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227話 なぜこの世界に……




「なぁ……もしかしてユアン討伐軍は、同じようにユアンに詐欺られた"有名どころの魔王"が、ユアンへ報復する場面に巻き込まれたんじゃねぇの?」


 魔法師<リーナ>の意見をキッカケに、勇者<マサル>が導き出した仮説を聞き、パーティーメンバー4人は無言になる。



 なぜならマサルの仮説は、「それまで惨敗していた魔王<ユアン>が突然覚醒した」などという冗談よりも、よほど信憑性があり……


 あれだけの権力者達を騙したユアンなら、先輩魔王にも詐欺くらい仕掛けていそうだから、報復される可能性だって考えられるのだ。



「「「「…………。(報告後のことを考えると憂鬱になってくるけど、あり得そう)」」」」


 もし勇者<マサル>の仮説が正しいとすると、魔王<ユアン>の遺体は、奴に報復した魔王が持ち去った可能性が高いので……


 報告を受けた教会は、必ず「誰がやったのか」特定するよう求めてくるだろう。



 そして報復した魔王が見つかり次第、「其奴が持ち去ったと思われる魔王<ユアン>の遺体と、貴族達から引き出して貯め込んだ財産」を取り返すために……


 「報復者のダンジョンを攻略して、全てを持ち帰れ!」と命じられるに決まっている。



 だが……その魔王が、ユアンの遺体を防腐処理して残しているとは限らないし、奪った資産も既に使われている可能性があるため……


 女性陣から「教会の犬」と蔑まれる修道士<ジン>ですら、内心では「面倒臭い」と感じ、上司へ報告するのを躊躇うのだった。






「ゴホン! とにかく……マサルの仮説が正しいとするならば、"報復者の特定"は必須だから、待機中におこなう調査はそれでいいだろう」


「そうだな。まずは、魔王<ユアン>が指揮をとっていたと考えられる"ボロ負け中"と、状況が一変してからの報告を見比べて、相違点を挙げていくか」



 内心「ウザい」と思っているのは皆一緒だが……彼等は「庶民とは桁3つ違う給料」と「貴族レベルの特権」を貰っている、エリートサラリーマンなので……


 せめてもの抵抗として、「証拠を集めてから報告するという"先延ばし"」だけキメ、(嫌々ながらも)相違点を見比べてユアンを殺した魔王を絞りにかかる。



「ふむ、見比べてみると顕著だな。非常に長い廊下が出現したタイミングで、ユアン討伐軍が分断されて状況が一変している」


「廊下の距離は……測る余裕などなかったため不明だが、目測でおおよそ2km。天井が低かったせいで矢は使えず、一流魔法師の攻撃も届かなかったらしい」



 勇者<マサル>と修道士<ジン>が、相違点を書き出していく隣では、魔法師<リーナ>が"とある記載"をいぶかしがっていた。


「ねぇ。水魔法師が攻撃を放ったとき、床にわずかな傾斜が付いていて、水が戻ってきちゃったって書いてあるけど……これって、水魔法師対策なのかな?」



 一流魔法師である彼女の目から見ると、「目視できないものの水は戻ってくる」程度の傾斜は、水魔法師対策にしては甘く……


 何か"別の意図"があると、思えてならなかったのだ。






「それは水魔法師対策というより、傾斜を調整することで"質量のある遠距離攻撃"を潰しつつ、"自分たちの攻撃が届く範囲"を増やそうとしたんだと思うぞ」


 (跡取りじゃないとはいえ)貴族階級出身で、高等教育を受けてきた修道士<ジン>が、魔法師<リーナ>に説明していると……


 リーナの疑問を聞いてから、考える素振りを見せていた勇者<マサル>が、戸惑い半分・不快さ半分といった様子で、口をひらく。



「なぁ……俺、敵が使った凶器の正体……分かっちゃったかも。種類までは知らねぇけど、たぶん"俺が転生前に住んでいた世界"で使われていた銃だ!」


「「「「…………!!!?」」」」



「銃の中には"射程距離が2kmを超えるヤツ"もあった筈だし、金属の玉を飛ばす武器だから、傾斜をつけて調整することで射程を伸ばすって考えとも合う」


 苦々し気にそう語る勇者<マサル>に対して、女性陣が口々に問いかける。



「でもさぁ〜。勇者様と同じ世界から来た魔王の話なんて、聞いたことないよ?」


「私も! それに異世界から救世主を喚べるのは、神様の僕である教会だけじゃないの!?」


「というか……金属の玉を2km以上飛ばす武器って、ヤバくない?」



 魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>のいずれも、困惑と恐怖心から声が震えているが……


 この世界の人々にとって、「魔王サイドにも転生者がおり凶悪な異世界産武器を使いこなしているかもしれない」という話は、それだけ衝撃的なのである。



「信じられないのも無理ないが、否定してかかるのが一番危険だから、"あり得るかもしれない"と覚悟して動いてくれ」


「「「…………ぅん」」」


「とにかく、銃が使われたと思われる"ダンジョン跡"を見に行こう。仕掛けはもう残っていないけど、傾斜や建築構造は確認できるはずだ」



 珍しく狼狽した女性陣を、お得意のイケメンスマイルと説得力抜群の声でまとめた勇者<マサル>は、「現場を確認しに行こう」と提案。


 多少なりとも銃の造りを知っている異世界出身者として、「メグミが合理的に考えた運用法」の痕跡を、紐解きにかかる。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
それだけの現場状況でそこまで推測できるもんなのか?勇者マサルは元軍人か軍オタとかだろうか。
[気になる点] 防具処置?正しくは防腐処置では?
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