243話 弟系ドラゴン<砂龍>
全ての嫌がらせを突破された時の"最後の切り札"として、土属性のSSランクモンスター<砂龍>を購入したところ……
子供っぽい性格の、可愛い「弟系ドラゴン」が現れた。
SSランクモンスターと言っても、砂龍は「近場にある鉱物を取り込んで砂状に変え、それを使って自身の肉体を育てていく成長型モンスター」なので……
僕の首に巻きついて甘え始めたこの子は、まだ"育成素材不足"で僕と同程度のサイズだし、強さもSランクモンスターと大差ないだろう。
「ほら、とりあえずコレを食べて大きくなりなさい。兵士が置いていったオリハルコンの武器と防具だよ」
「ギュギュ〜ッ!!!! イタダキマス!!」
僕が188階層のラスボス部屋に移動して、そこに「<伏龍のダンジョン>攻防戦」で仕入れた、オリハルコン製の武器と防具を置くと……
砂龍はヨダレを垂らして元気よく鎧に噛みつき、ムシャムシャ・バリバリと金属を噛み砕いて食べ始めた。
「砂龍。"お代わり"は沢山あるから、欲しくなったらこのオートマタに頼むんだよ。君専属の執事(=お守り係)で、面倒を見てくれるから」
「ギュッ!? ワカリマシタ。マスター、サビシクナッタラ、アソンデホシイデス」
「おっ、おぅ……いいぞ! 今は勇者襲来に備えて忙しくしているから、ちょっと付き合えないかもしれないけど……時間ができたら好きなだけ遊ぼうな!」
「ハイ!!」
僕に「遊んで欲しい」とねだっている今この瞬間も、砂龍は金属を食った分だけグングン成長しているので……
体格差がエグすぎて、できる"遊び"の種類は限られるかもしれないが。
僕が残りの仕事を片付けるべく戻ろうとすると、さっそく寂しくなったのか、与えたオリハルコンを大急ぎで食べ切った砂龍が、鳴きながら後を付いてきた。
「(う〜ん。参ったなぁ〜)」
あまり贔屓し過ぎると、他のモンスター達が拗ねちゃうからダメなんだけど……生まれたばかりだし、暫くは好きにさせておくか。
「あっ、そうだ。砂龍。スキルのスクロールも使っていいから、苦手分野はそれで潰しておきなさい。特に火魔法を使えると便利だぞ」
「ハイ。マスターノ、イウトオリニシマス!」
砂龍は土属性のSSランクモンスターだから、己の得意属性である<土魔法>は生まれつき使える。
だけど他の属性魔法やアイテムボックスは備わっていないので、手持ちのスクロールをあげて、育ててやる必要があるのだ。
「火魔法で熱した"塊状の金属"を、敵への攻撃に使えたら便利だろう? なんだったら、ドロドロに溶かして撃ち出してもいい」
「ナルホド。サスガマスター、ソノコウゲキ、スゴクツヨイトオモイマス!」
もちろん<恵のダンジョン>の切り札となる砂龍に、Fランクのスキルスクロールなど渡す訳にはいかないので……
彼にあげるのは、僕が持っている一番上質なスクロールばかりだし、僕自身が使ったのより高ランクの物さえある。
<−−− ドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!!! −−−>
「ワァッ! マスター、ミテクダサイ! トナリノヘヤマデ、カンツウシマシタ!!」
結果として……砂龍はCランクの<火魔法>スキルを手にいれることとなり、僕が仕事をしている隣で、「熱した金属砲」のお試し発射をおこない……
壁に穴が空くばかりか完全に貫いてしまい、その先にあった執事室で働いていたオートマタ達から、お説教をくらうハメになった。
「砂龍様、よろしいですか? このダンジョンには、先程のような不意打ち一発で死んでしまう程、か弱いモンスターもいるのです。自重してください!」
「ハイ。スミマセンデシタ」
モンスターの世界は実力主義なので、古株のオートマタもSSランクの砂龍を立ててはいるけど、明らかに視線が「出来の悪い弟」へ向けるソレだ。
「マスターも、甘やかし過ぎちゃダメですよ! 無邪気は時として"惨劇の引き金"となるんですから、ちゃんと躾けないと!」
「すみません。以後、気をつけます」
まぁ僕も(仕事の傍ら)一緒に怒られていて、全面降伏状態なので、保護者目線でニマニマする余裕など無いのだが……。
「(とはいえ……野次馬しにきた先輩モンスターは、"貫かれた壁の惨状"を見て、砂龍の実力を理解したはず。今後、この子が邪険にされる事はないだろう)」
あとは食事の度にオリハルコンを与えて育ててやり、適度に実践経験を積ませて"ラスボス化"すればいい。
勇者襲来を控えた現在、<恵のダンジョン>周辺でレベリングさせる訳にはいかないけど……
サーシャに頼んで、<集金箱のダンジョン>に外部のモンスターを運びこみ、砂龍と戦わせればこの子の糧になるはずだ。
「(フゥ〜。ラスボス不在問題も片付いたことだし、ラスボス部屋の住環境改善が終わったら、魔王掲示板を覗いてみるか)」
先ほどチラッと見た時点で、「僕が勇者に目を付けられた件」は漏れており、軽い騒ぎになっていたけど……
若手エース扱いされて、飛ぶ鳥を落とす勢いだった魔王<メグミ>が、苦境に立たされるかもしれないとき、誰がどう動くか……見ものだな。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






