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193話 妄想はかくも儚く


〜ユアンside〜




 魔王として生きる覚悟を決めた後、ギフトを利用した情報販売で荒稼ぎした私は、湧き上がる欲望を必死に抑えて、現在もダンジョンの育成に励んでいる。


 成り上がるときは一気に上位までいかないと、歳だけ食った先輩魔王にやっかまれたり、足を引っ張られる可能性があるし……


 元々私より身分が高かったクラスメイトも、「面白くない」と嫉妬心を抱いて、邪魔してくると思われるので、其奴等を叩き潰すだけのチカラが要るからだ。



「あと少し、あと少しでダンジョンの育成が一段落つく。そして次のビジネスが自走できるようになったら、私は豪華な住居で欲望のままに生きるんだ!」


 現在、メグミ先輩が考えた「人間を利用するスキーム」を参考にして、孤児や浮浪者を誘拐してはダンジョン内に閉じこめ、働かせつつポイント化している。



 これは私がある程度お金を稼いで、人間を誘拐できるだけの部下を揃えてから始めたビジネスなので、まだ収益は赤黒トントンだが……


 人間から得られるポイントは右肩上がりで増えているし、無教養なゴミでも内職させると飯代くらいの金は自力で稼げるので、黒字化は時間の問題だろう。



「くくくっ。好きに金を使えるようになったら、身分の高い貴族家の令嬢を裏ルートで奴隷化して、思う存分犯したい。もちろん美人で、スタイル抜群の女だ!」


 現在は、学生時代と同レベルの設備で我慢している居住空間も……若手エースに相応しい、スタイリッシュで暮らしやすい環境に変えて……


 誰もが憧れるような生活を手に入れ、これまでの努力が実ったことを噛み締めつつ、魔王としての栄華を極めてやる!






 その夢を実現させるために臥薪嘗胆の日々を続け、ダンジョンの育成が目標達成まで秒読み段階に入った頃……


 取引している貴族が多数いる国で、突然「予想外の噂」が広まった。



「なにっ!? 子爵家出身の新米魔王<ユアン>が、ホログラム映像を使って上流階級の人々を騙し、偏った情報で大金を得ている…………だと?」


 部下が持ち帰ったゴシップ紙には、学生時代の肖像画がデカデカと掲載されており、実家の跡取りだった兄上たちが早逝した件についても触れられている。



「証拠を押さえられた訳じゃないが、こんな書き方……"怪しんでください"と言っているようなものだろう! ふざけるな!!」


 たしかに私は子爵家にいた頃、邪魔な兄上たちを排除するために少々動いたことがあるが、昔の話じゃないか!


 魔王になって実家の継承権も失った今、そんな話を掘り起こすなんてやり過ぎだし、明らかに「悪意を持つ誰か」が私の足を引っ張ろうとしている。



「クソッ! こんな話が出てしまっては、不安に思った貴族共が社交の場で"この件"を話題に挙げ、私が売った情報の信頼性も下がってしまう」


 そもそも魔王と取引したがる貴族などいないので、このままじゃ次の取引で正体を明かすよう迫られるか、「これきりの付き合いで」と切られるのがオチだ。


「アイツ等が流した機密情報を盾に脅そうにも、結託した貴族社会では通じないし、全て"詐欺師の戯言"で一蹴されてしまうからな。もう、この国は諦めよう」



 瑕疵ができてしまったとはいえ、この世界の情報伝達速度は遅く……他所の国までこのニュースが回るのには、まだ時間がかかるため……


 それまでに「何も知らない取引先の貴族」から、可能な限り現金を回収して、危なくなったタイミングでドロンすればいい。


 そうすればダンジョンの育成は方がつくし、次なる収益源も育ってきているのだから、きっと何とかなるはずだ!






 しかし現実は無情なもので……すぐ連絡を入れたにも関わらず、他国の貴族にも、ことごとく縁切り宣言をされてしまった。


 私の足を引っ張ろうとした奴は、各地にコネを持つ大物だったようで……私が見たゴシップも、一国だけでなく広範囲に拡散された後だったのだ。



「チクショウ! あと少しで、人生勝ち組決定だったのに! 誰だよ、邪魔した奴は!! 絶対に見つけ出して、"殺してくれ"と願うまで拷問してやる!!」


 そして打ちひしがれている私に、追い討ちのような報告が入る。



「なんだと? このダンジョンの所在地が人間にバレて、大勢の敵から狙われている?」


「はい。出所は不明ですが、ご主人様が治める<伏龍のダンジョン>の所在地が、冒険者ギルドの掲示板に晒されていまして……」



「いや、そんな事ある筈ないだろ!? ダンジョンが未熟なうちに拠点の場所を知られると、先輩に潰されるから、これまで隠蔽には念を入れてきたのに!」


 あり得ない!


 一体何処の何奴が、少しでも幸せな人生をおくろうと足掻いていただけの私に、こんな酷い仕打ちをしたんだ!!



「ふぅ〜、落ち着け! 私は、このダンジョンのトップなんだ。慌てていても、事態は何も変わらない。大丈夫。ダンジョンの育成は荒方終わっているんだから」


 まずはダンジョンの防衛体制を整えて、向かってくる敵の人数や実力を探ろう。


 あと魔王掲示板でメグミ先輩に相談して、襲ってくる人間を滅ぼす策を、伝授してもらうのもアリだな。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
[一言] 次回でメグミはユアンからの呼びかけに対して、完全無視を決め込むか、毒にも薬にもならない助言または言い訳でのらりくらり躱(かわ)すか、どちらかだと予想する。 少なくとも「てめーは俺を怒らせた」…
[良い点] その相談相手、情報拡散の犯人だよ・・・。
[一言] 終わりの始まりですね
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