204話 勘違い、乙
〜ユアンside〜
戦闘員や金銭の支援だけでなく、アイデアもメグミ先輩にタカるという、素晴らしい案を思いついた私は、さっそく同盟チャットで彼にメッセージを送った。
「フゥ〜。へりくだらないといけないのは不快だけど、少しの我慢で一発逆転できると思えば、このくらいは耐えられる」
あくまでも、後輩として媚を売るのは「不利な状況に立たされている現時点」での話であり……
私がこのピンチを脱したあかつきには、必ずダンジョンを成長させて先輩を出し抜き、サーシャ先輩含む全てを奪ってやるのだから!
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3 名前:ユアン(79期)
メグミ先輩、さっそくで悪いんですが……既にダンジョンが存亡の危機に立たされているので、支援をお願いしたいですm(_ _)m
私じゃ最適な支援法が分からないし、この状況まで追い込まれた私よりも、先輩の判断の方が適切だと思うので、作戦立案も含めて頼めませんか?
図々しい話ですが、よろしくお願いしますm(_ _)m
4 名前:メグミ(78期)
分かった。
今からシミュレーションして最適な支援法を考えるから、ユアン君はダンジョンの規模・所在地・敵の数・資産状況諸々……
シミュレーションの元となるデータを、同盟チャットに書きこんでくれる?
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「うっ! ダンジョンの情報を要求してきたか。とはいえ、コレは仕方がないな。闇雲な推測で作戦を立てられる方がよほど困る」
それにダンジョンの所在地や属性は、既にゴシップ紙で拡散され広く知られてしまったし……
やかましい小物魔王も追随して、魔王掲示板の全スレッドに<伏龍のダンジョン>の情報を晒すという暴挙に出たから、今さら秘匿もクソもないだろう。
「さすがに現金資産が枯渇したことを正直に書くのは、心理的抵抗があるが……仕方ない。カッコつけて、支援額を削られたら意味ないからな」
諦めて全て正直に書き、メグミ先輩が少しでもいい作戦を思いつけるようアシストしよう。
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5 名前:ユアン(79期)
了解です!
伏龍のダンジョン
魔王:ユアン(79期)
属性:水
階層:全24階
所在地:ルールベル皇国・ドゥーヌ側の上流
地点番号:DF2542-6
敵の数:22万人。まだ増える見込みです。
資産状況:現金資産ナシ。収入は全て防衛費に回しています。
戦局:19階まで突破されています( ; ; )
6 名前:メグミ(78期)
確認しました!
最速でシミュレーションを終わらせるから、もう少しだけ待っていてねm(_ _)m
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そして、待つこと10分……
先輩も私の状況を知り「これはマズイ」と思ったのか、シミュレーションを急いでくれ、想定よりも早く返事がきた。
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7 名前:メグミ(78期)
ユアン君。
色々考えた結果、資金やモンスターの供給だけ手助けしても、ダンジョンが防衛向きの構造にならない限り、状況を打破できそうにないから……
僕とサーシャが直接出向いて、<伏龍のダンジョン>をリノベーションするのはどうだろう?
もちろん当座の防衛に必要なモンスターも連れていくけど、ダンジョンの防衛力は、モンスターの強さよりもフロアの構造で決まる。
だから去年培った経験を活かして、ハメ手みたいな裏技がたくさん使えるフロアを生み出し、1階層あたりの「削れる人数」を増やしたいんだ。
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「むっ……」
メグミ先輩が何を言いたいのかは、分かる。
このメッセージは、要するに……
「お前のダンジョン運営には欠陥がありそうだから、一度僕が"お直し"して、マトモな環境で敵を迎え撃ちたい」という本音を、穏やかに書いたもの。
「殴りたいほどムカつくけど、他人がこのデータを見せてきたら私も同じことを思うだろうし、言い返せない。というか、見捨てられなかっただけ感謝だ」
普通なら呆れて見捨てるところを……自腹でフォローするどころか、先生のように手直ししてくれると言うのだから……
プライドは捨てて、全て受け入れるしかないだろう。
「あっ! でも一応、慎み深い後輩のフリはしておこっと」
ここで露骨に「あざっス!」とか言ってタカったら、お人好しの先輩でも呆れ果て、話を全て無かったことにされかねないもの。
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8 名前:ユアン(79期)
なるほどです!
経済的な支援をして頂けるだけでなく、ダンジョン運営のコツまで教えてもらえるんだから、もちろん私は賛成です!
でもウチと先輩方のダンジョンは距離が離れているので、高いアイテムを買わないと行き来が……。
9 名前:メグミ(78期)
それって、パートナーのダンジョンへ飛べる<転移陣>のこと?
大丈夫、大丈夫!
たしかに高価な買い物だけど、君の命には換えられないし、1000万ポイントくらい僕が出すから平気だよ^^
ユアン君は、コッチの戦闘準備が終わるまで、人間にコアルームを落とされぬよう、<伏龍のダンジョン>を死守してくれれば、それでいいから。
10 名前:ユアン(79期)
ありがとうございます!
メグミ先輩が優しすぎて感動( ; ; )
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「くくくっ……いい子のフリ、完了!」
これで先輩は、呆れながらも年下魔王を指導する"先生"と化し、時間をかけて発見したコツを、惜しげもなく私に教えてくれるはずだ!
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






