182話 富豪の自販機大人買い
サーシャに、「この世界の常識をぶっ壊す便利道具<スマートフォン>を、モンティート先輩にも共有するのか?」と尋ねられたので……
土龍さんに聞かれぬよう気をつけつつ、僕の出した結論を伝えた。
「コソッ(現時点では、僕とサーシャ……それと僕等の配下のみで、占有する方が利口だろう。いくら先輩相手でも、インターネットの接続権貸出は危険だ!)」
「コソッ(そっか。まだスマホの機能を完璧に理解した訳じゃないし、もし万が一、先輩方が悪用したら私たち破滅しちゃうもんね)」
「コソッ(うん。あくまでも、第一優先は僕とサーシャの命。次に、僕等の配下の命と幸せな暮らし……。これだけは絶対守らないと!)」
もしモンティート先輩や、彼の仲間である魔王ランキングのトップ5が、スマホを悪用したら、魔王2年目の僕等に抗う術などない。
いや……現在でも、攻め込まれた時点で土下座降伏確定レベルの、戦力差があるのだが……
腕尽くで恐喝された訳でもないのに、自ら「常識外れの便利な道具」を献上するほど愚かな事はないだろう。
「コソッ(実際僕は、サーシャがスマホを"アッチの知識入手"に使うなんて思いもしなかった。きっと今後も、使うたびに"予想外の用途"が見つかるはずだ)」
「コソッ(ふふっ、たしかに。メグミ君は特に純粋だから、貸し出しの判断をするにしても、最低限"スマホについて知り尽くしてから"の方が良さそうだね)」
いや、サーシャさん……僕が純粋なんじゃなくて、貴方の"エロに対する探究心"がエグすぎるんですよ!
説明書には"そんな使用例"載ってなかったし、きっとコレが使われている「勇者の国」の方々も、僕と同じく品行方正な使い方をしていると思います!
猛烈に抗議したい点もあったが、「スマホを貸し出す気はない」という結論自体はサーシャに伝わったので、僕はついでに"代案"も教えておくことにした。
「コソッ(カタログの中に、電話&メール機能しかない"お爺ちゃん携帯"って物があったから、今回はそれをスマホの代わりに自販機の商品として仕込んだ)」
「コソッ(へぇ〜。そういうスマホもあるんだね)」
「コソッ(うん。たぶん"赤ちゃん用オムツ"と"老人用オムツ"みたいな感じで、ターゲット年齢が異なるんじゃないかな?)」
土龍さんが興味を示さず帰ってしまえば、全てオジャンになってしまうが……もし端末を購入してもらえたら、モンティート先輩と直通のラインができる。
これなら「スマホの怖い部分」を彼に知られる事なく、現在の課題である「僕から先輩にクローズなメッセージを送れない状況」も、改善されるだろう。
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・お爺ちゃん携帯:980ロル/月
電話機能およびメール機能だけを持った、老人でも使いやすい手のひらサイズの電子端末。
マナが存在する場所なら、どれだけ距離が離れていても、自由に「電話帳に登録した相手」とコミュニケーションがとれる。
なお月払い契約が解除されたり、残高不足で支払いが滞った場合、その端末は凍結され、支払いが再開されるまで使用できなくなる。
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「(付いている機能が少ないからか、月々の支払いも、僕等が持っているスマホよりずっとお得だしね! ってことで土龍さん、早く気づいてくださいませ!)」
僕から勧めると変な疑いを持たれかねないので、今は貴方の選球眼に賭けるしかないんですよ!
僕の願いが通じたのか……それとも、100種類もあるセレクト自販機の商品を上から全て買い漁った結果、順番が巡ってきたのかは知らないが……
無心で自販機に小銭を入れて、「モンティート先輩のために持ち帰る商品」を買い漁っていた土龍さんが、僕に声をかけてきた。
「メグミ殿〜、ここにある"お爺ちゃん携帯"とは何ぞや? 見たことも聞いたこともないうえ、ボタンの所に値段の表示がないんじゃ!」
「あっ、それはですね〜。ギフトレベルが<S>に上がったとき増えた商品で、ソレを持つ物同士なら、自由に連絡をとり合える便利グッズなんですよ」
ちなみに"お爺ちゃん携帯"の端末代は、スマートフォンと同じ0円。
なぜ一回で買わせてくれないのか謎だが……初期投資として端末を使用者に渡して、年月をかけて回収していくカタチをとっている。
「ふむ、よく分からんな。じゃが……主様なら使い方を理解できる筈じゃし、お主が"便利"と言っている以上、買い一択! 5つ買っていくぞ!」
結局、土龍さんが"携帯電話"の機能について理解する事はなかったが……主人への信頼といつもの直勘で、同盟メンバー全員分の端末を購入してくれた。
「まいどあり! 最初に"相手を識別する電話番号とアドレス"を登録しないと、やり取りできない仕様なので、僕等の情報が載ったメモも持ち帰ってください」
「うむ。相変わらず何を言っているのかサッパリだが、きっと主様なら理解なさるじゃろう。この暗号みたいなメモが破れぬよう、持ち帰ればいいのだな?」
「はい。持ち帰って、モンティート先輩に全部見せてくれれば大丈夫です!」
考える事を放棄した土龍さんは、その後も自販機の商品を全種類買い続け……アイテムボックスが埋まったタイミングで、満足して帰っていった。
そして半日後……予想していた事なのだが、説明書を読んで"お爺ちゃん携帯"を使いこなした、モンティート先輩から……
サーシャに絞られすぎて足腰立たなくなった僕を、庇おうとして全然庇えていない、ありがた迷惑なメッセージが「迷惑メール」へ届くことになる。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






