181話 女豹×インターネット
スマホの沼にサーシャがハマり、彼氏への関心など無くなってしまうのでは……と元モブの僕は焦ったが、彼女は予想以上に強かだった。
「ハァ……ハァ……。ねぇサーシャ、一つだけ聞いてもいい? なぜあれだけスマホ遊びした後、いつも以上に僕とハッスルできたの?」
元々夜になると女豹に化けるサーシャだが、今夜は特に処し方が上手く、マジシャンのようなテクニックで、僕を籠絡してきた気がする。
「えっ? それは……このスマートフォンの中に、どんな事でも辞書より詳しく書かれている無料サービスがあったから、それで調べた♪」
なるほど。
彼女の知識欲とインターネットという"知識の泉"が、絶妙に絡み合って、僕が拗ねている間にハイパーレベルアップしていた訳ね。
スマホさんと向き合っても尚、僕のことを考えていてくれたと思うと、ホクホクと心が温まるけど……
あまりの技巧でハッスルされ過ぎて、しばらくは歩く事もままならない状態なので、次からは適度に自重してください!
「ガオ〜ン! メグミ君、まだまだ逝くよ♪」
「えっ? ちょっ……無理…………!!!!」
全てが枯れるまで搾り取られ、情けなくもサーシャの看病なしではベッドから起き上がれなくなった僕が、彼女に"自重"という文字を教えていると……
執事を任せているオートマタが、無情にも(断れない)来客案内を告げた。
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オートマタ(執事タイプ)
ランク:A
所属:恵のダンジョン
詳細:高い事務処理能力を持つ機械仕掛けの人形。戦闘力は一般人レベルだが、家事や仕事のサポート役には向いている。
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「ご主人様。モンティート様の側近である土龍様が、サーシャ様のダンジョンにてご主人様をお待ちです。ランクアップした自販機目当てで、来てしまったと」
「…………今、行きます」
誰が断れるだろう?
魔王界の序列1位であり、僕等がハイドンを倒して注目を浴びる前から目をかけてくれた、モンティート先輩の要望を……。
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土龍(人化中)
ランク:SS
所属:欲望のダンジョン
維持費:30000ポイント/日
詳細:古を司る土属性の龍。その肌はオリハルコンでも貫くことができず、鉄壁の防御力をほこる。土龍は肉体全てが極上の素材なので、倒した者は巨万の富を得ることができる。
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慌てて真顔になったサーシャと共に、僕が彼女の経営する<未設定のダンジョン>へ向かうと……案の定、土龍さんは<天国と地獄フロア>で遊んでいた。
「あのぉ〜土龍さん、そこは侵入者を絶望のドン底に叩き落すフロアであって、貴方の遊び場じゃないんですけど〜」
彼が滞在してくれるだけで、<未設定のダンジョン>の迷宮ポイントがグングン伸びるから、嫌な訳じゃないけどさぁ〜。
もし万が一、モンティート先輩の側近に<ウ○コ砲>を浴びられでもしたら、彼に合わせる顔がないんですよ。
「おぉメグミ殿か、待っておったぞ! 主様が貴殿のメッセージを見て、"次の定期取引まで待てない!"と騒ぐのでなぁ〜。つい来てしまったのだ!」
あっ、ハイ……今日もゴーイングマイウェイなご様子で、何よりです。
「次の部屋、<第8の試練>にランクアップした自販機を置くので、今日のところはソレをご堪能ください」
「分かった。しかしメグミ殿、其方……やけに声が枯れておらんか? 覇気も感じられんし……ぅん、なるほど! そういう事か。邪魔をしてすまんかった」
干からびている僕の声に、一度は不信感をもった土龍さんだけど……<第8の試練>に足を踏み入れ、モニターに映った僕とサーシャの様子を見るや……
露骨に物分かりが良くなり、気を遣いつつ、ランクアップした自販機からモンティート先輩が喜びそうな物を選び始めた。
「コソッ(ねぇメグミ君。お遊びしていた事、土龍さんにバレちゃったかな?)」
「コソッ(そりゃあ、確実にバレているでしょ! あぁ〜、モンティート先輩に"ありのまま"を報告されて、僕の黒歴史が増えてしまう! 終わった〜!)」
「コソッ(大丈夫だよ♪ 知られた方が寄りつく虫も減るし、同盟の結束の固さだって示せるからさ〜♪)」
「コソッ(サーシャ、サンハ、ポジティブ、デスネ)」
元凶であるサーシャに助けを求めようにも、特殊な性癖でもあるのか、彼女は恥ずかしがる素振り一つ見せず、土龍様と話し出す始末。
きっと今夜には、<欲望のダンジョン>に戻った土龍さんによって、僕等の蜜月がモンティート先輩へ伝えられ……
彼から「温かく見守っています!」系の、気遣ったつもりでも全然気遣えていない、ありがた迷惑なメッセージが届くだろう。
「コソッ(ところでメグミ君。モンティート先輩に、このスマホも売るの?)」
「コソッ(あぁ、それなんだけどね……)」
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






