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233話 勇者<マサル>は熟読する




 <天国と地獄フロア>の実態を知り怖気付いたものの、「"同郷の士"が女性に酷い扱いをしている」ことが許せないと、参戦を決めた勇者<マサル>は……


 連れて行けない魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>の代わりに、どの男を入れようか考えながら、<恵のダンジョン>の資料を読み進めた。



「うわぁ〜。2階層より下も、やっぱり"正面から戦わせる気"皆無じゃん。というか……嫌がらせとトドメを刺す目的以外で、強いモンスターは出ないのかよ」


 昨年、大敗北を喫した討伐軍が、数多の命と引き換えに得たフロアの情報を、丁寧に読み進める勇者<マサル>だったが……


 生まれて2年目である<恵のダンジョン>に、その対応はいささかマズイ。



 成熟した上位ダンジョンならともかく、<恵のダンジョン>は成長していく時期なのだから、当然フロアの構造も日々アップデートされている訳で……


 半年以上前の資料に記された情報をアテにすると、突入したあと地獄を見るので、「こんなのがあるんだな」と雑に読むくらいで丁度いいのだ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜恵のダンジョン・フロア概要(by資料)〜


0階層:地上部。オアシスフロア(大軍で行くと消える)

1階層:天国と地獄フロア(法外な通行料徴収)

2階層:砂漠フロア(水分不足で死者続出)

3階層:クイズ付き立体迷路(クイズが鬼畜すぎる)

4階層:灼熱の岩石フロア(火傷必至。回復手段がないと詰む)

5〜6階層:クイズ付き立体迷路(クイズの嫌がらせ第二弾)

7階層:毒ガス砂漠(毒と乾きのダブルコンボ)

8階層:毒ガス迷路(迷っている間に殺される)

9階層:汚物フロア(この世の地獄が凝縮された場所)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






 とはいっても……<恵のダンジョン>は情報統制がキッチリしているため、ファイルに入っている(半年以上前の)攻略情報もあまりなく……


 過去の遺物であるフロアマップに、多少の時間を費やしただけで被害は済み、勇者<マサル>は次の項目へと目を移した。



「へぇ〜。<恵のダンジョン>って、<蠱毒のダンジョン>を倒したのか! あの性悪ダンジョンに勝てるなら、魔王<ユアン>くらい屠れて当然だよな」


 そのユアンは、「金になる他者の情報」ならどんなモノでも売るタイプだったので、教会はこれまでメグミが絡んだ暗闘も、(概要だけだが)把握している。



 どうしてその情報をホログラム(=ユアンの幻影)が握っていたのか、当時の彼等は知らなかったが……


 買った情報を使って何度も大儲けできた後だったので、無条件に「なんでも調べられるギフト持ちなのだろう」と信頼し、まんまとボッタクられたのだ。



「ユアンを含めると、メグミはこれまで7体の魔王を屠っていて、そのうち6体は"自身のダンジョン"に呼びこみ殺している。たぶん防衛戦が得意なんだろう」


 実際は「攻め込まれたから対処した」だけだが、勇者としてパワーアップする前のメグミが防御特化だったのは事実なので、部分的には正解だ。



「戦いの詳細は不明だけど……フロアの構成を見る限り、手下を削ったあと罠にハメて殺したんじゃね? 腕っぷしより戦略を好む、軍師タイプっぽいし」


 ただし魔王を倒してそのギフトを吸収し、あり余るダンジョンポイントを使って、己のステータスを買ったメグミは、もう"引きこもり"じゃないので……


 同じ勇者のマサルであっても、油断は厳禁である。






 その後、感情豊かにリアクションをとりながら資料を読み進めていった勇者<マサル>は、魔王の情報についてまとめたページを読んだところで……


 魔王<メグミ>が自分のような召喚組ではなく、この世界で生を受け、学生時代に魔王堕ちした事実に気づく。



 なお……ユアンは権力者に情報を売りつける際、自分が魔王である事がバレぬよう気を付けながら……


 「魔王になる人間は、自ら志願するのではなく、ある日突然何者かによって無理やりダンジョンへ飛ばされる」という事も(保身の為に)教えていた。



 しかし「ダンジョン=絶対悪」の構図が崩れるのは、教会にとって不都合なので……


 その情報は上層部に握りつぶされてしまい、マサルが今読んでいる資料にも載っていない。



「あれ? 魔王<メグミ>は、"元勇者"や"まぐれ召喚組"じゃなくて現地民出身? 転生した時から前世の記憶を持っていて、TUEEEを画策したタイプか?」


 元"なろう愛読者"のマサルは、昔読んだ"なろう系小説"の知識を元に、メグミがどのタイプのチート野郎か考えるが……


 ファイルにまとめてある彼の経歴と、異世界チートの繋がりがイマイチ見えてこず、思考が暗礁に乗り上げてしまう。



 そこで「思い立ったら即行動派」の勇者<マサル>は、資料の読解が終わり次第、メグミが魔王になるまで過ごしたルールベル皇国へ行き……


 実際に自分の脚で情報を集めて、<メグミ>という魔王を理解し、そのうえで立ち向かおうと決断した。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
[良い点] マサルがルールベル皇国に行きますがメグミが勇者の末裔であること、教会から抜けた勇者がどういう扱いを受けるかを知ることが出来るでしょうか
[一言] なるほど、教会に情報を隠されているんですね。 これだとマサルは気がつかないなこれはら、
[一言] >「あれ? 魔王<メグミ>は、"元勇者"や"まぐれ召喚組"じゃなくて現地民出身? 転生した時から前世の記憶を持っていて、TUEEEを画策したタイプか?」 それは作者の別作品に出てくるジン……
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