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212話 敵には厳しく・味方には優しく




 お客様が満足する"ユアンの最期"を撮るべく、執事君に「お仕置きのスケジュール表」を渡した僕は、一旦アイツの事をサーシャと執事君に任せて……


 <伏龍のダンジョン>の奥深くまで潜りこんでいる敵兵を、地上で待機している奴等と合わせて間引くために、本気で動き始めた。



 きっと今頃<恵のダンジョン>では、ゴキブリハーレムで前戯を終わらせたユアンが、撮影映えする<ピー>持ちのオークジェネラルにもてあそばれ……


 家畜と同レベルまで堕ちた自分の心を救おうと、自殺を考えている辺りだと思うけど、ウチの拷問担当者は優秀なのでそう簡単には死ねないよ。



「(自業自得。キッチリ落とし前をつけてから逝ってね)」


 ウチの拷問担当者は、ちゃんとショック死せぬよう配慮した上で、ユアンの商品価値を最大限高める撮影をしているため……


 アイツにできるのは、<伏龍のダンジョン>から僕が帰還するまで、あらゆる搾取をされながら「自分が過去に行った蛮行」を悔いる事だけである。



「マスター。射撃部隊の活躍により、22階層から敵を追い出しました! 現在は21階層と22階層をつなぐ階段に、バリケードを張っております」


「分かった。下層階から押し上げるだけだと時間がかかるから、途中のフロアでも射撃部隊が活躍できそうな場所を奪還して、そこを拠点に敵を分断してくれ」


「かしこまりました」



「あと軍人共が水分補給に使っている泉に、遅効性の毒を混ぜるんだ。あからさまなヤツじゃなくて、腹を下して足手まといになるレベルの軽い毒ね」


「お任せください!」






「それと栄養補給に使われている果樹園も、毒性のある果実がなる木を混ぜることで、下痢人間生産工場にしてしまえ! 致死性のある毒はダメだぞ!」


「その場で毒殺するよりも、同僚のモチベーションを下げつつ移動の妨げになる、足手まといを量産する方が、敵にとって嫌だからですよね? 了解です!」



 そうそう。


 ダンジョンの奥深くで下痢マンと化して、ヨタヨタとしか動けなくなった奴なんか、その気になればいつでも屠れる。


 だけど現場指揮官は、そう簡単に「ダンジョン奥深くでまで進んだエリート兵士」を見捨てられないから、生かしておけば高確率で被害が拡大するのだ。



「というか……なんだよ、美味しい果物が実る果樹園って。貴族の庭じゃないんだから、解毒ポーションを使わせたり幻覚作用をもつ樹木にするべきだろう!」


 そもそも財政難が極まっている状況で、律儀に「武器や防具入りの宝箱」なんか排出してんじゃねぇよ!


 敵の手に渡る宝箱に入れていいのは、「煽り文句を書いたメモ帳・切り落とした敵兵の首・水銀みたいな毒性のある金属・重くて嵩張るドロップ品」だけだ。






 もしユアンが聞いたら、「だって他の迷宮でも宝箱は出しているもん!」と叫びそうだが、サラッと無視して<伏龍のダンジョン>を鬼畜化し……


 突然の変化に対応できず戸惑う敵兵をガンガン間引いていると、ユアン配下のオートマタが、後ろ手に縛られた状態で声をかけてきた。



 あぁ……ちなみに先輩方のダンジョンが"飴"も用意しているのは、そうしないと利益狙いの冒険者を呼びこめず、ポイントを稼げないからだよ。


 彼等はキッチリ収支のバランスを計算して、その上でプラスになるから宝箱を置いているのであって、表面だけ真似したユアンとは訳が違うのだ。



「メグミ様。お忙しいところ申し訳ないのですが、お時間よろしいでしょうか?」


「うん、大丈夫だよ。もう話し合いがまとまったのかい?」



「はい。知性ある仲間全員で話し合った結果、我々は"魔王<メグミ様>の傘下となり、第二の生をスタートさせる"という決断ができました」


「そうか。なら全員、所属を<恵のダンジョン>へ移して……今後は、僕の部下として扱ってもいいんだな?」


「勿論でございます。未熟ではありますが、先輩方のご迷惑にならぬよう努めますので、どうか安らかに生きられる待遇で迎えてください」


「うん。基本的な待遇は先輩モンスターと一緒にするし、笑って暮らせる環境は整っているから、決断を後悔させる事はないと思うよ」






 ちなみに……移籍の決め手となった理由を聞いてみたところ、僕とモンスターの良好な関係が、彼等の心に深く刺さったらしい。


 ユアンは道楽でモンスターを虐げるようなタイプじゃないから、彼等もロミオット達の配下ほど、酷い扱いを受けていた訳ではないけど……


 アイツにとって、モンスターはあくまでも「金で買える駒」であり、成果や成長を喜ばれる事はあっても、可愛がってはもらえなかったのだろう。



 愛情をかけすぎてモンスターを戦闘に出せなくなり、維持費だけが増えちゃうパターンは論外だけど、彼等だって心ある生き物だ。


 大事にしてくれる主人には忠義を尽くすし、駒としてしか見ない主人なら、モンスターからもビジネスライクな感情を向けられるのである。



「メグミ様のご温情に、感謝いたします」


「ん。これからよろしくね」


 彼等がどの程度納得して、生き残る道(移籍)を選んだかは分からないけど、最期に「主人を替えて良かった」と思ってもらえるといいな。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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