195話 顔はニコニコ。腹黒く
「いや〜、さすがユアン君。人好きする笑顔を浮かべたイケメンのスキャンダルは、信憑性皆無でも人目を引くね〜。このゴシップ紙は絶対に売れるよ!」
僕がユアンを追い詰めるために、おこなった仕事は3つ。
一つ目、得られた映像証拠をモンティート先輩へ売り……代わりに、アイツのダンジョンの座標を教えてもらったこと。
二つ目、ネタと金に飢えているゴシップ誌の記者に賄賂を渡して、微かな証拠を元に「それらしいネタ」を書いてもらい、雑誌に掲載してもらった。
そして三つ目。
モンティート先輩から買い取った、アイツのダンジョンの座標を依頼票に明記して、冒険者ギルドに匿名の「ダンジョン討伐依頼」を出したことだ。
「ゴシップ誌が出たタイミングで匿名依頼を持ち込めば、ギルドが勝手に"恨みを持つ貴族が裏で動いた"と早合点して、色々と配慮してくれる」
依頼料は相場の10倍に設定して、冒険者ギルドへのチップも弾んだため、気付いたら広域依頼となっており……
ドッペルゲンガーに申し込ませた地区以外のギルドでも、ユアンのダンジョンが晒されていて、笑いが止まらなかったよ。
そして一番ウケたのは、自分が追い込まれた事に気づいたユアンが、「追い込んだ張本人」である僕に、魔王掲示板で相談を持ちかけてきたこと。
冷静に考えて、サーシャをカモにしようとした時点で、僕は「いつ敵に回ってもおかしくない相手」なのに、なぜ土壇場で頼ろうとするのかね?
自分の命がかかった状況で、「彼女へケンカを売った犯人を探すことすらできないアホ」に、打開策を相談するなんて論外だし……
ちゃんと犯人探しをしていたら、すでに真相にたどり着いて「ユアン=敵」と認識しており、報復のタイミングをうかがっていると、分かりそうなものだが。
「ねぇメグミ君。私も、メグミ君とユアンのやりとり覗いていい? 性格悪いメグミ君も、カッコ可愛くて好きなの!」
「もちろん! サーシャも被害者なんだから、僕(ユアンの情報を売った奴)が答えているところを見て、一緒に"ざまぁ"しよう」
「うん♪」
ちなみに……正義感あふれる魔王が、助かろうと足掻くユアンに、余計な知恵を授けぬよう……
そういうボランティアをやりそうな先輩方には、あらかじめモンティート先輩が根回しをしてくれた。
どういうルートを使ったかは分からないけど……昨晩何気に呟いたコメントに、付き合いのない先輩方から「いいね」が多数寄せられたときは……
古株魔王の人脈と、裏切り者に対する妙な団結力に驚いたよ。
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741 名前:ユアン(79期)
メグミ先輩、相談があるんですけどいいですか?
742 名前:メグミ(78期)
もちろん。
遠慮なくどうぞ^^
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さてさて……始めるか!
ユアンに怪しまれぬよう「一理ありそうなアドバイス」をしつつ、アリ地獄のようにコイツを沼に落として、這い上がれないようにしてやる!
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743 名前:ユアン(79期)
ありがとうございます!
実は、悪意を持つ誰かに悪い噂を広められてしまって……。
そのせいで、人間の権力者にダンジョンを狙われそうなんです。
スタンピードミッションをこなすために、人間の街を襲ったのは事実ですけど……それ以外は全部冤罪なのに、報復がデカすぎて泣きそう。
744 名前:メグミ(78期)
そっか、間違えるなんて酷いね( ; ; )
他の先輩方も被害に遭っているみたいだし、物騒すぎて嫌になっちゃうよ。
サーシャのダンジョンも、誰かに冤罪を着せられて殲滅候補にされちゃったし(T ^ T)
745 名前:ユアン(79期)
サーシャ先輩も……。
お互い大変ですね( ; ; )
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「チッ! 何が"お互い大変ですね"だよ。サーシャに冤罪を被せたの、100%お前じゃん!」
「あははは。ユアンが報復されるように仕向けたのも、メグミ君だけどね。ダメだっ、この会話ウケる〜!! 両方真っ黒!!」
互いにドス黒い本心を隠しながら、「純真無垢な魔王」を装って話す僕等の様子が、サーシャのツボに入ってしまい、彼女は戦線離脱したが……
僕の戦いはこれからだ!
まずは身の安全を確保するために、「逆探知にリソースを割かぬ」ようアドバイスするよ。
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746 名前:メグミ(78期)
まず、情報の逆探知にリソースを割いちゃダメだよ!
ユアン君は新人だから、たぶん仕掛けた先輩方より資産額が少ない。
だから、今から逆探知したところで犯人にたどり着けない可能性が高いし……
そもそもそんな所にリソースを割いていたら、人間にダンジョンを食い破られて殺されちゃう。
747 名前:ユアン(79期)
そうですね。
こんな酷いことをした奴……いつか絶対に探し出して仕返ししたいと思っていますが、今は耐えて侵入者だけにフォーカスします。
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もちろん、攻撃元の特定を試みないのは愚策である。
いくらリソースが少なかろうと、相手が誰か特定しないことには反撃の糸口が見つからないし、「なぜ狙われたのか」も分からないからね。
特定後、その攻撃元にどういう対応をするかは、自分が置かれた状況や相手との実力差を見て考えればいいけど……
何も調べぬままタコ殴りにされるのは、マゾな性癖持ち以外、損しかないからオススメしないよ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






