190話 育ての親に似たんです
潜入調査チームに、諜報機器一式を送り届けたところ……早速現地のオートマタが使い方をチェックして、証拠が取れそうなポイントへの仕掛けを始めた。
敵勢力もいるから、「殺されないよう慎重に!」と伝えはしたけど、オートマタいわく「中途半端にウダウダしている方が、かえって危険」とのこと。
もし失敗しても賄賂チャレンジによる復活があるし、それが不発に終わっても、機器の仕組みさえバレなければ最悪何とかなるので……
アチラの事は、精神的にも成長著しいウチのオートマタ達に任せて、僕とサーシャは、ダンジョン経営を続けさせていただきます。
「コッチもコッチで、予断を許さない状況だからなぁ〜」
僕等が犯人を確定させるために悪戦苦闘している間、ユアンがただボ〜ッと寝ていた訳もなく……次々と、先輩魔王の足を引っ張る魔の手が伸びてきた。
そしてその中に、街から近い位置にあって濡れ衣を着せやすい、サーシャのダンジョンに対する嫌がらせも含まれていたのだ。
<未設定のダンジョン>は、「旨みゼロで侵入者を地獄へ叩き落す鬼畜ダンジョン」として有名なこともあり、直接乗り込まれた訳じゃないんだけど……
一区切りついたら英雄を送り込む殲滅地候補として、いつの間にか名前を挙げられており、背後に潜む"誰かさん"の悪意を感じてゾッとしたよ。
「逆にそんな状況であっても、形だけの貿易規制以外何もされない<恵のダンジョン>の凄さよ。待てど暮らせど、小隊一つ襲ってこないもん!」
まぁウチは、ダンジョンの場所を決めるとき「襲われにくい立地」を選んだうえ、<未設定のダンジョン>以上に旨みがなく……
滅ぼそうとした軍は軒並み地獄を見ており、手をだすメリットとデメリットが一切釣り合っていない、ヘルモードダンジョンだからね。
とはいえ、そんなド田舎在住の魔王は僕だけであり……普通の場所に居を構えた先輩方は、次々と人間からの攻撃を受けて失墜していく。
最初は、「後ろ盾がおらず誰にも助けてもらえなそうな先輩」のみが、スタンピードの濡れ衣を着せるターゲットにされていたが……
成功体験でユアンが味をしめたのか、今じゃサーシャのように「味方がいる魔王」まで被害に遭っており、魔王掲示板は大荒れだよ。
「逆に、一番狙いやすい新人はターゲットにされておらず、調子に乗って先輩を挑発して自滅したバカが数名いる程度。去年に比べると被害は軽微だ」
これは「いつでも屠れるターゲット」ゆえ、今のところは見逃されているのか……それとも、新人同士で協力して何かを企んでいるのか……どっちだろう?
「ご主人様、潜入調査中のオートマタより連絡が入りました。<首都班><学園都市班><ルティーユ領班>全て、諜報機器を仕掛け終えたとのことです」
「よくやった! あとは獲物がかかるのを待つだけだから、それまで静かに潜伏するよう伝えてくれ! くれぐれも、警戒を怠ってムダ死にしないように!」
「かしこまりました。各班のリーダーに伝達いたします」
盗聴機等のサイズを見て、「これはイケる!」と判断したオートマタ達は、ドッペルゲンガーをゴキブリに擬態させて、各所に機器を運ばせ設置させた。
野山しかない田舎ならともかく……人口が集中している街なら、一見キレイな場所でもゴキブリくらい普通にいるし、バレたとき怪しまれにくいもんね。
彼等から作戦を聞いたときは、「何処でそんな悪知恵を覚えてしまったんだろう?」と思ったけど、よく考えると元凶(僕)が育てたんだから当然だし……
品位やモラルを無視して結果だけを追い求めるスタイルは、生存戦略上有利となる素晴らしい資質なので、とりあえず全面的に褒めておいたよ。
多少思うところもあるが、自分が出来ない事(良識ある行動)を配下に強いるのは違うので、文句の言葉は飲みこむ事にする。
潜入捜査班の仕掛けが終わったので、<未設定のダンジョン>を増強しつつ、カモが引っかかるまで待っていると……
罠を張った2日後の夜、王宮のとある執務室で伯爵が高笑いしている映像が、<王宮班>のオートマタから送られてきた。
「貴族が自分の私腹を肥やすために悪巧みして、その結果を聞き高笑いする」なんて事は、ルールベル皇国において日常茶飯事だが……
今回は貴族が笑いかけた相手が、報告を持ってきた手下ではなく、人間には縁遠いはずのホログラムだったから驚きだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「クッ、クッ、クッ、クッ! 其方の言う通り、我が軍の精鋭でチョンと背中を突いてやっただけで、敵が逃げて行きよったぞ。面白いものだな」
「ふふっ。あの国はスタンピード対策に兵を割きすぎて、国境の守りがおざなりになっていましたので。伯爵のお役に立てて、私も嬉しいですよ」
「そうか〜カッ、カッ、カッ! 褒美は弾んでやるから、次からも何かあったらすぐ"私に"伝えるのだ。期待しているぞ。ノー・ネーム!」
「御意」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして同日、伯爵の元に現れたホログラムは数ヶ所で確認され……
其奴が足元に出していた木箱は、権力者から褒美を受け取ってパンパンになると、僕が迷宮で操作しているときと似た様な動きで、地面に埋まり消え去った。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






