192話 スキームの欠点
ホログラムが権力者と喋っている映像を、何本か見て断定できたことがある。
まずホログラムは身分を秘匿しているものの、魔王掲示板で書かれた情報まで、ほぼリアルタイムで売られているので、100%魔王側の誰か……ということ。
そしてホログラムが報酬の現金を得たタイミングと、ユアンのダンジョンポイントが揺れ動くタイミングが、完全に一致しており……
他の魔王の動向等も踏まえた結果、やはりユアンが諸悪の根源であり、それ以外の連中はホログラムに踊らされているだけと分かった。
「ユアンのスキームがここまで広がったミソは、"情報は武器。秘匿するモノ"という権力者の考え方だろうな。表の捜査じゃ、こんな話題一つも出なかったし」
口伝か手紙くらいしか伝達手段がない人間の世界で、情報は特権階級が独占できる「金のなる木」であり、秘匿するのが常識とされている。
それゆえ上手い話は全て特権階級の中で回っており、ハブられ者や庶民の元に降りてくる情報は、たいていコスパの悪い貧乏クジなのだ。
「だけど情報の秘匿にはデメリットもあって……今回みたいな詐欺に引っかかった場合、情報が表に出ないせいで被害者が騙されていることに気づけない」
だからこそ権力者は、貴族(=仲間)が騙されたと知ると徹底的に犯人を探すし、二度と"ナメた輩"が現れぬよう容赦なく断罪する。
「情報を秘匿する傾向は、"金持ちの状態で魔王転生した先輩方"にもあって、無鉄砲な新米魔王以外は、掲示板で重要な情報などそうそうゲロらない」
そして自分のダンジョンの情報開示を避けるためのミッションは、攻撃的なミッションよりも参加率が高く、「情報の秘匿=防御」と考える方が多いのだ。
「ユアンは"その習性"を利用して、各所に"都合がいい情報"を売りつけ、間接的に人間vs魔王の戦争を支配した」
これには「スタンピードを仕掛けた自分のダンジョンが、報復されないよう手を打つ」って意味合いの他に……
近い将来ライバルになりそうな実力の先輩魔王を、今のうちに人間の手で滅ぼしておき、相対的に「自分の序列」を上げる狙いもあるんじゃないかな?
いかにも怪しいホログラムの戯言を、なぜ多くの権力者が信じてしまったかについては、彼等が"匿名性"に慣れていなかったのが原因だと思う。
タネが分かれば、どうってことない詐欺だが……被害者視点だと、「ホログラムの主は、特殊なギフトを持つ将来有望なエリートだ」と勘違いしかねない。
なぜなら、特殊なギフト持ちは社会的に成功することが多く……その結果、上流階級のパートナーと結婚して、次の世代へ"勝ち組DNA"を遺すから……
たいてい生まれもエリートだし、多少突飛なことをしても「表に姿を出したくない権力者が陰で動いた」と勘違いされ、勝手に信用されてしまうのだ。
人間に比べると"そういう付き合い"の少ない魔王だって、上位者の機嫌を損ねたら一発でダンジョンを潰されるので、匿名の相手を邪険にはできない。
そうして取引のキッカケを掴んだ後、相手が実際に得するような情報を売りつけて、小さな信頼をいくつも積み重ねれば……あら不思議!
超絶怪しいホログラムが、なぜか多くの権力者に信用されて大金を稼ぎ、そしてそれが明るみに出ないカオスな状態が出来上がってしまう。
「ふ〜ん、さすがメグミ君。外道は外道の心を読めるって、本当だったんだね。私じゃ証拠を見せられても、ユアンが犯人ってところまでしか分からなかったよ」
いや、あの……サーシャさん?
僕はあくまでも皆の利益のために頑張っているんだから、「事実」という名の巨大な釘をグサグサ打ちこんで、ガラスのハートを壊すのは止めてください!
客観的事実に基づいた見解を述べただけで、ユアンみたいな「自分の栄達のためなら他者の利益なんて糞食らえ!」タイプの、本物とは違うんです!!
「ふふふふふっ。さっきまで、あんなに黒い顔して考えていたのに、メグミ君たら可愛いんだから〜♪ それで、どうやってユアンを追い詰めるの?」
「ん〜。スキームのキモである"秘匿性"を潰して、ユアンのダンジョンを目立たせれば、自然と瓦解すると思うよ」
例えば、「ホログラム=ユアンって新米魔王」と分かる状態で、巷にウワサを流して騙されている権力者を目覚めさせる。
それと同時に、「報酬をガッポリ貯め込んだユアンのダンジョンが〇〇にある」という情報も流せば……
金に目が眩んだ冒険者と激怒した貴族が、アイツのダンジョンへ突撃して、利用されたと気付いた魔王たちも、その動きをアシストするでしょう。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






