155話 新人から搾取し続けた者の末路
〜クルスside〜
ダンジョン側がどういう方法でくるかは読めねぇが、放っておいたら俺は9階層……つまり、<汚物フロア>へ放り込まれるんだな。
せっかくゴール目前まで来たのに、そんな展開は願い下げだ!
<透明化>ギフトでトラップをかわして、26階層にへばり付くしかねぇ!
〜透明化〜
MPを消費することで、自分含めて最大10個体を透明人間にできる。
ギフトを使っている間、対象者には一切の罠が作動しないうえ……人数限定の部屋へ入ってもカウントされない。
発動時間の制限はないが、クルスから10km以上離れると透明化が解除されてしまうため、遠隔での使用はできない。
また透明人間になっている間は、食欲・睡眠欲・性欲を満たす事ができない制約となっている。
「<透明化>を発動している間は、どんなトラップでも作動しないから大丈夫なはず……って何だっ!? 部屋が、急にガタンと揺れたぞ!」
一瞬だけ、違和感をおぼえるレベルで”重力が増す”この感じ……まさか、部屋全体が26階層から9階層へ移動している!?
「やべぇ! おぃ、流石にコレはやり過ぎだろ!? 俺がどんな思いで、26階層まで来たと思ってんだよ!! 戻せ! 今すぐ俺を戻してくれ!!」
<−−− 9階層に到着しました。ただいまより罰を執行します。床が動くので、巻き込まれぬようご注意ください −−−>
おそろしく冷淡な声が響いたあと、俺のいる部屋がガチャンと何処かにぶつかり……足元の床がジワジワと動き始めた。
「おぇっ、臭っ!? この臭い……!! チッ! 床を壁の中にしまう事で、無理矢理<汚物フロア>へ落下させる仕組みか!!」
いくら「トラップが一切作動しない<透明化>ギフト」でも、机やイスごと床を引っこ抜かれたら太刀打ちできない。
クソガキ共め……魔王のくせに、小賢しいことばかり考えやがって!!
「おげぇぇぇ……っ!? 臭っ、くうぇぇぇ…………」
モニターにへばり付いて難を逃れようとしたものの、床がない状態で何十分も開きっぱなしの部屋に放置された俺は、クソ溜めの中へ落ちてしまった。
上がってくる臭いでバカになったと思われた鼻も、発酵したブツの側だと仕事をサボってはくれず……俺は地獄の中であえいでいる。
もちろん、耐えがたい環境にさらされる屈辱もキツイ!
だが、それ以上に”今の状況”は酷いのだ。
「お願ぃ、助けっ……助けてくれ…………!」
26階層は護衛と切り離されるものの、「モンスターが出ない安全地帯」と明記されていたため、命の危険はなかった。
しかし、9階層はなんでもありのフロア。
こんな所に、護衛すらいない状態で突っ立っていたら、俺はメグミ配下のSランクモンスターに殺されてしまうだろう。
『クルス様、ご無事ですか!? 返事をください!!』
「自分の置かれた状況」に身震いしていると、26階層から地獄へ叩き落されるハメになった元凶が、念話をつないできた。
『貴様っ! 誰のせいでこうなったと……いや、何でもない。俺は敵の罠にハマって、9階層へ移動させられちまった。大至急迎えに来い!』
『えっ? 9階層でございますか?』
『あぁ、そうだ! この際、手形の認証やアルバイトなど中止してよい。近くにいる配下を全員集め、どんな犠牲を払ってでも9階層まで来るんだ!!』
この環境で過ごすのはキツイが、2〜3日なら<透明化>で敵の探索をかわせる。
だから、その間に俺を助けに来やがれ!!
『かしこまりました。生き残っている配下は僅かですが、ダンジョン攻略を諦め全員で其方へ向かいます。それで宜しいですね?』
『あぁ。ハイドンさんやアリスの配下にも、” 9階層へ移動させられる罠”を教えてやれ。参謀のオートマタが、コッチに戦力を割いてくれるかもしれん』
『承知いたしました。クルス様のご命令に従います』
“迎え”の約束を取り付けたので、寄生虫や小蝿がウヨウヨしているクソ溜めの中を、<透明化>した状態で移動する。
アイテムボックスに小型ボートが入っているから、それを使って地獄から逃れたいところだが……
使用した瞬間「透明になった意味」がなくなり、敵に居場所を知られてしまうため、自分の足で歩くしかない状況だ。
「俺がくらったトラップは、侵入者を個室へ誘導し9階層に叩き込むタイプ……と見ていい。つまり、メグミはココで俺を葬るために戦力を集めているはず」
<汚物フロア>の中には、Bランクのヒュージスカベンジャースライム程度しかいないが……出入り口の外には、Sランクモンスターが何体もいるだろう。
「そんな所へむざむざ殺られに行くなら、ここで屈辱に耐え迎えを待つ方がマシだ。俺の生存率や、後で報復できる可能性も上がる」
今は、味方が合流するまで息を殺して待つ。
そして出入り口を封鎖するメグミの配下を、出し抜けるだけの戦力がそろったら……全力で来た道を戻り、この地獄ダンジョンを脱出するのだ!!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






