170話 SSランクモンスターの最期
『やむをえん……か。メグミ様、私はあなた様に降伏いたします。この水龍を配下に加え、栄達の礎にしてくださいませ』
<−−− へぇ〜。SSランクモンスターが新米魔王に頭を下げるんだ −−−>
『はい。私はあなた様の傘下に入ります』
自分に勝ち目がないことを悟った水龍は、ギロリとモニターを睨みつけたあと、小さくため息をはき降参宣言した。
ウチのモンスター達を見ながら、「もしやメグミかサーシャが勇者〜」云々言っていたから、”聖血”量産のカラクリに気付いたのかもしれない。
<−−− それで、僕がアンタを受け入れるメリットは? ハイドンの手垢がついた老害モンスターなんて、タダでも要らないんだけど −−−>
『っつ、この……っ!! 長く生きているからこそダンジョン運営には詳しいですし、他の古株魔王の情報も知っております。それに……』
<−−− それに? −−−>
『私はポイントでは買えないSSランクモンスター。ダンジョンに一体居るか居ないかで戦力が大きく変わりますし、特別枠ゆえ維持費も安いのです』
<−−− なるほど −−−>
格下と蔑んだモンスター達の前で、恥も外聞もなく頭を下げ命乞いする水龍。
きちんとメリットを提示しているから、「裏切る前提」での所属替えじゃなさそうだけど……さすがに”虫が良すぎる”よね。
<−−− そっか〜。じゃあ毎日、自分の素材を剥ぎ取って上納してよ。定期的に、肉・皮・内臓・眼球・脳髄が入ってくるなら飼ってやる。家畜としてだけど −−−>
『そんな……っ!?』
いや、だってさぁ〜。
ハイドン配下の中でも重用されていたのに、勝ち目がないと悟ったとたん裏切る奴なんか、組み込みたくないじゃん。
それが、頭一つ抜けているSSランクモンスターなら特に……だ。
<−−− 素材としての価値は認めているよ。水龍の皮は”最上級”だし、肉もほっぺが蕩けそうなほど美味しいと聞く。眼球・内臓・脳髄だって、話を聞きつけた錬金術師が裏ルートで買い漁るさ −−−>
牢屋みたいなフロアを創って監禁し、ゴブリン肉とポーションを供給するだけで極上の素材が手に入るなら、寝返りくらい認めてやる。
刃向かう様子を見せた時は、”勇者の聖血”を無理やり飲ませればいいし……維持にかかるポイントも少ないんだろ?
家畜としては費用対効果バツグンなんだから、多少の「イラッと感」は水に流そう。
『いや、儂は”戦闘の切り札”として……』
<−−− 信用できない切り札を飼うくらいなら、ドラゴンのヌイグルミでも置いておく方がマシだ。ヌイグルミは裏切らない −−−>
それに僕とサーシャの下には、アンタに虐げられたロミオット達の元配下がいるんだよ。
彼らや古参のモンスターを差し置いて、信用力0の「某」が”切り札”とか、笑い話もいいところだ。
『きぃえええぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜!!!!』
僕の発言と声色で「寝返りは叶わない」と悟った水龍は、ウチの子達に背を向け逃げ出した。
だが<中ボス部屋>のルール上、戦いに勝つか3日経つまで扉が開かない仕組みになっているため、上層階へ行けずガシガシと爪で扉を引っかいている。
『儂は生き残るんじゃ! クルスが26階層から<汚物フロア>へ流されたという事は、同じルートで9階層まで逃げられる。そこから地上へ出る事も……』
うわぁ〜、完全に戦意喪失しているな。
仮にも「最強と名高いSSランクモンスター」なんだから、「この場にいる奴を全員倒して扉を〜」くらい言えばいいのにね。
こんなのに比べたら、<恵のダンジョン>を守るために死んでいったモスキート達の方が、よっぽど頼りになるよ。
『いや違う、地上まで逃げる必要などない! まだハイドンは殺されていないのだから、29階層へ戻って奴を泥酔させ、主従関係を解除すればいいだけ……』
つーか、考えている事をイチイチ言葉にするなって!
情報収集の観点からみれば、スピーカーをONにするだけで”筒抜け”だから助かるけど……地の底へ落ちた評価が、更にすごい勢いで地面を掘っているぞ。
『あぐぅ……っ!? この、くそっ貴様らぁ…………』
もちろん、「隙だらけの醜いジジィ」を放置するほど僕たちは甘くないので、水龍が無様をさらしている隙に(ミニ化した)水属性モンスターが動いた。
彼らは水龍に気付かれぬよう「エラの中」へ侵入し、柔らかくて血の巡りがいい部分に針を刺して、”勇者の聖血”を注入したのだ。
『あがああぁぁぁぁぁ………っっ!?』
そして悲鳴をあげる水龍の口へ、次々と(ミニ化した)Sランクモンスターが入りこみ、舌の裏にある血管に”お代わり”を注射していく。
水龍も本能のままにウォーターブレスを吐き、「口内のモンスター」と「僕の血」を流そうとするが……コッチで動いている子もSランクだからね。
歯と歯茎の間に入ることでジェット噴射される水をかわし、攻撃が終わった瞬間「水龍の舌」をステーキカットしたよ。
『あぁぁがああぁぁぁあぁ嫌じゃあ……死にとうない…………。頼む、見逃して…………』
涙を流しながら傷ついた身体を回復させ、必死に「体内へ入りこんだ異物」を取り除こうとする水龍だが、入り口なんか幾らでもある。
奴が「歯茎にへばり付くモンスター」を、一体ずつ引きはがしている間に、「尿道・肛門・鼻の穴」から侵入した他のモンスターが聖血攻撃を行い……
その子達を取り出している間に、エラや口からまた別のモンスターが。
『ぅぅ……あぁ…………グスッ……ゥ…………』
そうして何十回も”お代わり”の注射をくらった水龍は、のたうち回る気力すらなくなり……
最後まで自分の”死に場所”を、「30階層のボス部屋」と勘違いしたまま息絶えた。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






