162話 同盟者を失ったハイドン
感想文再提出を3度くらったものの、辛うじて「延長料金未払いによる<アルバイトフロア>送り」を免れたハイドンは……
苦々しい表情で、26階層<映画鑑賞フロア>を脱出。
27階層へと向かう階段で、魔道具を使って配下に合図を送り、念話でクルスとアリスの死亡を知った。
『クソッ! いずれ殺すつもりではあったが、この状況で脱落とは……役に立たん奴らじゃわい。せめて、同盟者の小娘くらい道連れにして欲しいものじゃ』
ハイドンは”年寄りの悪癖”がよく出ているというか……思ったことを、ハッキリと聞こえる声で口に出してしまうタイプだから、行動が読みやすい。
今までは、クルスの<透明化>やアリスの<魅了>に守られていたため、欠点をさらけ出さずに済んだけど、もう奴らはいないからね。
モニターで監視するだけで情報を入手できるイージーゲームだから、僕ら”防衛側”はホクホクしているよ。
死んだ二人と違って、ハイドンの持つ<改造阻害>ギフトは、「出来上がっているダンジョン」の攻略には役立たないけど……
一応「序列10位の魔王」なんだし、長年”甘い汁”を吸い続けてきた部下共々、”先輩の意地”ってやつを見せてくれ!
『ふむ、今4体のモンスターが26階層にいるんじゃな? 25階層にいるのは……9体? 脱落する”根性ナシ”がいるとしても、助けにはなる数じゃろう』
念話で「配下モンスターの位置情報」を聞いたハイドンは、27階層へ行こうとしていた身体をゆっくりと戻し、廊下の中央に仁王立ちした。
『ならばモンスターの活躍を信じて、儂はここで待つべきじゃな。メグミは狡猾な男じゃから、護衛ナシで最下層入りはしとうないわい』
度重なる”時間稼ぎ”で懲りたらしく、ハイドンは「配下数名の到着を待ってから突入する」方針をかためる。
27〜29階層は戦闘力とか関係ないフロアだし、一人部屋でミッションをこなしていく形式だから、味方を待ったところで意味ないんだけど……
先頭にいる侵入者が自ら足を止めてくれるのは、コッチにとっても大助かりなので、その間に遠慮なくアンタの配下を狩らせてもらうよ。
「執事君。19階層<凹凸フロア>と21〜22階層<手形フロア>にいる、敵方のモンスターを全滅させてくれ。そこを味方で固めて、奴らを分断する」
「かしこまりました。ハイドン配下のモンスターは強化されている個体が多いので、少し犠牲者が増えるかもしれませんが……最善を尽くします」
「うん。ここで勝負を決めたいから、よろしく頼むよ」
「はい! 現場へ指示を出してまいります」
執事君に急ぎの指示を伝えた僕は、コアルームへ戻ってサーシャと合流。
アリス討伐による「ステータスの変化」を報告したのち、いかに効率よくハイドンを殺すか話し合った。
「個人的には、32階層へ到達する前に狩れると嬉しいから……勝負をかけるのは30階層の中ボス部屋。それまでに、奴の配下をほぼ100%削りたい」
「なるほど。32階層には、オアシスフロアの住民が避難しているもんね」
「うん。予備の避難先はあるけど……住民達との信頼関係を考えれば、到着される前に殺すのが一番なんだよ」
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20階層:中ボス部屋(ナイトメアバード・アントリオン担当)
21〜22階層:手形フロア(時間稼ぎ・分断用)
23階層:アルバイトフロア(働いたことのない坊ちゃん対策)
24階層:五感錯覚フロア(内装・床の角度などで五感を狂わせる)
25階層:早食いフロア(カロリーレス激辛料理専門)
26階層:映画鑑賞フロア(エロ動画を鑑賞し感想文を書く)
27階層:内職フロア(働いたことのない坊ちゃん対策)
28階層:早飲みフロア(高濃度アルコール酒)
29階層:学識迷路フロア(学力テスト)
30階層:中ボス部屋(ミスリルゴーレム担当)
31階層:天国と地獄フロア(通行料徴収)
32階層:砂漠フロア(オアシスフロアとの入れ替え用)
33階層:モンスター部屋フロア(オアシス住民の避難用)
34階層:天国と地獄フロア(通行料徴収)
35階層:徴収フロア(細々と通行料を徴収する)
36階層:オバケフロア
37階層:浮石フロア(サーシャの”浮雲フロア”を真似た)
38階層:激長迷路フロア(オアシス住民の避難用・予備)
39階層:騒音フロア
40階層:中ボス部屋(風属性モンスター担当)
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ハイドンが31階層へ足を踏み入れた時点で、オアシスフロアの住民は全員、エレベーターを使って38階層の「避難場所」へ送るつもりだが……
“性悪ジジィ”を32階層<オアシスフロア>へ入れたら、腹いせとばかりに「家荒らし」しそうなので、その前に仕留めておきたい。
誰だって「留守中の家」を荒らされたら不快になるし、「<オアシスフロア>に住みたい」と思う気持ちも半減しかねないもん。
僕は彼らと仲良くやっていきたいから、ソレを邪魔する可能性が高い老害には、さっさと消えてもらうんだ!
「じゃあ先頭集団が27〜28階層にいる間は、殺戮ポイント稼ぎもかねた”配下狩り”に集中して……29階層でハイドンの護衛を始末。30階層勝負でどうかな?」
「いい考えだと思う。ターゲットが29階層へ移動したら、28階層に戻る階段をモンスターで塞ぎ、数の暴力で攻めつぶす。サーシャも”お手伝い”お願いね♪」
「もちろん! 私達で老害をボコって、”世代交代”を印象づけよう!」
「おぉ!!」
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






