167話 フロアの造りはボス部屋そっくり
“四角ペン”コロコロに失敗した水龍が落ちた先は、一つ下の30階層ではなく……40階層にある中ボス部屋。
ボス部屋の中でも特にポイントを注ぎこみ、<暑さ・乾き・状態回復・移動・監視>の機能を盛り込んだ、最重要防衛ラインの一つだ。
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〜40階層<中ボス部屋>〜
カンカン照りの日差しが降りそそぐ灼熱地獄の中、グリフォン・フェザードラゴンといった風属性のSランクモンスターを、10体倒さなければならない。
障害物がなく見晴らしも良い砂漠なので、一見「力と力がぶつかり合う真剣勝負」になると思われるが……
ダンジョン防衛側が、フロアの各地点に設置された転移陣を使って「控え室」のモンスターを応援に呼べる、圧倒的に有利な攻防戦だ。
挑戦者側は、援軍をかわしつつ「フロアから出られない10体のSランクモンスター」を倒すことで、41階層行きの権利を手に入れることができる。
なお挑戦可能時間は3日であり、それを過ぎると「10体の中ボス」もフロアから逃げてしまい、39階層へ戻る扉だけが開かれる。
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「今回は援軍名目で、150体以上のSランク・Aランクモンスターを投入した」
種類・質ともにバラバラの偽装アイテムをうち破り、鑑定で<本物の中ボス>を見破ったとしても、他のモンスターに邪魔され集中攻撃できないだろう。
しかも150体以上いる援軍モンスターは、疲れたら其処彼処の転移陣から「控え室」に戻って、体力が回復するまで休めるからね。
自分一体しかいないため戦い続けるしかなく、100倍を超えるモンスターから集中砲火をくらう水龍と比べたら、どちらが有利かなんて火を見るよりも明らかだ。
「メグミ君。”勇者の聖血”でフラフラになったSランクの護衛が、”山勘戦法失敗”でペナルティー喰らいそうだから、30階層へ落としてトドメ刺すよ」
「うん、お願い。サーシャ……30階層では一体の犠牲も出したくないから、相性のいいSランク10体で対応して!」
「OK〜、ボコボコにして素材はぎ取る!」
水龍を、40階層の<中ボス部屋>へ落とした理由はいくつかあるが……一番大きいのは、他の仲間と合流されるのを防ぐため。
コアルームの安全性を考えると、上にある30階層の方が都合はいいんだけど……せっかく引き離した仲間と、合流されたら目も当てられないからね。
思わぬ苦戦を強いられているうちに、ハイドンや護衛のSランクモンスターが30階層へ進んでしまう可能性もゼロじゃないので、保険をかけたのだ。
それに万一30階層を突破されると、32階層で暮らしているオアシスフロアの住民に迷惑がかかってしまう。
しかし40階層なら、上にも下にも時間稼ぎ用のフロアがあるから其処で対処できるし……突破されたとしても被害が出ない。
あと環境の問題もあって……中途半端に入り組んだ場所や牢獄へ落とすと、「攻撃する側」のスペースも狭くなり反撃で痛手を負うかもしれないんだよ。
その点「だだっ広い砂漠の<中ボス部屋>」を使えば、適度な距離を取ったり休むこともできる。
SSランクモンスターに、「好き勝手動けるスペース」を与えるのは怖いけど……トータルで見たらコッチの方がいいと思ったんだよね。
「水龍にとって、”水浸しにしてもダンジョンが自動吸収してしまう灼熱砂漠”は、戦いづらい場所のはず。いつもは、その程度じゃ崩れないだろうけど……」
今は”勇者の聖血”で弱っているから、さらにキツイだろう。
そこら辺も含めて有利を重ねながら慎重に討伐し、奴の亡骸を「ドラゴンのお肉」と「ソファーの皮」に変えるよ。
『ふむ……なるほどな。儂もナメられたもんじゃわい。ハイドンが29階層を突破する前に、儂一体だけ30階層に落としたんじゃろうが……甘いわ!』
40階層の<中ボス部屋>に落とされた水龍は、不愉快そうに瀉血の血を止めたあと、グルリと辺りを見渡しつぶやいた。
「なんというか……カッコ良く決めているところ悪いんだけど……そこは30階層ではなく40階層なので、アンタとハイドンが合流することは無いっスよ!」
敵にアドバイスしてやるほど僕は優しくないから、勘違いしたまま逝ってもらうけどね。
『敵の戦力はSランク40体・Aランク110体ほど。見た目的にも此処は<ボス部屋>じゃし、突破されぬよう影武者を増やしたのであろう。最後の足掻きか』
う〜ん、それも微妙に違う!
<恵のダンジョン>と<未設定のダンジョン>の高ランクモンスターを、粗方集めたのは事実だけど……ここを突破されたところで”時間稼ぎ”が待っているだけ。
アンタがくだらないミッションをこなしている間に、主人のハイドンを殺せば終いだ。
『この儂を、<ボス部屋>なんぞに落としたのが運の尽き。小童どもに、SSランクモンスターの"格の違い"を教えてやろう!』
勘違い発言の連続で、コアルームが「微妙な空気」に包まれる中……水龍は鼓膜が破れそうなくらい大きな声を張りあげ、攻撃態勢に移った。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






