処できるけど、普通の奴等は迷子になっちまうよ。
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〜MAP〜
頭の中に地図を思い浮かべ、現在自分が何処にいるのかを把握できる能力。
バカでも半径1kmは調べられるが、それ以上は使用者が賢くないと処理能力が追いつかなくなり、頭がパンクして気がふれてしまう。
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「ハァ……ハァ……ハァ…………」
人間の姿に戻るたびに震えながらギフト玉をつくり、オリハルコンゴーレムに化けて歩き続けること14時間。
俺はようやく15階層の出口にたどり着き、極寒地獄に別れを告げた。
「よっしゃあ! 16階層に降りれば、このキチガイみたいな環境ともお別れ。早く太陽の下で爆睡して、このハッカ油を揮発させたいぜ!」
15階層でも多少は揮発してくれたが、乾くたびにハッカ油の雨が降るわ、モンスターが自爆特攻でハッカ油をかけに来るわ……悲惨だったからな。
でも、それも後少しで終わりだと思うとホッとする。
きっと16階層からはまた"灼熱地獄"に戻って、「覚悟を決めれば寝られる場所」もいずれ見つかるだろう。
<−−− スタスタスタスタ……ウィーン、ガチャッ! −−−>
「えっ? マジかよ! 嘘だろ、おぃ……」
そう期待して足早に階段を下り、16階層へ突入した俺が目にしたもの。
それは「サボテンが生えているところ以外、15階層とほとんど変わらない構造で、キンキンに冷えた砂漠」だった。
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〜16階層:サボテンフロア〜
一日中"夜モード"で真っ暗なフロア。
数多のサボテン型モンスターがはびこっており、侵入者を針で攻撃してやる気を削ぐ。
また、このフロアに生息するサボテンは全種類、茎を割っても水を回収できないタイプである。
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「あぁ……これはヤバ過ぎるだろう。また何時間歩けば出られるか分らねぇ砂漠を進むなんて、心身もたねぇぞ……」
自分の足で歩くのが大変なら、飛行系モンスターに頼ればいいって?
無理なんだよ……このフロアの気温が低すぎて、喚べる飛行系モンスターが限られるうえ、ゴーレムの身体が重すぎて運んでもらえないから。
俺だって勇者だし、召喚のレパートリーもある程度揃っているんだけど、変温動物であるドラゴン種が軒並みアウトなのがキツイ。
というか……<恵のダンジョン>は「暑さ・乾き・拷問・搾取」で知られており、こんな寒いフロアがあるなんて予想していなかったのだ!
ゆえに俺は寒冷地用の準備をしておらず、得意属性もこういう場面じゃ役に立たない<聖>なので、自力で移動するしかない。
「でも、もう我慢の限界だ。とにかく眠いし、こんな状態で移動しても途中で力尽きちまう。諦めてココで眠ろう」
俺の防具は上下共にハッカ油が染みており、装着していても足を引っ張るだけなので、人間姿に戻る前に急いで脱ぎアイテムボックスへ放りこむ。
そして水魔法で生み出したシャワー浴びて、多少なりともハッカ油を洗い落とし、パジャマに着替えて簡易テントを設置した。
「お前達……3時間経ったら、俺が気絶するように眠っていても絶対に起こしてくれ! 最悪、ボコボコに殴って無理やり起こしてもいい」
「「「カシコマリマシタ」」」
石鹸ナシの簡易シャワーじゃ、当然ハッカ油は落とし切れておらず……もし爆睡中、人間姿に戻ったら、そのまま「凍死コース」一直線なので……
護衛用のゴーレムを外に配置したあと、テントの中に入って防音目的で結界を張り、再びギフト玉を作って"ゴーレム化"できる時間を伸ばす。
そして寝袋の中に潜りこみ、アラームをセットして目を閉じた。
「(あ〜ぁ。こんな事になるなら、もうちょい準備期間を伸ばして"あらゆる可能性"に備えておけばよかったぜ。ままならねぇなぁ〜)」
準備不足と己の不甲斐なさを反省し、「同じミスは二度と繰り返さない」と誓いながら。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






