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217話 理想と現実


〜とあるモブ兵士side〜




『コレを見ろ! ポーションと回復要員を囲いこみ、贅沢三昧のくせに我々の犠牲は顧みなかった、クソ共の首だ!! 俺たちは、自由になったんだ〜!!』


『『『『『『『『『『よっしゃあ〜〜〜〜っ!!!!』』』』』』』』』』



 いつも理不尽な命令ばかり出し……仲間が毒でやられても、自らの分が無くなるのを気にして、備蓄のポーションを吐き出さなかったクソ野郎共を……


 俺たち一般兵は協力して惨殺し、奴等の素首を槍に刺して高々と掲げた。



 エリート同士という事で奴等をかばった魔法師共は、貴重な戦力・回復要員だため殺しはしなかったけど、泣きながら命乞いするまでリンチしたので……


 もう二度と偉そうな態度はとれないはずだし、俺たちに逆らうこともないだろう。



『たしかにポーションの残りは少ない。魔王<ユアン>に回復魔法師を狙い撃ちされたせいで、我々が厳しい状況に立たされたのも確かだ』


『だけど、まだ多少在庫は残っていた! 共に苦しんだ仲間を助ける術はあったのに、奴等は己の身の安全を確保するために、仲間を見殺しにしたんだ!!』



『これからは平等に分け合い、皆でダンジョンを攻略して、魔王<ユアン>が貯めこんだ財宝と物資を持ち帰ろう。死んだ仲間の分まで、幸せになるんだ!』


『『『『『『『『『『おぉ〜〜〜〜っ!!!!』』』』』』』』』』



 俺はバカだから難しい話はよく分からないけど、処刑前に指揮官共が言っていたとおり、状況は厳しいのかもしれない。


 だけど一致団結した俺たちなら、どんな困難だって乗り越えられるし……皆で魔王<ユアン>を倒して、分け合っても十分な量の財宝を勝ち取れるはずだ。


 そしてコイツ等と共に、「二度と貴族の下で働かなくていい、自由な人生」を手に入れてやる!






 ……………………そう思っていた、3日前の俺を殴りたい。


「オェッ……オエェェェェ…………。クソが……っ…………」



 まず執拗な毒攻撃と、指揮官不在による連携不足のせいで、解毒ポーションの在庫は初日で尽きた。


 そのうえ徹夜で負傷者の治療をさせていた回復魔法師共が、ちょっと目を離した隙に自刃しやがったことで、俺達の命は危機に晒されたのだ。



 なんだよ……「どうせ死ぬなら、憎き貴様等を道連れにする。貴様等の方が魔王より邪悪だ。地獄へ堕ちろ!」なんて、"血文字の呪い"を遺しやがって。


 仲間が負傷したら、MPが尽きるまで回復に努めるのが奴等の仕事だし、ポーションが枯渇して回復手段が他にないんだから、徹夜労働くらい当たり前だろ。



 だから、高等学舎上がりは嫌なんだよ。


 普段エリートぶって、涼しい顔で贔屓されているくせに、根性がなく肝心な場面で役に立たないからな。



 だが悲劇は、回復手段の喪失だけじゃ終わらず……なぜか、まだ大量に残っている食糧の奪い合いまで勃発した。


 騒動の中心にいた義勇兵共は、「この量じゃ5日も保たない」とか言っていたが、実際に確かめてみたら見上げる程の高い山ができたし、十分じゃねぇか!



 もちろん騒ぎを起こしたアホ共は、多数決の末「輪を乱した罰」として、皆から一発ずつ殴られ途中で死んだが……


 「物資を囲いこんだ貴族を憤慨して殺したばかりなのに、自分が同じことをして恥ずかしくないのか」と、納得できる理由が聞けるまで問い詰めたかったぜ。






 とはいえ、裏切り者がどうなるか拳で示したし、もうバカな真似をする輩は出てこないと思って熟睡したら……


 次起きた時には、1000人以上のクソ野郎共が備蓄の食糧を盗んで、軍を離脱した後だった。



 そして奴等が、マジックバッグごと全員分の食料を盗み去ったせいで、13万人以上いる俺たちは、本当に食うモノがなくなり……


 乾きと飢えを癒すために、毒の泉で腹が膨れるまで水を飲んだり、倒れた奴の死肉を奪い合ったりと、「醜さの極み」みたいな絶望的状況に陥っている。



 俺も必死に空腹を我慢していたが、内輪モメばかりで全然ダンジョンを攻略しない味方と、次々離脱する裏切り者に絶望して……


 ついに理性の糸が切れ、近くに転がっていた誰かの死肉を食い、血をすすってしまった。


 そして、其奴が死んだ原因と思われる毒に侵されて、今まさに死を迎えようとしている。



「(あぁ、なぜ俺たちはこうなってしまったのだろう? 偉そうに指示ばかりして、楽しているエリート共を殺したのは、"正義"だったよなぁ?)」


 ヤバイ、本格的に頭がクラクラしてきたぞ。



「(どう見ても食い切れない量の食料があったのに……それを"足りない"と言ったバカ共を、粛正したのも正しかったはずだ)」


 なのに結果として、1000人以上の逃亡と食糧の喪失が起こり、間違っていない俺たちがバカを見て、地獄のような環境で死にかけている。



「(結局、自分勝手な奴が勝つってことかよ! あぁ、でも……内輪モメばかりで、貴族共を殺してから1階層も進んでいない俺達にも、原因がないとは……)」


 あぁ……いったい、何故こうなってしまったのだろう?

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
13万人分の食料消費を計算できなかったのかな、帰りの分がないのに気づいた人が声を上げたら処分しちゃった感じかなあ。
[一言] 本当に肝心なところで役に立たなかったのは学の無いモブ兵士なんだよなぁ……いやそういう状況に追い込まれてるわけなんだけども!
[一言] やはり一番邪悪なのはさくs(メモはここで途切れている
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