250話 その頃、勇者は……
予定どおり砂龍のレベリングを終え、<恵のダンジョン>で勇者襲来に備えていたのだが、肝心の勇者パーティーが中々来ない。
「ハァ〜。まだかよ」
奴の到着が遅れるほど、ポイント収支プラスのウチは残高が復活して、更なるダンジョン育成を行えるようになるため……
それが悪いことだとは思わないが、「モンティート先輩が慌てる程の強敵がいつ来るか分からない状況」で焦らされると、死への恐怖で気力を消耗する。
「大丈夫。<恵のダンジョン>は日を追うごとに強くなっているし、安全度も高まったはずだ。焦ることはない」
とはいえ……スピード勝負を仕掛けられると思っていたのに、まさかの「勇者待ち」になるとは……
予想外の膠着状態ゆえ、魔王掲示板でモンティート先輩に脅された連中も、徐々にショックから抜け出し、己の黒歴史をかき消すかのごとく騒ぎ始めた。
まぁ一度シメられているうえ、魔王ランキングのポイント推移で、<恵のダンジョン>が「殺人に頼らない充分な収入源」を持っているとバレたので……
僕とサーシャに対しては、「触らぬ神に祟りなし」扱いだから、(不快なだけで)特に支障は出ていないけど。
「つっても……ハァ〜。早く来てくれよ。ユアンの所と違ってウチは黒字収支だけどさぁ〜、それでも"待ち"はキツイんだって!」
いやいや、ここで心折られているようじゃダメだ!
一度、瞑想をして精神を落ち着け、山の如くドッシリと構えて準備を進めろ!
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メグミが焦らされてストレスを感じつつも、さらに<恵のダンジョン>を強化して、安全確保に努めている頃……
勇者<マサル>もまた、「学園都市で教会に対して不信感をもち、直情的に<恵のダンジョン>へ突撃しようとしたこと」を反省し、探索準備を進めていた。
いつも行動を共にしているパーティーメンバーがいれば、<聖者の祈り>でダンジョンの改造を止められるため、実力勝負に持ちこめるが……
自分一人だと、準備せねばダンジョンマスターに好き勝手に対策されて、攻略難度が跳ねあがるため、時間をかけてソレを補わなければならなかったのだ。
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〜聖者の祈り〜
純潔を守りとおし、"長い間"修行を積んだ聖職者だけが得られるギフト。
ダンジョンの改造阻害や、ダンジョン攻略時のステータスアップなど、熟練度によって叶う範囲が広がる。
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そこら辺の凡人なら、いくら時間をかけて対策したところで、「金を稼ぎダンジョン攻略に適したアイテムを買う」のが精々だが……
彼は、魔王を殺したこともある"実践経験済み"の勇者。
当然、メグミと同じく「魔王から奪ったスキル・ギフト」を保持しているうえ、元々のステータスもズバ抜けており……
時間と手間さえかければ、自分一人でも一流聖職者と同等のチカラを発揮できる、転生特典を与えられていた。
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〜職業:勇者〜
異世界の血を引く「選ばれし者」がなれる職業。
聖職者としてのチカラを得るだけでなく、<才能の器>が拡張される事によりステータスの伸びが良くなる。
またその手で魔王を倒すと、相手のギフトおよびスキルの一部を貰い受ける事ができるため、魔王討伐経験のある勇者は隔絶した強さを持つ。
勇者の子孫が魔人族を倒すことにより、後天的に覚醒する場合アリ。
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「(ジンが持つ<聖者の祈り>は、俺の"図鑑"にも登録されている。あとは俺が根性据えて、"ギフト玉"の数を増やすだけだ!)」
勇者<マサル>が転生時に選んだ、特典ギフト……それは<スキル図鑑>という、チート中のチート能力。
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〜スキル図鑑〜
相手の許可を得ることで、スキルおよびギフトが図鑑に登録され、登録された任意の能力を一時的に模倣できる、特殊な<能力玉>を生みだせるようになる。
ただし<能力玉>をつくる際は、己の血とHPを対価として捧げる必要があり、事前準備ナシでは役に立たない。
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「事前準備必須&時間制限付き」という欠点があるため、マサルも「それ以外の選択肢がないとき」しか利用しないが……
"ギフト玉"さえつくってしまえば、普段<ピー>しまくりの性欲モンスターである彼も、純潔縛りのある<聖者の祈り>を使えるようになる。
また特殊能力持ちの借金奴隷を買って、解放と引き換えに「<スキル図鑑>の登録許可」をもらえば、アッという間にチートの土台が出来上がるため……
時間をかけて"能力玉"を量産すれば、どのような状況でも対応できる、チート無双野郎が爆誕するのだ。
読んでくださり、ありがとうございます!
10月8日に、『クラス全員で魔王転生!』のコミック2巻が発売されます!
興味がある方はぜひ読んでくださいm(_ _)m
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