241話 嫌がらせを研ぎすます
と思ったものの……78階層のラスボス部屋まで辿り着くような猛者の心を、20階層追加した程度で折れるとは思えなかったので……
僕はコスパを徹底して、<伏龍のダンジョン>で敵部隊を壊滅させたような、「ライフル銃の狙撃に適した非常に長い廊下」を100階層に渡って設置。
各階層のレイアウトをほぼ同じにして、コピー機能を利用し格安で仕上げる事で、1階層あたりの予算を極限まで安くして"数の攻め"に出たのだ。
いかに単調な<狙撃フロア>でも、100階層もあれば、休憩が取れず途中で心が折れるし……
そもそも敵は、<狙撃フロア>が100階層分で終わることを知らないので、延々と続く"無機質な苦行"を強いられることとなり発狂するだろう。
「執事君。ゴーレム達に、自販機で地雷を買って仕掛けるよう指示してくれ。爆発するとヤバイから、くれぐれも慎重にな!」
「かしこまりました。直ちに、待機中のゴーレム班を動かします!」
もちろん「ライフル銃の恐怖しかないフロア」だと、相性のいい敵が、適度に気を抜きながら突破してしまうかもしれないので……
フロアの床下には、所々に「"適切なサイズの空洞"が空いている場所」を設けてあり、そこに手動で「自販機から買った地雷」を設置するよ。
ポイント課金でトラップを組みこむと、一気に値段が跳ね上がるけど……ただ床に穴を開けるだけなら、僅かなデザイン変更費しかかからないので……
出来るところはゴーレム達にお願いする方が、色々と都合がいいのだ。
ぶっちゃけ、ポイント課金だと魔王規約に違反するような仕掛けでも……ガワだけポイントで整えて中身は人力処理することで、合法的になるから……
ルールをすり抜けながら殺傷性を上げられるという、魔王にとっては、ポイント節約以上に嬉しい利点もあるしね。
「マスター。地雷の購入と、該当フロアへの運搬が終わりました。只今より、"埋める"作業に入ります!」
「了解! ゴーレム君達には、安全第一を徹底させてね! 本当に危ないから」
「はい。お任せください!」
この<地雷>という武器は、地中に埋めておくと、上から一定以上の重さがかかった時に爆発する、設置型のトラップであり……
威力はこの前使った<手榴弾>よりも遥かに強く、殺傷性も高いと、鑑定結果に書かれていた。
そして"手動で埋めた罠"は、ダンジョン用の罠探知だと発見できなかったりするので、斥候の目を欺くのにも丁度いいだろう。
もし一発でもかかってくれれば、敵(直近だと勇者パーティー)は疑心暗鬼になり、足を踏み出すたびに神経をすり減らすハメになる。
「簡素極まりない作りにした事で、ダンジョンポイントも節約できたし……まだまだ増築できそうだな。ならば、次は硫酸プールだ!」
もちろん硫酸プールも、ポイント節約のため「プールの外側」だけポイントで作り、中を満たす硫酸は"後から"手動で入れる。
たとえ聖女に<聖者の祈り>を使われても、ダンジョンの管理システムではなく、僕自身のギフトである自販機関連の機能は阻害されないから……
ここら辺は、勇者が<恵のダンジョン>に潜り始めてから準備しても間に合うんだよ。
「水と違って高いから、プールを満たせるだけの量を購入するとなると、金貨が何十枚も飛んでいきそうだけどな〜」
硫酸もセレクト自販機の<武器屋>カタログに載っており、メカニズムは分からないけど、「触るだけで人体を溶かす」と書いてあった。
そして液体だけど飲めず、気化したモノを嗅ぐだけでも、喉の調子が悪くなるそうなので……
プールの底に「次の階層へ繋がる扉」を設置しておけば、多少のダメージは与えられるんじゃないかな?
試しにちょっと実験してみたら、人間どころかダンジョンの床までボロボロにしてしまい、原状回復費がかさんだので……
結界付きの特殊な施工でプールを用意するのが、地味に大変だったけどね。
「最後は、"砂山登り"に見せかけた"逆戻り"フロア。一生懸命"サラサラの砂山"を登っていくと、あら不思議! <狙撃フロア>に逆戻りってパターン」
この仕掛けは単純で……下の階層へと繋がる"本物の出口"が、目立たない位置にあるだけなのだが……
それに気付かず砂山を登っていくと、いつの間にか90階層分の<狙撃フロア>をブチ抜いて……
<狙撃フロア>の11階層目へ繋がる、"偽物の出口"にたどり着いちゃう……というわけ。
もちろん、11階層目からのショートカットは不可能な仕様だ。
この辺りは、もう階層情報なんて表示していないから、「戻された」のか「また<狙撃フロア>が始まるのか」分からないし……
仮に"逆戻り前"に分かったとして、引き返そうにも"砂山の下山"でさらに消耗するはず。
トドメとして、"本物の出口"から出た後にも<狙撃フロア>を何階層か用意しておけば、敵は「コッチも偽物かよ!」と思い八方塞がりになるだろう。
<−−− カタカタカタカタカタカタ…… −−−>
「よしっ、設定完了! いい感じに、"嫌がらせの鋭さ"を研ぎ澄ませたんじゃない?」
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






