232話 勇者<マサル>は衝撃を受ける
勇者<マサル>が魔王関連の資料を読み漁り始めて2日……遂に、その時は訪れた。
彼の調査対象が、当時"魔王ポイントランキング23位"だった<恵のダンジョン>へと移り、その概要がまとめられたファイルを手に取ったのだ。
「はぁっ!? 砂漠の真ん中に位置する、オアシスの代わりに"金で飲み物が買える箱"が置いてあるダンジョン!? これって、どう考えても自販機じゃん!」
勇者<マサル>が読んだ資料には、1ページ目から自販機のイメージイラストと説明が載っており、この世界に存在しないはずのソレに彼は衝撃を受ける。
<恵のダンジョン>は潜入調査が非常に難しく、教会が何度調査員を派遣しても、現地住民に怪しまれてしまい"帰らぬ人"となっていたため……
序列の割に情報量は少ないのだが、<恵のダンジョン>と<集金箱のダンジョン>に置かれた自販機は同じデザインなので、自販機の外観は知られていた。
メグミが持つ<自販機作成ギフト>は、販売する商品こそ、ある程度自由に選べるものの……
自販機の外観は、商品ジャンルによって決まっており"変更不可"なので、この情報バレは仕方がないものだ。
その「日本にあった自販機と同じブツ」を見て、大声でツッコミを入れる勇者<マサル>だったが、自販機に種類があることを知ってさらに驚愕する。
「マジかよ! パン・惣菜・服の自販機もあるのか。この世界の洋服、高いくせに低品質で着心地最悪だから、俺も行って買いだめしようかなぁ〜」
この世界の人々にとってはソレが当たり前なので、マサルも諦めていたが……
素材の採取から裁縫まで人の手でおこなわれ、職人の腕によって出来上がりにバラツキがでる衣服は、安価で良質な物に慣れた彼にとって苦痛だったのだ。
「まぁ、それは置いておいて……銃を使った魔王は、<恵のダンジョン>の奴で決まりだな。モロ"前の世界の商品"だし、そういうギフト持ちなんだろう」
ユアンが売った情報によると、<恵のダンジョン>は<未設定のダンジョン>と同盟を組んでいるため、ソチラの魔王が犯人の可能性もあるが……
資料には「魔王<メグミ>が主力。魔王<サーシャ>は、メグミの性処理要員」と書かれているし、この結論で間違いないはず!
そう判断した勇者<マサル>は、<恵のダンジョン>について徹底的に調べようとして……
規格外のコンセプトとその実績を知り、驚愕することとなる。
「ふむふむ……。<恵のダンジョン>のコンセプトは、侵入者からいかに金を毟り取るかと、侵入者の尊厳破壊の追求。って……どんな気狂いダンジョンだよ」
彼が読んでいる資料には真実が記されている訳ではなく、あくまでも「魔王<ユアン>が売った情報」と、人間側の調査報告が載っているだけなので……
メグミが見たら憤慨するような、第三者視点の"ゴシップ情報"がズラリと並んでいた。
「<恵のダンジョン>の代名詞として名高い<天国と地獄フロア>では、侵入者全員が大金を搾り取られるうえ、"地獄の歓迎"で心折れる者が続出するのだ」
ドン引きしながら資料を読み進める勇者<マサル>の目に入ってきたのは、<天国と地獄フロア>に挑戦した、とある兵士の被害例。
先へ進むためのルーレットに挑むたび金を取られ……
「天国と地獄」などと謳っているが地獄しかなく、"ウ○コ砲"や"尻叩き"で尊厳を破壊されるさまは……
勇者として数々の修羅場を潜ってきた、マサルにとっても脅威であり、「絶対に探索したくねぇ」と思わされるものだった。
「何がヤバイって、"地獄処刑の様子"が撮影されていて、他の部屋でも見れるところだよ。こんな目に遭っている所なんか見られたら、3人に振られちまう!」
特殊な性癖を持つ者以外で、「顔面"ウ○コ砲"」を浴びた男とキスしたい女はいないため、彼の心配はごもっともである。
とココで、勇者<マサル>は「もし美少女がこんな所へ入ったら……」と気付き、付き合っている3人を思い浮かべて冷や汗をかく。
「女性が入った事例、女性が入った事例は……あった!」
そして、女性でありながら兵士として突入した、男勝りな隊員の被害事例を発見した。
「さすがに、多少は手加減して……オィオィ、容赦なく顔面に"ウ○コ砲"くらってんじゃん……。こんな所まで、男女平等にしてんじゃねぇよ!」
(美女限定だが)ジェントルマンな勇者<マサル>にとって、"同郷の士"がこのような鬼畜すぎる仕組みを作った事実は、到底看過できるものではなく……
「必ず魔王に会って、顔面陥没するまでブン殴ってやる!」と憤慨。
しかし同時に……女性でも容赦なく尊厳破壊されることから、「このダンジョンに彼女達は連れて行けない」と判断し……
魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>の同伴を諦め、「修道士<ジン>と男性猛者」だけで、パーティーを組む決断を下すのだった。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






