228話 壁から証拠がポロリ
僅かなヒントから、"魔王が銃を使って攻撃した"事に気付いた勇者<マサル>は、自分の考えを裏付ける証拠を掴むために……
パーティーメンバー4人を伴って、<伏龍のダンジョン>跡にある、「途中で新設された長い廊下」部分を訪れた。
<−−− コロコロ……。ジャバババババァ〜〜〜〜〜 −−−>
「ふむ。地面がボコボコしているからか、鉄球は途中で止まってしまうけど、大量の水を流せば"出口→入り口"の方へ向かって流れていくな」
「ねぇ、これって明らかに意図的だよね? 魔王はダンジョンを作るとき、自分で掘るわけじゃなくて不思議なシステムを使うから、普通は平らになるもん」
「あぁ。故意に傾斜をつけているのは明白だ。今はただの洞窟になってしまったからアレだけど、ダンジョン生存時は鉄球でも転がったと思うぞ」
槍使い<サラ>の疑問に答えた勇者<マサル>は、先程の"運動会"が控えめだったことで、若干のムラムラ感をおぼえ……
丁度いい"真っ暗な廊下"もある事だし、もう一回戦ヤりたいと考えつつも、隣にピタリと修道士<ジン>が張り付いていたため、調査続行を余儀無くされる。
性欲に溢れているからこそ、切れ者でも、ハーレム要員3人で容易く縛ることができたとはいえ……
緊迫した場面でもサルの一面が顔をだす勇者<マサル>に、無理やり仕事をさせるため、「教会の駒」である修道士<ジン>は色々と苦労しているのだ。
「ハァ〜。(ハッスルしたかったなぁ〜。)リーナ……出口付近からと入り口付近から、3回ずつ"ウォータージェット"を撃ってくれ。射程距離の差を測りたい」
「了解! (大丈夫よ。この調査が終わったら、冷んやりした適度な場所で洒落込みましょう♪)」
修道士<ジン>のジト目に負けて、渋々ながら調査を再開した勇者と美少女3人は、「傾斜の効果がどの程度あるのか」確かめるべく、実際に魔法を発射。
リーナの水魔法は超一級品なので、報告書にあった「魔法師からの報告」とは異なり、飛距離に絞った<ウォータージェット>だと1km以上飛ばせたが……
モンスター側に立つと更に飛距離が500m以上伸びて、(ギリギリではあるが)廊下の端まで届いてしまった。
「この差は凄いな! 実際に撃ってみると、全然違うのか?」
「うん。廊下の傾斜もそうだけど、天井にも傾斜がついているから、討伐軍側からじゃ充分な放物線を描けないのよ。逆にモンスター側からなら、攻撃は容易」
「なるほど」
もちろん「銃から発射された弾」と「魔法師が撃った水魔法」では、質量・スピード共に全然違うため、軌道が同じになる訳ではないが……
この実験一つでも、魔王<ユアン>に代わって討伐軍を撃退した銃持ちの魔王が、「論理的に考えて行動できるタイプ」なのが分かる。
また勇者パーティーは、実験途中にこんな発見をした。
「あれ? 出口の辺り以外はずっと長い廊下だと思っていたけど……此処にもモンスターが潜むための窪みがある。銃撃だけじゃなかったんだね」
「ふむ、なるほどな。人数が増えれば、"結界持ち"みたいな"銃に対抗できる奴"も現れるから、ソイツ等を始末できるように次の手段を用意していたんだろう」
「同意見だ。こういう溝を作ると、"逃げ場のない空間"で攻撃できるというメリットは一部消えてしまうが、弱点を突かれたとき対処しやすくなる」
実際のところ、メグミは勇者<マサル>・修道士<ジン>が考察した用途に加えて、この窪みから手榴弾の投げこみ等もおこなっており……
敵が近づいてきたら、窪みに「後付けで作った壁」をはめ込んで、利用されないよう処理する算段もつけていたのだが……
現場を見たならいざ知らず、跡地の洞窟を調査しただけでそこまで予測するのは、勇者パーティーをもってしても不可能だ。
だが「幸運を呼ぶアイテム」を複数身につけている勇者<マサル>は、調査の終了間際に、自身の考えを裏付ける証拠を見つけることになる。
「…………!! おぃ皆、コレを見てくれ! 銃の弾が壁にめり込んでいる。やっぱり魔王は、モンスターに銃を使わせることで討伐軍を壊滅させたんだ!」
勇者<マサル>が見つけたのは、メグミがゴーレム達に射撃練習をさせた後、<伏龍のダンジョン>から撤退し……
ダンジョンが自動修復と回収を終える前に、魔王<ユアン>を殺したことで、偶然残ってしまったライフル弾だった。
メグミとて痕跡を残さぬよう注意は払っていたが、ダンジョン内部を全て目視で確認してから、撤退する訳にもいかないし……
この場所には偶々、複数のライフル弾が着弾して傷が深くなり、ダンジョンの自動修復と回収に時間がかかったことで、証拠が残ってしまったのだ。
あくまでも、偶然「メグミの不運とマサルの幸運」が重なってしまっただけであり、魔王<ユアン>が死に際に残した呪詛(笑)のせいではない。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






