175話 秘策を使ったハイドン。マトとなる
〜ハイドンside〜
酔いがさめると嫌なことを思い出すので、マジックバッグに入れておいた”高級酒”を飲みながら、29階層<学識迷路フロア>を全問正解で突破。
意気揚々と、30階層にある<ボス部屋>へ足を踏み入れた儂を待っていたのは……約束していたはずの仲間ではなく、敵のSランクモンスターだった。
「うわあぁぁぁぁぁっ!?」
脳筋のモンスター共でも先に突破できるよう、わざと制限時間ギリギリまで待機してから、最終問題を解いて30階層入りしたというのに……
彼奴らめ、頭が悪すぎて誰一人29階層を突破できなかったのか!
「なぜじゃ、なぜ<学識迷路フロア>への扉が開かぬ! 儂は一旦戻って、態勢を立て直したいのだ。このぅ、開け!!」
先ほど閉じたばかりの扉は、力尽くで開こうとしてもビクともせず……背後からも、複数のSランクモンスターが迫っていたので……
儂は仕方なく、ミッション報酬で勝ち取った貴重なアイテムである<パスチケット>を使用。
29階層とつながっている扉を開け、強引に<ボス部屋>からの脱出をはかった。
〜パスチケット〜
金庫の鍵からダンジョンの扉まで、開けられないモノを一度だけこじ開ける事ができる、幻のアイテム。
売るだけで一生遊んで暮らせる大金が手に入るが、犯罪に使われる可能性もあるため、人間界で届け出をせず所持した場合”財産没収刑”となる。
虎の子の<パスチケット>まで使ったのじゃから、「必ず勝たねば」と思い……水龍たちと合流するため、29階層へ続く階段をのぼると……
突如として目の前に、小型のSランクモンスターがズラリ。
「クソガキ共め、儂の動きを封じるためか! 卑怯なことをしよってからに!」
こうなっては仕方ないと腹をくくり、水龍が降りてくるまで30階層でモンスターの攻撃をかわし、仲間が合流し次第「ボス部屋」を突破する方針へ変更。
貴重な<パスチケット>を無駄にしてしまった事を後悔しながら、背後のモンスターに殺されぬよう全力で階段を降りると……
ボス部屋で、30体以上の高ランクモンスターに取り囲まれる形となった。
「あの役立たず共、なぜ誰も助けにこんのじゃ!! 4体もいたんじゃから、1体くらい突破してこい! 阿呆にも程があるぞ!!」
「なぜって……そりゃあ、アンタが仲間を見捨て続けたからだろう。29階時点で100体くらい残っていたら、メグミ様も30体くらいは通したはずだし」
儂が不甲斐ない護衛へ向けて「憤怒の情」をあらわにすると、それを聞きつけた小童モンスターが、不愉快な答えを返してくる。
「うるさい! 貴様と話しているわけじゃないわい!! 黙っとれ!!」
「プハッ! 改めて見ると、やっぱりレベルが違うよね〜このジジィ。周りを失笑させる才能なら、魔王界でもトップになれたんじゃない?」
「たしかに。しみったれた性格のくせに性欲だけは強いから、一人寂しくアレする回数でもトップだったかもしれないけど」
「ギャハハ! でも、今日でそれも終わりだね〜」
儂が黙れと言っても生意気な口を叩く、チカラ以外能のない害獣どもの態度を見て、サーッと頭に血がのぼり……一周回って熱が冷めた。
どうやら酒を飲みすぎて、冷静な判断が出来なくなっていたようじゃ。
腹の底で煮えたぎる怒りに蓋をして、冷静に周りを見渡すと……どう考えても勝てない戦力差であることに気がつく。
これだけチカラの差があると、今さら水龍が29階層を突破したところで、階段を下っている間に儂は殺されてしまうじゃろう。
「仕方ない。おぃ貴様ら、儂の負けじゃ。メグミに謝ってやるから、儂をダンジョンの外へ出せ。貴様らの健闘に免じて、今後10年は攻めないでおいてやる」
腹立たしい事この上ないが……今は小童共に頭を下げ、自分のダンジョンへ戻って戦力を立て直すのが先じゃ!
「すげ〜、こんなクルクルパー見たことねぇよ。ロミオット達でも、コイツよりはマシだったんじゃない?」
「ドブネズミの背比べだけどな。おっ、サーシャ様から連絡が入った。殺さないように、半殺しにしてどうぞ〜ってさ!」
「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」
なにっ!?
魔王界でも上位に君臨する、ベテラン魔王の<ハイドン様>が謝っているのに……無視して攻撃じゃと!?
「ふざけるなっ! 儂は”頭を下げてやるから降参させろ”と……ブフェェェッ!!!!」
モラルを知らない害獣共は、年上を敬うこともせず無慈悲な拳をふりおろす。
そして儂は、何百もの打撃に叩き伏せられ……
<−−− うん、HPは残っているね。偉い偉い♪ じゃあ……メグミ君が解体作業から帰ってくる前に、ソイツの”剥ぎ取り”を終わらせるよ! 全員頑張って! −−−>
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
気がつくと両手足を枷で拘束され、「焼けそうなくらい熱々の金属板」に縛りつけられていた。
大先輩である儂を全裸にひんむき、冷めた目で見下ろしているクソガキが、このダンジョンの魔王<メグミ>か……!!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






