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218話 メグミの甘さ


〜メグミside〜




 軽く誘導しただけで亀裂が入り、互いが互いを"敵"と認識するようになった、「貴族家出身のエリート達」と「駒でしかない一般兵」。


 夜襲につぐ夜襲で一般兵が"内なる敵"と戦えないと、コチラとしても不都合なので、不審に思われぬ程度の襲撃はしつつも手を抜いたところ……


 案の定、大規模なゴタゴタが起きてエリート幹部が皆殺しにされ、兵士達が奴等の首を槍に刺して掲げたり、ドヤ顔でスピーチする展開となった。



「あ〜あ。指揮官皆殺しは、まだ辛うじて理解できるけど……奴等をかばった魔法師まで、タコ殴りにしちゃダメだろう。アイツ等、自爆コース一直線じゃん!」


 上流階級の世界を見たことがない一般兵は知らないかもしれないが、魔法師という生き物は、学業エリートよりもプライドが高い"厄介な連中"なのだ。



 勉強さえできれば、僕みたいに特待生で高等学舎に通える学業エリートと違って、魔法師は大抵の場合、幼い頃から専属の家庭教育をつけて学んでいる。


 つまりそれだけ"実家が太い"わけで……本人達は「敗北時に責任を取らされる指揮官」の立場を避けていても、中身は誰よりもお坊ちゃんなんだよ。



「それを容赦なくボコボコにして、皆の前で土下座させ頭を踏みつけて大恥をかかせたんだから、魔法師連中は意地でも報復を仕掛けるだろう」


 本来なら実家が出てくるパターンだけど、ここは金・コネ・権力の通じないダンジョンなので、プライドの塊である魔法師なら命を懸けるんじゃないかな?






 そう思って、あえて魔法師を泳がせ……モンスター達に一般兵の手足のみ切断させて、ポーションを消費させつつ足手まといを量産していたところ……


 早速その日の晩、回復魔法師が集団自殺して敵軍の回復手段はなくなった。



 そのうえ攻撃魔法師たちが、ちゃっかり「己の服の裏に縫い付けてあるマジックバッグ」に軍事物資を移し替えて、着服したため……


 ただでさえ厳しい敵軍の懐には木枯らしがふき、しかも帳簿係が粛正されていたため、ほとんどの兵士はこの危機的状況に気付けていない。



「普通、人間にとって"水"の次に大切な"塩"がなくなれば、危機感くらい持つと思うんだがなぁ〜。食料不足の前に、塩の枯渇について突っ込めよ!」


 現在、敵に残された塩は1日分だけであり……明日以降使う予定の塩は、岩塩の状態で魔法師のポッケに入ってしまったため、彼等が逃げた時点で詰みだ。



「あらら。ようやく兵糧不足を指摘する者が現れたと思ったら、魔女裁判並みの理不尽さで、即"リンチ刑"執行とは……。勉強って、ホント大事なんだなぁ〜」


 モンスター討伐の遠征経験があるのか、辛うじて兵糧不足に気付き、(手遅れ感甚だしいが)騒ぎ出したベテラン冒険者。



 しかし伝える相手に「前提となる知識・経験」がないと、同じ言語を喋れても、危機的状況を理解させることはできないため……


 少数側だが立場的優位をもっていた、エリート指揮官を皆殺しにしてしまった現状では、ただただ「狂った老害」扱いされ撲殺されてしまう。






「それで異常に気付いた中堅冒険者が、"ベテランがあそこまで言うなら念のため"と干し肉を盗んで離脱。魔法師も離脱して、残った連中は完全に"詰み"だな」


 もちろん離脱組も適度なところで殺すので、生きてダンジョンを出られる訳ではないのだが……


 魔法師・冒険者共にある程度実力があり、正面からモンスターをぶつけるとウチの子が死んじゃうので、「遠距離射撃による即死」となるだろう。



 しかし重要な物資を根こそぎ取られ、ダンジョン攻略を進める訳でもなく、ケンカばかりしているアホ共。


 奴等は、喉の渇きで近くの泉にある毒水を飲んで死ぬか……それとも、飢えで"仲間"を"肉"と勘違いして、殺し合いを始めるか……


 何方にしても死ぬまで時間がかかるし、苦しみ抜いたうえ絶望のなか最期の時を迎えることになる。



「まぁ僕としては、ウチの子達を殉職させずに敵をポイント化できれば、奴等の気持ちなんてどうでもいいんだけど。己の意志で武器を持った以上、自業自得だ」


 <伏龍のダンジョン>で僕が唯一同情した人間は、ユアンの奴隷狩りで無理やりココに連れてこられて、奴隷奉公させられた人達だけ。



 本当は、十分なお金を持たせて元いた場所に返してあげたかったけど……注目されている今そんな事をしたら、彼等は権力者に利用されてしまうので……


 彼等を眠らせた状態で、この件に無関係な国まで運んだうえ、ドッペルゲンガーを「正義感あふれる青年」に変装させて、その青年が助けた事にした。



 魔王としての効率を追求するなら、口封じがてら彼等も殺してポイント化する方が、安全性・資金面どちらをとっても良いんだけど……


 僕はまだそこまで魔王になりきれないので、自ら武器を持ってダンジョンへ乗りこんだ連中ならともかく、一般人を殺す行為はどうしても好きになれない。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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