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159話 (150年前は)美人だった


〜アリスside〜




 非人道的なゲテモノ料理で追いつめられ、宿代を払えなくなった私が送られたのは、23階層にある強制労働施設だった。


 密室に監禁され、<下拵え><下半身レンタル><臓器売買>の中から仕事を選べと言われた時は、ショックで目の前が真っ暗になったわ。



 ここの何がヤバイって……23階層には私の配下もいるはずなのに、声一つ聞こえないほど密閉された空間。


 そして、自力で借金を返済し終えるまで何年でも閉じこめる、という狂気じみたルールよ!



<−−− 集計完了。この1時間での仕込み量は3kgでした。ノルマ未達成なので、ペナルティーの”オイル”を飲んでから作業を再開してください −−−>


「チッ! ……ぅぅ…………おぇっ!」


<−−− ペナルティー完了。作業報酬の45バイトは、未払いの宿代返済にあてられます −−−>



 鬼畜担当者に指示されたとおり、調理台に現れた「気持ち悪いオイル」を飲み干してから、玉ねぎのみじん切りを再開する。


 見るからに身体に悪そうな油を、1時間ごとにコップ1杯飲むのは苦行に等しいけど、助けを呼べないこの状況じゃ従うしかない。



 ここの罰は、基本的に”下品”かつ”痛い”場合が多いのだが……私の魅了ギフトを恐れてか、運営サイドは間接的なペナルティーばかり仕掛けてくるのだ!


 監視カメラや音声も対策されており、執念で担当者を魅了してもすぐにバレてしまうため、大人しく自力返済するしかないのよ。






「しかしグスッ……あの油えらく濁っているわよねぇ。スグッ……密閉した空間に監禁したうえ毒殺は、スグッ……ルール上ないはずだけど…………」


 作業すればするほど(玉ねぎの成分がしみて)あふれる涙と、1時間ごとに飲まされる「不気味な油」は、どれだけ繰り返してもメンタルをえぐる悪辣さね。



<−−− 伝え忘れておりました。何度か飲んで頂いたオイルは、貴女の配下をヒレカツにしたときの酸化油です。風味付けにゴキブリ粉末を加えてあるので、多少クセが強いかもしれません −−−>


 ちょっと、クセとかそういう問題じゃないでしょう!!



 かつて「街一番の美姫」と呼ばれ、150年以上”魔王界”を引っ張ってきたこの私に、なんてモノを飲ませるのよ!


 以前聞いたとき、死んだ馬鹿共が「サーシャは美人」とか言っていたけど、絶対にブクブク肥え太った性悪女に決まっているわ!






<−−− 集計完了。この1時間での仕込み量は3kgでした。ノルマ未達成なので、ペナルティーの”オイル”を飲んでから作業を再開してください −−−>


「グスッ……ぉぇっ……ぅぅ…………おぇっ! うっぷぅ…………」


<−−− ペナルティー完了。作業報酬の45バイトは、未払いの宿代返済にあてられます −−−>



 これで、美容に悪いオイル18杯目。


 油はカロリーの塊だから餓死する心配はないけど、飲まされる量が多すぎて顔は「噴き出した油」でギトギトだし、お腹の調子も最悪よ。


 食材だから「運営ルール違反」にはならないんだろうけど、このまま飲まされ続けたら、借金返済が終わる前に「吹出物だらけのデブ」になってしまう!



「このままでは……痛っ!?」


<−−− 被収容者の出血を確認しました。まな板・包丁・玉ねぎ……全て取り替えねばならないので、82060バイトの賠償金を頂きます。借金持ちは、血をなんとかして作業を再開してください −−−>



 くそっ、また借金が増えてしまった!


 私の包丁さばきじゃ、どれだけ頑張っても1時間に45バイトしか稼げないから、1日20時間働いたとしても賠償金だけで返済に91日かかる。


 その間、一度も指を切らないとは到底思えないから……外部から何とかして貰わない限り、私は一生このままだ。



「グスッ……ハイドン様。今だけは、性悪ジジィじゃなくて王子様と思ってあげるから、か弱い私を助けに来てよ」


 メグミを殺し、私を地獄から救ってくれたら……見苦しいハゲ頭と加齢臭には目をつぶって、夜伽してあげるからさぁ。






 ボス部屋の近くにいるハイドン様が、状況を打開してくれると信じて玉ねぎを刻んでいると、配下のモンスターから念話が届いた。


「アリス様、我々をお助けください! どうやらクルス様が亡くなったらしく……メグミの配下が、我々を集中攻撃し始めたのです!」



「ちょっと、”助けて”は私のセリフよ! 普段ダンジョンポイントを貪っている無駄飯食らいなんだから、こういう時くらい役に立ってちょうだい!」


「無茶を仰らないでください。護衛が揃ってから動けばいいものを、先を急ぐハイドン様にそそのかされ、防御をおざなりにしたのは貴女様です」



 そんなこと、今更言われても知らないわよ!


 アンタ達は、私がいてこそ生存できる「オモチャの騎士」なんだから、言われた通り命がけで敵を倒せばいいの。


 ダンジョン所属のモンスターなら、モンスターらしく第一優先で魔王を守りなさい!!



「アリス様、とにかく指示をください。このままじゃ、ガキに殺られて全滅です」


「…………。できる限り大人数で集まって、最下層を目指しなさい。上層階へ向かわされたクルス達が死んだって事は、下層階の方がマシなはず!」


「かしこまりました!」



 もし配下のモンスターがほとんど全滅しても、ハイドン様の陣営と力を合わせてメグミを倒せば、私はこの状況から解放される。


 クルスが死んだってことは、同盟<若狩龍>のNo.2にもなれるわけだし……手駒の大半を失ってもお釣りがくるわ!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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[一言]  アリスのあだ名を考えてみよう!  ババァリス  汚リス  アホス  クルス? 考える前に死んじゃいました。
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