165話 自己生産できるモンスターコロリ
29階層の<学識迷路フロア>に入ったハイドン達は、<幸運系アイテム>を頼りに、山勘でクイズ部屋を漁り始めたが……とにかく汚い。
屁と加齢臭は大目に見るけど、其処彼処でゲロを吐くな!
というか……モンスターだからって、適当な場所で”立ちション”すんじゃねぇよ!
トラップ付きとはいえ、フロア内にいくつもトイレがあるだろうが!!
奴らがいる場所はダンジョンの中だから、汚物を迷宮に吸収させれば元通りキレイになるんだけど……
サーシャとご飯を食べながら指示出ししているときに、卑しい品性がよく分かる、「キモい立ち居振る舞い」はやめてほしいものだ。
「まぁ、”もうすぐ死ぬ奴ら”だしいいか。予想どおり”保身第一”のハイドンは、己だけで”効果の高い幸運系アイテム”を独占した」
「SSランクモンスターの水龍にも、余りの”豪運系アイテム”しか渡さないあたり徹底しているよね〜。ある意味、尊敬するわ」
豪運のネックレス・豪運のピアス・豪運の指輪・豪運の腕輪……
仲間と分ければいいのに、ハイドンだけギンギラギンに纏っているから、望みどおり30階層へ通してあげよう。
お前が「効果の高いアイテム」を占有したせいで、一段階<幸運度>が下がった護衛達とは、ここでお別れだけどな。
「モンティート先輩がくれた資料を見る限り……中等学舎レベルの”問い”は即答できそうだけど、高等学舎はムラがある感じか。メグミ君、難易度どうする?」
「う〜ん。解ける程度に難しいクイズでお茶をにごしつつ、”実力で突破した”と勘違いさせるよ。その方が、護衛抹殺の違和感に気付きにくいからね」
「なるほど。さすがはメグミ君、頭いい〜♪」
裕福な貴族家に生まれたハイドンは、待望の嫡男として、幼い頃から家庭教師をつけられ英才教育をほどこされた。
頭がスカスカだったせいで、家庭教師の頑張りも虚しく高等学舎へ上がった頃から落ちこぼれ、(金とコネで)高下駄を履いて卒業したわけだが……
脳みそスポンジなりに大学まで出ているから、選択式の問題しかない29階層なら、全問正解も夢じゃないはず。
もしバカすぎて間違えたときは、「お酒の静脈注射」で反省してもらえばいいだけだし、大雑把に「解きやすい高等学舎レベルの問題」を出す事にしよう。
「そんな事より、護衛の4体……特に水龍の始末だ! 一応、”モンスター全般”に効果があるアイテムは用意したけど、効くかなぁ〜?」
「大丈夫だって! クルスの配下で散々検証したし、メグミ君の”勇者度”が上がってるんだから、きっと水龍にも効果があるはず! 無かったら、その時よ!」
それもそうか……ダメだった時用の手段も用意しているし、お試し感覚で水龍にブツを注入して……奴のリアクションを見ればいいんだよね。
クルス配下のSランクモンスターは、全員コレで大ダメージを負ったから、水龍にだって多少の効果はあるはずだ!
〜勇者の聖血〜
5体の魔王をほふった規格外の勇者<メグミ>が、「神聖なる儀式」の場で採取した血に聖魔法をかけたもの。
邪神の僕であるモンスターに、強い嫌悪感と苦痛を与える効果がある。
効果時間は相手の力量によって変わるが、成熟したSランクモンスターでも、丸一日は<異物感・嫌悪感・恐怖>等に苦しめられる。
「コイツを打ち込んで効果があれば、次の設問で間違えた水龍を30階層へ落とし、元気なSランクモンスターで袋叩きにする。失敗したら別の手だ」
でも、やっぱり少し不安だなぁ〜。
鑑定で見えるアイテムの説明欄には、しっかりと効果が書かれているんだけど……なにせ、元々「自分の体内を流れていた血」だからね。
僕自身が、イマイチ”効果の程”を信じられないんだよ。
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〜水龍side〜
クイズ部屋でしばらくたむろし、回復魔法で酔いを緩和した儂が直視するハメになったのは、「ハイドン様の配下がほぼ全滅した」という事実だった。
「思考をマトモにしたのは愚策だったな。酔っていた方が、まだ気軽に29階層を突破できるわい。もう一度飲もうかのぉ〜」
酒のせいで記憶が一部飛んでいるが、さっき階段にいたとき念話を送ってきたヤツは、おそらくもう消されているだろう。
彼奴の報告が真実だとすると……ダンジョン内で生き残っている味方は、ハイドン様と行動を共にしている儂らだけかもしれん。
「詰みだな。もしメグミを倒せたとしても、長年育ててきた強化モンスターを殆ど失った我らに活路はない。他の魔王に食われて終わりだ」
仕方ない、ハイドン様を見限りメグミに付くか。
ボス部屋で力を見せつけてから、気付かれぬように裏切りを打診して……ハイドンを出しぬき、<恵のダンジョン>所属となる。
そしてメグミの成長度合いを確かめたあと、今後の進退を決めればよい。
「しかし……なにやら嫌な予感がするな。SSランクモンスターである、この儂の命を脅かすような……」
ハイドンにこそ劣るが、全身を幸運系アイテムで固めているはずの儂に、どんな不幸が起こるというのだろう?
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






