185話 もっと広い視野で
サーシャの働きによって、ユアンが身分不相応の大金を持っており、ダンジョンの強化を急いでいることは分かった。
コイツは、スタンピード・ミッションをどの程度こなすか、掲示板で宣言していなかったし……
そもそも信用できる奴じゃないので、ミッションの達成度は不明だけど、わざわざ今の時期に強化を急ぐくらいだから、積極的に参加したんじゃないかな?
「まぁ、ユアンの件も気になるが……まずは先輩方をスケープゴートにして、ヌクヌクと美味しい思いをした奴が誰なのか、探るところからだ」
断定はできないけど、僕は「犯人は比較的"期"が浅い魔王の誰か」だと思っている。
だって古の魔王がそういう性格で、毎回誰かが犠牲になっていたら、さすがに皆警戒するし……
経験豊富な魔王たちが羞恥心をかなぐり捨てて、なりふり構わず掲示板で助けを求める、現在のような状況にはなっていないもの。
「こういうとき重要なのは、大騒ぎしている被害者ではなく、"得している誰か"に目を向けること。得があるって事は、共犯者として手を貸す動機になる」
それは、「スケープゴートを得て、直接的な損害を免れたダンジョンの魔王」だけじゃない。
ソイツ等から裏でマージンをもらったり、騒動を隠れ蓑にコソコソ動き回る輩も含めて、全体像を把握することで、事件の核心にも迫りやすくなるんだよ。
「なら……今回の被害者である先輩たちのダンジョンに近くて、魔王ランキングの順位が落ちていない、容疑者を探せばいいのね。任せて!」
サーシャが魔王ランキングの監視に回ってくれたので、僕は地図を取り出して、スレッドの阿鼻叫喚を参考に、個々の位置関係を把握する。
普段なら頑に「ダンジョンの所在地」を隠す先輩方も、そんな事言っていられない状況なのか、自ら暴露して助けを乞うているため、場所の特定は容易だ。
「う〜ん。ダンダ先輩を滅ぼそうとしている連隊は、スタンピードによって滅びたゴフィンの街を、彼のせいで失った……と勘違いしているっぽいな」
本当に街を滅ぼした魔王は、こういう時わざわざ表には現れず、黙って"掠奪品の検品"等しているものなので、正確な情報を掴むのは難しい。
だけど魔王は多い時期でも、300人弱しかいないので……普段の発言内容やスタンス、ダンジョンの属性、何期か等を考えると……自ずと答えは絞られる。
「サーシャ。魔王のポイント推移データで、この4人を調べてくれ。"ゴフィンの街"を殲滅させたとき得られる位の、ポイントを得た奴を知りたい」
「了解! う〜ん……。47期のサチェナ先輩が、"ゴフィンの街"殲滅の主犯かも。街が滅ぼされた日と、ポイントの推移が一致している!」
「そっか。ありがとう!」
47期のサチェナ先輩……ねぇ。
言っちゃ悪いが、小物だな。
彼女の魔王ランキングの順位は、新米魔王が入った時期でも"中の中"止まり。
掲示板でよく他の魔王とケンカをしているものの、一度もダンジョン戦に移行した形跡はなく、良くも悪くも"中途半端な位置で"安定している。
とてもじゃないが、"中の上"レベルの魔王まで犠牲となった今回の事件を、首謀したとは思えない人物だ。
「他にも甘い蜜を吸った魔王がいる筈だから、ソイツ等の素性も特定しよう!」
「了解! こっちは、ユアンが未だ現金でダンジョンを強化している点以外は、想定内の動きだけど……引き続き監視を続けるね!」
その後も、僕とサーシャ二人で力を合わせて懸命に捜査を続けたが、浮上する犯人がことごとく小物ばかりで……
実力的にも性格的にも、ソイツ等が協力して悪巧みできるとは思えなかった。
「これは、背後に黒幕がいる可能性を疑うべきだな。というか、いなかったら逆にビックリだ。もしくは、スタンピード実行者と犯人は無関係ってパターン」
ただ、そうは言っても……ってあぁ、ムシャクシャする!!
この方向性で考え続けると頭が茹だりそうなので、一度落ち着いて、別の角度から今回の事件を見てみよう。
「ゴクゴクゴク……プハァ〜! やっぱり、ミルクティーの適度な甘さと喉越しの柔らかさは最高だね! 落ち着いたよ」
「ふふふっ。ミルクティーはカロリー高いんだから、節制しないとダメだよ♪ お腹フニフニになったら、引き締まるまでコチョコチョしちゃうからね!」
「は〜い!」
サーシャと共に、キンキンに冷えた自販機のミルクティーを飲んで、茹だった頭を冷やした僕は、改めて地図と向き直った。
「別に"受益者"は、個人じゃなくて国でもいいんだよなぁ。魔王と人間は犬猿の仲だから、人間が治める国は考慮から外していたんだけど……」
もしかしたら性格の悪い国が、敵国に偽情報を流して討伐するダンジョンを間違えさせ、凶暴なダンジョンを残すことで、脚を引っ張った可能性もある。
「だから国まで加害者候補として考えて、この地図を見ると……へぇ〜、あるじゃないか! ルールベル皇国だけ、スタンピードの討伐ミスが一つもない」
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






