160話 性悪ババァに尊厳は要らない
魅了ギフトを持つアリスの声を、直聞きする訳にはいかないので、「彼女から指示を受けたモンスターが仲間へ情報伝達する声」をキャッチ。
アリス配下が、”余剰資金稼ぎ”で足止めされているハイドン配下と別れ、リスク承知で最下層を目指すと分かった。
「魔王が強制労働施設で囚われている以上、僕を倒さない限りモンスター達に待っているのは”道連れ死”だからね。前提次第では悪くない判断だ」
彼女もハイドン同様、最下層が25〜30階層にあると勘違いしているので、根本からズレちゃってるけど。
もしアリスが<恵のダンジョン>の階層数を知っていたら、25階層から同じように強制労働施設へ来させるか、ダメ元で<魅了>を連打していただろう。
一か八か、配下のモンスターを故意に罠にかからせ、最下層の近くまで落ちる「すべり台」を探していたかもしれない。
残された僅かな戦力で、50階層超えのダンジョンを攻略するなんて、99.9%不可能だからね。
「まぁ、敵がミスをしてくれるのは大歓迎だ。時間が経てば経つほど僕らが有利になるし、じっくり料理してやろう。サーシャもそれでいいかい?」
「もちろん♪ アリスを殺すまでに何時間かかるか予想して、”一夜の主導権”を賭けるのも面白いと思う! ちなみに、私は65時間予想です!」
「ふむ。じゃあ僕は40時間で! 道連れで殺すと殺戮ポイントをゲットできないから、残っている敵の主力モンスターもギリギリまで削るよ」
「うん。アリスもそろそろ限界だろうから、塩梅を見つつ攻めていこうね♪ メグミ君、覚悟! ”あられもない格好”で恥ずかしがる姿を見せてもらうから!」
「コッチこそ! 絶対に負けないから覚悟しておいて!」
アリスの命令を受けたモンスター達が、最下層を目指して21〜24階層をひた走る。
すでに25階層へ突入している連中も、視覚・味覚を殺して「激辛ゲテモノ料理」を食べているけど……そのまま食べ損なう方が主人へ近付けるのに。
各階層に配置した「フロアと相性が良いモンスター」に攻撃され、満身創痍で最下層を目指す奴らの姿は、なんだか滑稽に映る。
奴らにイジメられていた「ロミオット達の元配下」に、性格や攻撃パターンを知られているから、悲惨さに拍車がかかっているんだよ。
「メグミ様、<手形フロア>でAランク12体始末できました。21〜22階層に残っていたモンスターは、これで全滅です!」
「24階層を移動中のモンスターも、アシッドカメレオンの攻撃で5体削れました。相手は高ランクばかりなので、味方にも死傷者が出ていますが……」
「お疲れさま。よく倒してくれたね! 殉職者が出たのは残念だけど、現場班が”攻めるべき”と思ったのなら、そこが一番良い攻撃タイミングだったんだろう」
味方のモンスターにも死傷者は出ているけど、完全無傷で勝てる戦いなどないし、敵の消耗と比較すると微々たるものなので仕方ない。
このダンジョンで殺された以上、亡骸もコチラにあるから……下層階にある共同墓地に葬って、彼らが転生先でも活躍できるよう祈るよ。
「魔王アリスの容態が悪化しているから、そろそろ致命的なミスをやらかすと思う。配下狩りはこのくらいにして、強制労働施設のサポートに回ってくれ」
「「「「「「「「「「かしこまりました」」」」」」」」」」
サーシャと「ベッドでの主導権」を賭けてから、ここまでに要した時間は約36時間。
彼女がわざと予想を外してくれた感もあるけど……男のドリームを叶えるためにも、最後までキッチリ頑張るぞ!
ムフフな妄想のせいでカラダが反応し、サーシャにツンツンされてしまったが……気を取り直して、強制労働中のアリス婆を確認。
1時間毎にコップ一杯の「特製オイル」を飲み続けた彼女は、消化管の中が油だらけとなり、トイレで無残な姿をさらしているよ。
<ブピュ〜ゴロゴロ……ピィ〜〜〜〜ピッ!>
『ハァ……ハァ……お腹痛ぃぃ…………』
解像度を荒くしているとはいえ、食事中に見るのはゴメンな映像だが……極限まで追い込まれているのは間違いない。
どれだけ<魅了>が脅威でも、こうなったら仕掛ける余裕なんて無いし、ゴーレムを経由することで音声を取得することも可能だ。
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〜魅惑の蝶〜
特定の条件を満たした場合、人間およびモンスターを一時的に魅了する事ができる。
魅了の効果は強く、敵対ダンジョン所属のモンスターが相手でも例外はない。
対象を操れるのは24時間で、ギフトが解けた後3日は魅了できない。
ストックできる数は対象の実力によって変わり、最大100体まで。
条件その1:相手の瞳を50秒間見つめる
条件その2:相手に10分間声を聞かせる
条件その3:相手に口づけをする
*上記3つのうち、1つでも満たせば魅了発動
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『痛ぃ……痛ぃぃ……。でも、みじん切りしないと……また油飲まされてお腹痛くなるし……借金の支払いが…………』
下痢ざんまいで余裕のなくなったアリスは、理性的な判断をくだす余裕すらなくなり、パンツを履かずにキッチンへ戻ろうとする。
そして……
<ピィ〜〜〜ブビュッ! ゴロロロ〜ピ〜〜〜〜〜ッ! オエェェェ……!!>
この”仕事部屋”最大の仕掛けである、「最高級素材を使った手織り絨毯」に下痢とゲロをぶちまけた。
「さてと、これで損害賠償金額は1000万バイトを超えた。賠償金の利息は”10日で1割”だから、低時給バイトで払える訳ないし……身体で払ってもらうよ」
<−−− 今回の賠償金で、アリス名義の借金が1000万バイトを超えたので、フロア規定により”返済不可能”と見なし”身体払い”といたします −−−>
『おげぇぇぇ〜〜…………えっ? 身体払い……?』
<−−− 今回頂くのは眼球・舌・唇・脳髄となります。3分以内に、アリス名義の借金が1000万バイトを下回らない場合、 強制執行となりますのでご了承ください −−−>
『えっ!? いや……そんな事されたら、ポーション使う前に私死んじゃう……』
<−−− 3分経過しましたので強制執行に移ります。返せないものは、身体を売ってでも支払ってください −−−>
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






