253話 勝手に生まれた黒歴史
1階層<天国と地獄フロア>を、「スコップで床を掘って素通りする」というウルトラCで、通過した勇者<マサル>は……
その後も2階層<砂漠フロア>・3階層<クイズ付き立体迷路>・4階層<灼熱の岩石フロア>を、苦もなく突破した。
ウチの高性能な鑑定機能をもってしても、アイツのステータスは調べられないので、詳しいカラクリは分からないけど……
アイツは「ギフトとしか思えない能力」を幾つも使いこなしており、その中には「魔王から奪ったモノ」とは到底思えない能力もある。
また勇者<マサル>はそれらの能力を使う前に、毎度「飴玉のような菓子」を食べているので……
もしかするとソレが、能力発動のトリガーなのかもしれない。
「しかし……聖結界でゴリゴリに防御をかためたうえ、耐久性に優れたスライムに入って寝るとか……隙なさすぎ。ウゼェな」
勇者の実力は非常に高いため、モンスターをムダ死にさせる事になるから、対策ナシでも奇襲なんてかけられないんだけど……
その上でこういう対応をされると、首筋に鎌を突きつけられた気分になり不快感が増す。
本音を言えば、今すぐ奴の周りをフロアごと燃やして、一酸化炭素中毒で殺せないか試したいところだよ。
「とりあえず……寝ながら無意識のうちに慰めている、アイツの黒歴史映像は、3方向から監視カメラで撮影するとして……。この後どうしよう?」
たぶん勇者<マサル>は、仮眠をとり英気を養ったあと、"毒"と"汚物"塗れのフロアを一気に突破してくるから……
僕は、<聖者の祈り>によって管理システムを止められている中で、その対応をしないといけない。
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0階層:地上部。オアシスフロア
1階層:天国と地獄フロア(通行料徴収)
2階層:砂漠フロア
3階層:クイズ付き立体迷路
4階層:灼熱の岩石フロア
5〜6階層:クイズ付き立体迷路(分断仕様)
7階層:毒ガス砂漠(イッシャクムカデ担当)
8階層:毒ガス迷路(スライム担当)
9階層:汚物フロア
10階層:中ボス部屋(オイルスライム担当)
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「う〜ん。1階層での動きを見る限り、瞬時にワープして下階層へ……みたいなチート技は、さすがに使えないみたいだし……能力の制限もあるっぽい」
なら5〜6階層はともかく、「そもそも生存に適していない環境」の7〜9階層は、"スコップ頼み"で抜けるのにも苦労するはずだ。
特に9階層<汚物フロア>なんて、毒まみれの8階層とドアをはさんで繋がっているから、安全な場所で穴を掘ることなどできないだろう。
だからといって……もし勇者が汚物溜めにガチで深い穴を掘って、そこに埋まり10階層へ行くのであれば、僕はアイツを"ある意味"尊敬するよ。
「そもそも現実問題として、上層階の構造は人間側にある程度知られている訳だし、そこで"勇者を捕えられる"と思う方がズレているんだよなぁ〜」
まずは、汚物フロア住まいで「病原体の宝庫」となったモスキートを、5〜10階層全てに解き放ち、アイツのストレス要因になることから始めるか。
あとはナチュラルに、床に油を撒いて妨害工作……とか?
そして各階層にある大画面モニターには、絶賛撮影中の"恥ずかし映像"を24時間流し、勇者<マサル>のメンタルを崩してやる!
そう決めた僕は、執事君に命じて大急ぎで策を実行に移させ、爆睡している勇者の目覚めを待った。
スライムを女性のたわわな胸と勘違いして、揉みしだきながら<ピー>した勇者のズボンは、現在「オネショした子供」みたいになっており……
特にコチラが何か仕掛けなくても、黒歴史を生み出してくれたので、そういう意味ではチョロいかもしれない。
まぁ勇者が喚び出すモンスターは、何奴も此奴もしっかり育てられているうえ、主人に対する忠誠心もひとしおなので……
モンスターから半分見捨てられていた、ロミオット達と比べると、「戦いたくない敵」である事に変わりはないんだけど。
「あっ、勇者<マサル>が起きた! 執事君。微妙にウザい程度にモスキートを近付けて、常時2〜3匹で吸血を試みてくれ」
「かしこまりました。魔力を消費して結界を張るほどではないものの、音・痒み・不快感でストレスは溜まる、絶妙なラインを目指させます!」
「うん。頼んだぞ!」
麻薬成分を溶かしこんだ酸化油も、勇者<マサル>が寝ている間に、ゴーレム総動員で「フロア中の壁と床」に塗らせたので……
ダンジョンが自動回収機能でセルフ清掃しちゃうまでは、メインの試練と併せて勇者のメンタルを削ってくれるはずだし、「果報は寝て待て」でいいよね?
「じゃあ僕は一休みして、"勇者の<ピー>監視で受けたストレス"を癒すんで。執事君たち、状況が変わるまでアイツの見張りヨロシク!」
「「「「「お任せください!」」」」」
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






