166話 <モンスター殺し>とツッコミ炸裂!
〜水龍side〜
5問目までは特に問題なくクリア出来たのだが、6つ目の部屋へ入り”山勘”でクイズに答えたとき、予想外の出来事が起こった。
<幸運系アイテム>を使っているにも関わらず、試験官が”答えに至るまでの道筋”を聞いてきたのだ。
<−−− 3分以内に、”5の24乗”より”2の56乗”が大きいと思った理由を説明しなさい。なお説明には、机の上にある紙を使用しても構いません −−−>
そんなもの、説明できるわけないだろう。
儂は<幸運のネックレス>に願いを込めて、選択肢を刻んだ”四角ペン”を転がしただけなのだから。
とはいえ……ペナルティーを喰らうと分かっていて、バカ正直に答えるわけにもいかんな。
「頭の中で計算したらそうなった。数字を比べたら、”2の56乗”の方が大きかったんだ」
計算なぞ「3桁の足し算」までしか出来んが、数字であることに変わりはないのだから、これで充分だろう。
<−−− では”2の56乗”がいくつか、机の上にある紙に記してください。制限時間は残り1分です −−−>
「…………分からんわい。常識的に考えて、四角ペンを転がして”答え”を出した儂が、解法など考えているわけなかろう? 冗談の通じない試験官だな」
<−−− 時間切れにより、挑戦者の回答を不正解とみなしペナルティーを与えます。因みに問いの答えは、"因数分解"か"階乗の分割"を利用すると簡単に解くことができますよ −−−>
「因数分解」でも「チン吸う分解」でもいいから、さっさと罰ゲームを終わらせ、この薄気味悪い”像の口”から”儂の手”を解放しろ!
それにしても……幸運系アイテムを3つも装着しているのに、6問目で”面倒な問題”を引き当てるなんて……。
先ほど感じた嫌な予感は、もしやコレ……
「…………!? なんじゃ、貴様……今儂の手に何を打った!? この水龍に何をしたのだ!!」
水属性で毒が効きにくい儂に、とてつもない悪寒と恐怖を感じさせるほどヤバイ物質。
それも、チクッとしたあと一瞬で注ぎ込まれた僅かな量で……。
あり得ない……そんな事、あってはならない!
<−−− ペナルティーとして”勇者の聖血”を100ml注入しました。手の拘束は解除されますが、クイズに正解する事ができなかったので出口の扉は開きません。もう一度”クイズ部屋”を探し、6問目にチャレンジしてください −−−>
「あぁっ……あああぁぁぁぁああぁあぁ…………!!」
ふざけんな、クイズなんぞに答えている場合ではないわ!
今すぐ<勇者の聖血>を抜き、身体を「正常な状態」に戻さねば!
「身体の内側を焼かれるような、勇者に存在を作り替えられるような……おぞましい悪寒がする。放っておいたら死ぬぞ、コレは悪夢じゃ……」
何がマズイって、酒を飲んだ状態で心拍数が上がっているから、今の儂は”血のめぐり”がいつもより速い。
拘束を解かれた時点で、「手を切って血が回るのを防ぐ」という手段は使えなかったし、すでに全身へ<勇者の聖血>が広がってしまったのだ。
「こんなもの、万能薬でも使わん限り解毒できんわい! なぜ若手魔王のメグミが、<モンスター殺し>で有名なブツを持っているのか……」
<−−− まもなく、クイズ部屋の滞在可能時間が切れます。それまでに脱出しなかった場合、”落第生”として”汚物フロア”へ送られるので注意してください −−−>
「うるさいのぉ、出ればいいんじゃろ! 出れば!!」
緊急事態なんだから、少しは静かな環境で落ち着いて考えさせてくれ!
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〜メグミside〜
5問目まで、全て「選択肢を刻んだ四角ペン」コロコロで対応していた水龍に、高等学舎で学ぶレベルの数学クイズを出題したところ……
案の定”四角ペン”をコロコロ転がし、上にきた選択肢をそのまま答えやがった。
どう考えても分かっていなかったので、担当者に「答えを導き出す過程」を尋ねさせたら、バレバレの嘘をついたあと「勘です」と暴露したよ。
「嘘をついたペナルティーも合わせて、”勇者の聖血”を100ml放り込んだけど……SSランクモンスターにも効果があるんだね。面白いくらい狼狽えている」
「そりゃあ”勇者の聖血”だもん! 魔王界では、ベテラン勇者のみが作れる一撃必殺の”モンスター殺し”として有名だし、恐れおののくのも無理ないよ」
あっ……恐怖で泣きだした水龍が、造血ポーションをがぶ飲みしながら手首を切った。
<勇者の聖血>に侵された血液を捨てる事で、なんとか助かろうって魂胆だな。
「そして血を入れ替えるまでの時間で、”クイズの正解数”を稼ごうってか。泣くほどの恐怖に耐えながら、再びクイズ部屋へ入った勇気は賞賛するけど……」
痛い目にあったばかりなのに、また四角ペンをコロコロ転がすんじゃねぇよ!
<−−− “回答を導き出す過程”を答えられなかったので、クイズは不正解とし、挑戦者にペナルティーを与えます。単身、地獄へ落ちてください −−−>
『のわあぁぁぁぁ…………っ!?』
長年ダンジョンの運営に携わっているんだから、一発くらった段階で「問題を手動で選べるタイプ」だと気付くべきだし、そもそも自力で解け!
この<学識迷路フロア>は、勉強できる奴が優遇される場所……「”四角ペン”コロコロ野郎」はお呼びじゃねぇんだよ!!
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






