２５４話 言葉攻め
〜勇者＜マサル＞side〜
しばらく寝て英気を養えば、中ボス部屋までスピーディーに突破できると思ったが、ここの魔王は想像以上の性悪だった。
「ウゼェ。高低差があってスライム任せで進むわけにもいかねぇ＜立体迷路＞で、床に"汚物付きの割れガラス"がぶち撒けられているとか……」
歩きにくいわ、適当に手を置くとガラス片でケガをして、そこから感染症になりかねないわで、全然スピーディーに進めねぇよ。
オマケに暑い！
砂漠の真ん中にあるダンジョンだけあって、火属性ダンジョンに匹敵するレベルの、灼熱&乾燥地獄。
しかも「最弱だが厄介なモンスター」として名高いモスキートが、常時2〜3匹、俺の周りを飛び回っており……
「プ〜ン♪」という音を聞くたびストレスを感じ、かといって殺すだけ時間のムダなので、なされるがまま耐えるしかない状況だ。
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5〜6階層：クイズ付き立体迷路（分断仕様）
7階層：毒ガス砂漠（イッシャクムカデ担当）
8階層：毒ガス迷路（スライム担当）
9階層：汚物フロア
10階層：中ボス部屋（オイルスライム担当）
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というか何だよ、あの「己を見つめ直すクイズ」という名の尊厳破壊工作は！
知識や知恵を問うだけの問題なら、＜天才＞の"ギフト玉"を食べれば万事解決なのに、「俺の寝姿写真+性事情に関する問題」を出されて……
思わずその場で祈り直し、余分にMPを消費してまで、＜聖者の祈り＞によるダンジョン管理制限を強めちまったぜ。
「で……最後の足掻きと言わんばかりに、強制"不正解"を出されて落とされた場所が、＜毒ガス迷路＞の一室……と」
教会で見た資料の内容と違い、ポイズンスライムだけでなく通気口からの狙撃付きだったのには驚いたが、俺だって修羅場を潜り抜けてきた＜勇者＞だ。
相手が弾切れで撤退するしかなくなるまで、聖結界でガードして、ついでに肉体に接触しようとしたポイズンスライムも殲滅。
結果として、（疲れはしたが）無傷で8階層を突破した。
「だけど、ここからが問題なんだよなぁ〜。9階層＜汚物フロア＞は、這わなきゃ通り抜けられない細い通路がいくつもあるうえ、フロア全体が穢れている」
資料によると、＜汚物フロア＞に溜められた糞は温められて発酵しており、病気持ちの寄生虫がウジャウジャと蠢いているらしい。
本来こういう場所を通るときは、スライムで肉体を包んでやり過ごすのだが、通路の幅的にそれも難しいので……
今回は結界の多重がけで肉体を守りつつ、視界のキモさには目を瞑って、自分の足で進むしかないだろう。
＜−−− ウィーーン。ガシャ！ −−−＞
「オゲェ〜。なんでご丁寧に、"ブツが見える明るさ"が確保されているんだよ！ 不快感倍増だぜ」
8階層と9階層をつなぐ扉を抜けた、俺の目に飛び込んできたもの……それは、想像以上に強烈な「クソ溜め」だった。
「（結界！ 結界！ 結界！ こんな所にガード無しで突っ立っていたら、あっと言う間に病気になっちまうよ）」
先ほどクイズという名の"嫌がらせ"で、ここの魔王に問われたとおり、俺は"恋多き男"ゆえ性病も一通り経験している。
しているが……パラダイスの副作用でかかっちまう病気と、こんなクソ溜めで細菌感染する惨事が、"同じ"なわけないだろう！
俺のマグナムは、この先も100年くらい稼動する予定なんだから、"恋の病"とは無関係な汚物イベントで、オジャンにされる訳にはいかないのだ！
「（だから、とにかく結界を多重がけして衛生的に……）」
『皆さん、お待たせいたしました！ 肥溜めをかき分け歩く、侵入者＜マサル＞の姿をご覧ください！ みっともないでしょ〜？』
『『『『『『『『『『ギャハハハハハハッ！！』』』』』』』』』』
なんだよ、この「不快極まりないアナウンス」は！
ナメてんじゃねぇぞ！！
『実はこの方……除名処分が検討されている現勇者なのですが、マゾヒスト疑惑がありまして……。撮られるのと穢されるのが好きみたいなんです』
『『『『『『『『『『へぇ〜』』』』』』』』』』
へぇ〜、じゃない！！
俺は多少ムスコが元気すぎるだけで、他は至って正常な勇者だし、こういうスカトロ趣味もねぇわ！！
というか……除名処分？
そんな話、聞いたことねぇぞ。
いや、まぁ思い当たる節は山程あるから、勇者をクビになるのは仕方ないとして……「懲戒解雇」と「除名」じゃ、意味が違ってくるじゃねぇか！
そもそも、この不快なアナウンスに付いてくるリアクション……やけに"人間臭い"が、どういうカラクリで放送しているんだ？
まさか……「オアシスフロアの住民」が、魔王＜メグミ＞に洗脳されて、「勇者＝悪の存在」と勘違いしているとか……。
読んでくださり、ありがとうございます！
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)
