236話 また首輪をつけられるのは
ターゲットである魔王<メグミ>と、その愛人(とマサルは思いこんでいる)魔王<サーシャ>だけでなく……
魔王<ユアン>までラヴィレンス高等学園出身者だと知った勇者<マサル>は、自分が教会から"何も"教えられていないのだと、改めて実感した。
そして召喚されてから現在に至るまで、その事実に気付きもせず、どこか調子に乗って英雄気取りでいた、自分の言動が全て黒歴史と化して……
頭の中が憤怒と羞恥心で埋め尽くされ、ため息を吐くしかなくなっている。
「ハァ〜、マジでやってらんねぇよ。というか……あの子達をこの街へ連れてこなくて、本当に良かったな。最悪、口封じされるところだったぜ」
美女第一主義者である勇者<マサル>は、ここまで教会に裏切られてもなお、魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>のことを信じている。
そしてもし彼女達が調査に同行していて、自分と共に真実を知ってしまったら……最悪の場合、教会から目をつけられて殺される可能性まで考えていた。
実際、彼女達はハーレム要員として送り込まれたものの、その思惑は本人には伝えられておらず、本能に従って純粋に強者を愛しただけなので……
彼の危惧はあながち間違っておらず、もしこの件に巻き込まれていた場合、少なくとも"彼女達が望む出世の道"は絶たれていただろう。
「ハァ〜。この状況で<陰の者>と合流して、また首輪をつけられた生活に戻る? できねぇなぁ。俺は、"名誉で腹一杯になる特殊奴隷"じゃねぇよ!」
教会幹部への不信感が決定的になったことで、マサルはこのまま学園都市に留まり、再び「監視の目がある生活」に戻ることを拒絶。
身分差が激しいこの世界において、宗教や権力者の恐ろしさがシャレにならない事を承知の上で、単独行動できるこの隙をついて……
イイように利用されるだけの生活から、抜け出すことを決意した。
「もし俺が、次勝手な行動をしたら……教会のジジィ共から"裏切り者"認定されて、もう彼女達と会えないかもしれねぇ。だけど、飼い殺されるよりはマシだ」
一応「"調査"名目で暴走したカタチ」にしておけば、やらかした自分はともかく、魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>が咎められる事はない。
そう判断した勇者<マサル>は、数日後に到着するであろう<陰の者>達へ宛てた手紙を残して、10日分の延泊料金を支払い宿を出た。
数日かけて念入りに行う予定だった調査を、明日には終わらせて……<陰の者>に見つかる前に学園都市を出発し、充分な距離をかせぐために。
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拝啓、<陰の者>達へ。
到着するのが遅ぇよ。もう調査、終わっちまったぞ!
調べた結果、さらに疑念は深まったんだけど、この件に深入りすると俺レベルでも死ぬ危険があるから、皆を巻き込めないし一人で行くわ。
調査が終わったら多分帰るから、お前等はこの手紙を持って帰れ。
あぁ……ホテルの延泊費をガッツリ払ってあるから、返金された分は小遣いにしてもいいぞ。
護衛任務失敗で大目玉をくらう前に、酒でも飲んでハイになっておけ!
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「(ふ〜ん。昼間に比べると随分減ったなぁ。ドッペルゲンガーばかりだったし、そりゃあ"人混みに紛れこめない時間帯"は避けるか)」
脳の半分が下半身と直結しているタイプとはいえ、マサルは紛いなりにも「実践経験済みの勇者」なので、当然その実力は高く……
学園都市に、複数のダンジョンから"スパイ"が潜入している事にも気付いていた。
アクティブな魔王の中には、検問の役人を操って情報収集に励む者までいるため、<鑑定>持ちなら不審に思った段階で証拠を確保できるのだ。
「チッ! 魔王<メグミ>か魔王<サーシャ>の部下がいれば、速攻で捕まえて情報を吐かせるんだけど……」
なおメグミは、勇者<マサル>が学園都市に入った段階で緊急事態に気付き、慌てて現地のスパイを全撤退させたため、もう二人の配下はいない。
もしマサルが、<ラヴィレンス高等学園>で情報収集する前に、入りこんだモンスター達をシメていたら、実力差が違い過ぎて成す術ナシだったが……
マサルも、「白昼堂々モンスターと追いかけっこをして悪目立ちすると、後々面倒だ」と判断して優先順位を下げたため、"相応の結果"と言えるだろう。
「(とりあえず……数多のスパイが入りこむくらい、魔王達から学園都市は注目されている。これは確かだ! 今まで行った街は、いても数体だったからな)」
街に潜むモンスターの数から、学園都市の重要性を再認識した勇者<マサル>は、一体くらい狩れないかと"手頃な奴"に狙いを絞る。
そして……駐在している役人を<ピー>する事で、操っていたサキュバスを捕らえ、ルールベル皇国が隠蔽した"とある調査資料"を入手した。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






