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225話 とある修道士の悲哀




 メグミが、モンティートへ送るメールの文章を考えている頃……


 大司教から出撃命令を受けた勇者は、パーティーメンバー4人を伴い、<伏龍のダンジョン>へ向かっていた。



「ふわぁ〜。休む間もなく7連続で魔王討伐だなんて、大司教様は鬼です! 鬼畜魔王です!!」


「リーナ、大司教様の悪口を言うのはやめなさい。全ての元凶は、消しても消しても増える醜悪なダンジョンであって、お忙しい教会の方々ではありませんよ」


「チッ! は〜い。(まったく……。大司教の犬でしかないアンタが、勇者パーティーに選抜された事自体が不満なのよ! たいした実力もないくせに!)」



 勇者パーティーと聞くと、強者男性にありがちなハーレムパーティーを想像する人もいるかもしれないが……このチームは違う。


 研鑽をつんだ聖職者が持つ<聖者の祈り>ギフトは、勇者と<ピー>すると使えなくなってしまうので、ハーレムに加わりかねない聖女は入れられない。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜聖者の祈り〜

純潔を守りとおし、"長い間"修行を積んだ聖職者だけが得られるギフト。

ダンジョンの改造阻害や、ダンジョン攻略時のステータスアップなど、熟練度によって叶う範囲が広がる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






 かといって見目のいいオバサン聖女を投入しても、他のパーティーメンバー(美少女)に嫉妬して和を乱したり、ヒステリーを拗らせてしまうので……


 上層部の判断により、勇者と<ピー>する心配のないオッサン修道士 (もちろんブサイク)が、"お目付役"も兼ねてパーティーメンバーに抜擢された。



 しかし事あるごとに説教をたれ、「仲間の意見<<教会の意向」な修道士を、反抗期まっただ中のパーティーメンバー達は疎ましく思っており……


 魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>は、彼を「加齢臭と汗臭さのコンボ」扱いして影で悪口を言っているし、勇者<マサル>もそれを黙認。



 だが彼等じゃ替えの効かない<聖者の祈り>を持っており、教会から支給される活動費も握っている修道士<ジン>と、表だってモメる訳にもいかず……


 さり気なくハブったり、ダンジョンを攻略するとき修道士<ジン>の回復順を、多少遅らせる程度の嫌がらせにとどめていた。



 もちろん"共通の敵"がいるから鎮静化しているだけで、勇者のハーレムメンバーである、魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>の仲も悪い。


 各々の実力が高く、戦闘に入れば(最低限の)チームワークは担保できるパーティーだからこそ、モンティートが警戒する程の活躍を見せているのだが……


 思惑盛り盛りの上層部によって作られた勇者パーティーなど、内実はこんなものである。






 そんなこんなで、<伏龍のダンジョン>までやってきた勇者一行。


 修道士<ジン>は、今夜も行われるであろう「勇者とパーティーメンバーの"運動会"」に、内心ため息を吐き……


 表情からそれを悟っている彼以外のメンバーも、「アイツ邪魔だから、静かなのにチェンジできねぇかな?」と思っているが、理性があるので口には出さない。



 彼等には、「勇者パーティーの一員として民から崇められ、何不自由ない一生をおくる」という、俗世臭バリバリの目標があるため……


 下手に騒いで上層部を怒らせ、パーティーから追放される訳にはいかないのだ。



「ぅん? おかしいぞ……。マサル、このダンジョンは変だ! <聖者の祈り>で枷をはめようとしたのだが、すでに死んでいてうんともすんとも言わない」


「なにっ? 祈祷失敗の可能性は……ないよな。つまり連合軍20万人以上を殲滅した魔王<ユアン>は、ダンジョン諸共すでに死んだという事か!」



 一瞬、修道士<ジン>の祈祷失敗を疑ってしまった勇者だが、彼の顔面と非モテっぷりを思い出して、(失礼すぎる理由で)その可能性を消し去った。


 そしてジンの主張が正しければ、ダンジョンと共に魔王<ユアン>も死んでいるはずなので、目の前にあるのは"ただの洞窟"だと理解する。






「ジン。念のため、一度最奥まで潜ってから司教へ報告書を送ろう。お前の主張通り"この穴が洞窟になっている"なら、今夜中には攻略できるはずだ」


「ふむ、確かに……。速報は今すぐ送るべきだが、魔王<ユアン>の死亡理由も調査する必要があるし、ダンジョンには潜るべきだな」



 勤労意欲にあふれたセリフを述べつつ、内心「冷たい洞窟の中でヤると気持ちいいんだよな」と、猿みたいな事を考えている勇者<マサル>。


 ハーレム要員である魔法師<リーナ>・槍使い<サラ>・斥候<キラリ>も、当然のごとく勇者の肩をもったので、ジンも"速報"以外は賛成した。



 だが……もし彼が、ユアンに代わって連合軍20万人を屠った魔王<メグミ>に、自分と同じ<聖者の祈り>ギフトが生えており……


 しょっちゅう「勇者のハーレム要員」より可愛い彼女とよろしくヤっても、ある程度ギフトの恩恵を受けられる状態にあると知ったら、血の涙を流すだろう。



 大多数の凡人にとって、人生とは残酷で苦しいモノなのである。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
銃火器売ってるなら最後っ屁で地雷でも仕掛ければいいのにね。
[一言] 勇者がこんなのばっかりなら恵のダンジョンもかなり効くな、良かった…
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