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222話 詐欺師は全てを奪われて


〜ユアンside〜




 どれほど壊れたいと望んでも思考は正常なままで……かといって自殺しようにも、四肢を拘束され噛みちぎる舌すらない状態だから、難しく……


 "絶望"という言葉すら生温い環境のなか、私は延々とモンスター共に穢され、魔王としての尊厳をこれでもかというほど砕かれた。



「ぁぁ……。(死にたい……死にたい…………)」


 なにを考えてもムダと悟り、死を望むだけとなってしまった私の頭だが、これだけはハッキリと分かる。


 数日前までの魔王<ユアン>とは違い、現在の私は「そこら辺の奴隷よりも遥かに惨めで、穢らわしい存在」になり下がったということ。



 子爵家に生まれて次期当主の座まで手に入れた私のカラダは、今や性病に冒され死を待つのみとなった、奴隷身分の醜い娼婦と同等。


 いや、それ以上に腐っており……貧民街のゴミにすらなれぬ卑しさである。



「(たった一度……。たった一度だけ、悪い奴を信じてしまったせいで……私は、再起不能なまでに穢された…………。たった一度の過ちで……)」


 囚われの身となった当初は、メグミが来たら命と引き換えてでも喉笛に噛みついて、地獄へ道連れにする気だったが、今はその気力すら残っていない。



 たぶん今アイツが部屋に入ってきたら、私は恥も外聞もなく頭を下げて、「お願いだから殺してくれ」と頼むだろう。


 意地を張る心すら、延々と続く拷問の中で削り取られ……敗者である私は、正真正銘"メグミの家畜"となったのだ。






<--- コンコンコンッ! ガチャッ --->


『…………! マスター、お帰りなさいませ。掃除するそばからコイツが部屋を汚すので、悪臭で気分が悪くなるかもしれませんが、寛大な心でご容赦ください』


『『ご容赦ください』』



 何だ?


 今や私より上の立場となってしまったオートマタ共が、視界に入らぬ場所で誰かと話している。


 マスターという呼び方……この口調…………もしかして、相手はメグミか?



『えっ? あぁうん。生身の男を壊しているんだし、多少の"汚れ"は仕方ないよ。ゴキブリだって、苦しんで死ぬ時には涙を流すって聞くしね』


 くくくっ、酷い言い草だな……私はゴキブリと同じ扱いなのか。



『担当君達! いい感じに背中の皮膚が剥けているから、床と一緒にタワシでゴシゴシ擦ってやってくれ。特典映像追加で、顧客満足度をアップさせよう』


『『『かしこまりました!』』』



 いや、待ってくれ!


 ゴキブリ扱いでも何でもいいが、私はまた傷付けられるのか!?



<--- ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ --->


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?」






 剣山で擦られるような痛みに悶絶し、一周回って昇天しそうになっていると、なぜか短時間で嫌がらせが終わり、私は再び拘束台ごと寝かされた。


 男の尊厳を貶めるため<ピー>を焼かれた件については、もう何度目か分からないのでどうでもいいが……


 途中から視界に入ったメグミの野郎が、なぜか顔を青褪めさせドン引きしていたのは、「加害者としての礼儀」がなっていないし不快である。



「(ぅん、何だ……? 奥の方で"臭いゲロ"を吐いていたメグミが、蔑んだ目でコチラを見ながら近付いてきたぞ?)」


 そして奴は下卑た笑みを浮かべながらペラペラと語り始め、私はその言葉で、「これまで受けてきた理不尽すぎる仕打ちの理由」を知ることとなる。



「ユアン。ボロボロになるまで、"18禁ビデオの撮影"お疲れさま。お前が主演男優として出演した映像を先輩方に売って、僕は一儲けする予定なんだ」


「ぅん〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」



 ふざけんな!


 「もう殺して欲しい」とか思っていたけど、やはりコイツを道連れにするまでは絶対に死ねん!!


 助けを求めた後輩の尊厳を金に換えるなんて……貴様は、どれだけ根性腐ったら気が済むのだ!!!!







「どうした、なに怒っているの? お前は踏み台にした先輩方から報復されて、自業自得の末路を辿っただけ。全て"自分の行い"が招いた結果だ」


 なっ!?


 いや……例えそうだとしても、貴様が私を利用して金儲けを企んでいい理由にはならないだろう!!



「大事な彼女にケンカを売られて、僕が何もしないと思ったか? どれだけ、頭お花畑なんだよ。まぁいいや。今から、サーシャの件の落とし前をつけてもらう」


「……………………」



 チッ!


 「鈍いから大丈夫」とばかり思っていたのに、気付かれていたか……。



 ぅん?


 ちょっと待て……今コイツ、「サーシャの件の落とし前〜」云々言わなかったか?


 どう考えても報復は十二分に済んでいるはずなのに、今さら何を……?



「僕は平民上がりの魔王だけど、勇者の血を引いているちょっと特殊なタイプでね。魔王でありながら、勇者と同じく"倒した魔王のギフト"を奪えるんだ」


「……………………!!!!」



「うん、そうだよ。お前が想像したとおり、今からお前の<遠隔商談ギフト>を奪う。お前は、金・権力・尊厳どころかギフトまで奪われて、惨めに死ぬんだ」


「ゥググゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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