230話 集金箱のダンジョン
サーシャが来る前に何とか仕事を終わらせようと、格闘すること1時間……ギリギリだったけど、予定していたノルマは全て片付いた。
「メグミ君〜、お待たせ! <未設定のダンジョン>は今のところ平和だから、執事君にダンマス代行任せてきました♪」
そして聞こえてくる愛しい人の声。
「サーシャ、お仕事お疲れさま。<恵のダンジョン>も平常モードだから、軽くご飯を食べたらソッチへ移動して、"名付けの儀"を始めますか!」
「うん♪ よろしくお願いします!」
サーシャのダンジョンに名前を付けるべく、今回は「ダンジョンの改名チケット」というアイテムを使う。
このアイテムは、「ユアンの末路映像」と引き換えに、32期のウィン先輩から頂いたものであり……
使用する事で、一度だけダンジョン名を変更できる、滅多に入手できないミッションクリア報酬なんだとか。
ウィンさんは、ダンジョンの規模こそ小さい魔王だが……32期の古株という事もあり、長い期間ミッションに参加し続けたため……
たまたま成績が良かった時期に、偶然手に入れる事が出来たらしい。
だけど「ダンジョンの改名チケット」は実利に繋がる報酬じゃないし、彼はダンジョン名を変えたいとも思っていなかったので……
長年死蔵しており、今回「支払いに使えるならラッキー」と考えて、僕に譲渡してくれたそうだ。
もちろんユアンの件は、サーシャの協力があってこそ完勝できた訳だし……僕名義になってはいるが、物納された報酬も権利の半分は彼女にある。
ゆえにサーシャがこのチケットを使って、ダンジョンに名前を付けるのは当然の権利だし、頑張ってくれた彼女が受け取るべきご褒美なんだよ。
「ところで、どんな名前にするかはもう決めたの?」
自販機で買ったお惣菜をパクつきながら、サーシャに変更予定の名称を聞いてみると、なんとも彼女らしい"エグ味のあるヤツ"が返ってきた。
「うん。ここ最近ずっと考えていたんだけどね……やっぱり名称からして、"入りたくないなぁ〜"って思わせたいじゃん?」
「そうだね。名称だけで追い払えるなら御の字だ」
「ふふっ。だから、<集金箱のダンジョン>にしようと思って♪」
「ブホゥッッ!!!?」
おぃおぃ、サーシャさんや……ダンジョン名は、そのダンジョンの特性や魔王の思いを表して大事なものなのに、<集金箱のダンジョン>って……
あぁいや……でも実際"集金箱"みたいになっているし、サーシャも「お金大好きなタイプ」だから、ダンジョンの特性や魔王の思いは表現できているのか?
そして何より、「今から貴方の財産ぶん取りますよ〜!」って言われた気分になるから、<集金箱のダンジョン>なんて絶対に入りたくない!
特に、金稼ぎ目的の冒険者からは嫌悪されて、寄り付かれずに済むかもしれないな。
「侵入者をポイントに換えて稼ぐタイプのダンジョンならともかく、私の所はダンジョン内だけで黒字化できているじゃん? だから、アリかなって♪」
「たしかに、冷静に考えると良い名前かもしれないね。魔王になったばかりの頃なら、バカにする元同級生もいただろうけど、もれなく全員死んだし……」
「ふふふっ。たとえ"卑しい"ってバカにされても、油断を誘えるなら私は構わないけど、メグミ君が怒っちゃうだろうし、皆消えてくれて良かったよ〜」
僕等のダンジョンで一番有名な<天国と地獄フロア>は、まさに"集金箱"であり成果も出ているから、名称でサーシャをイジる魔王はいないだろう。
というか……もしそんな奴が現れたら、僕が物理的にも社会的にも殺す!
脳内に現れた仮想敵を何人か殺し、野菜たっぷりのお惣菜を食べ終えた僕達は、<未設定のダンジョン>へ移動してチケットをインポート。
そして、名称変更を行うための情報記入を終えた。
「じゃあ、チケット使わせてもらいます!」
「うん。<集金箱のダンジョン>、ドンと来い!!」
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ダンジョン名:集金箱のダンジョン
属性:風
順位:2/2(39/287)
保有ポイント:203,4528,6759
地脈ポイント:1352ポイント/日
階層:42
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おぉ……改めて見ると、威圧感のある名前だな。
でもこれで、サーシャが気弱な女の子扱いされて見下されたり、ムダに戦いを挑まれずに済むんだから、チケットを使った甲斐はあったと思う。
「ふふふふふっ♪ じゃあ早速、入り口の看板に<集金箱のダンジョン>って書いちゃおっと♪ 虫除けアイテムならぬ、冒険者除けのお守り……万歳!!」
「万歳〜!!」
もし"集金箱"の看板を見てもダンジョンに立ち入り、本格的に攻略を目指す、軍隊以外の奴が現れたら……
「何の目的でこんな金にならないダンジョンへ入り、時間をかけて攻略しているのか」尋ねてみたいな。
ホント、それくらい"探索する気が失せる名称"だもん。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






