152話 チャレンジ成功の代償
〜ハイドンside〜
「おぇっ……ぅぷぅ…………!!」
粉唐辛子で真っ赤になってはいるものの、しっかりと原型を留めているイモ虫を、気合いで口の中に運ぶ。
スラム街の食堂に貼ってありそうな、安っちい言葉が並ぶ「メニューの説明書き」が、殺意をかり立てるわい。
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庶民のお財布にも優しい、クリーミーなタンパク源……ドブクサイモ虫がどっさり入った、栄養満点の激辛鍋!
ピリッと辛いスープと、採れたてホヤホヤの葉っぱ。
プニプニしたイモ虫の食感が、あなたを夢の世界へ誘ってくれますよ!
20階層の自動販売機でも300ロルで売っているので、帰りに買って帰ってね♪
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適当に摘んだ「そこら辺の雑草」と、食欲減退作用のある土臭いイモ虫がもっさり入った、味覚を破壊するレベルの激辛鍋……の間違いじゃろ?
<中ボス部屋>の奥にある廊下で、不愉快なアイテムが売られているのは知っていたが……こんなゲテモノ、買うヤツがいると思っておるのか!?
卑しい貧民の事情は知らんが、儂は金に困ったことなど一度もないし、「ゴミ箱に捨てられた残飯以下の料理」を食う趣味もないわい!
30匹以上入っていたイモ虫を根性で食べきり、激辛スープをたっぷり吸った雑草を処理しにかかる。
辛味のついた熱々の油が上に浮いているため、雑草を口に運ぶたび腫れ上がった口内を刺激し、涙が出てくる有様だ。
<−−− 残り時間10分です。スープまで飲み干さないと完食とは見なされませんので、挑戦者の方は気をつけてください −−−>
「まずいのぉ、このままでは間に合わん。この手の試練は、レベルが低いうちに勝ち星を稼ぐのが鉄則じゃから……仕方ない。やるか!」
「胃とケツの死」を覚悟した儂は、マジックバッグから「拷問用の漏斗」を取り出し……先端に付いている管を、口から胃の中まで通した。
そして、酸欠にならないうちに鍋をかたむけ、残っていたスープを無理やり胃に流し込む。
「うぅ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
こんな事をしては消化管が酷い事になるが、チャレンジの成功・失敗に関わらず、「出された料理?」は最後まで食わねばならぬルールじゃし……
このハイドン様が、個人戦のレベル1で躓くわけにはいかんからのぉ。
「手持ちの水や食料を食うのはダメ……とは書かれておるが、道具を使って処理してはならぬ……などという記載はない。この勝負、儂の勝ちじゃ!」
サーッと熱が走った頭皮も、チャレンジを終えポーションをガブ飲みすれば、機嫌を治してくれるじゃろう。
<−−− 残り時間2分でチャレンジ成功、おめでとうございます。”レベル2の料理”へ、5時間以内に挑戦してください −−−>
「ふむ、知力の勝利といったところじゃのぉ。管で引っかいた食道は痛いが、次の料理を平らげ数時間休めば自然治癒するじゃろう」
クルスとアリスにも、儂と同じ<イモ虫料理>が出されたはず。
強かさの足りない”ひよっ子”共は、今頃「自身の至らなさ」を嘆き、儂の必要性を再認識しているはずじゃ。
「さて、次の激マズ料理はなんじゃ? 胃に流し込んでやるから、はよぅ持ってこんかい!」
儂が担当のゴーレムに催促すると、奴は壁の「受け渡し口」から皿を受け取り、テーブルまで運んでくる。
「ふむ。次は”炒め物”か。管で流し込めんのは面倒じゃが、体積的には有利じゃし、さっと平らげて……!?」
<−−− レベル2のメニューは、養殖ゴキブリの辛々炒めです。素材の味を活かして調理しておりますので、存分にお楽しみください −−−>
「楽しめるかっ! スラムのクソ餓鬼が、這い回っているゴキブリをオヤツにしているのは知っておるが、なぜ儂まで食わねばならん!」
よく見ると、サッと和えてあるだけで火が通っておらず、黒光りする足がピクピクしておるし……これを”料理”と称するのは無理があるじゃろう!
<−−− では、制限時間30分でチャレンジスタート! 時間以内に食べ切れなくても、挑戦者には完食していただきますのでご了承ください −−−>
「こなくそ! 一匹ずつ叩き潰して、カンカンに火が通るまで炙ればいいんじゃろ!? やってやるわい。死にさらせ!!」
スラム男の逆マウントには、もうウンザリじゃ!!
<−−− 残り時間1分でチャレンジ成功、おめでとうございます。”レベル4の料理”へ、5時間以内に挑戦してください −−−>
「ゴキブリの辛々炒め」と「ドブネズミのスパイス漬け」を胃に収め、絶望的な気分でチャレンジ成功のアナウンスを聞く。
これでレベル4〜5を失敗しても、25階層突破の条件は満たした事になるから、あと2品”ゲテモノ料理”を食えば地獄から解放される。
されるが……チャレンジ成功と引き換えに、なにか大切なモノを失った気分じゃ。
「ちなみに、レベル4の激マズ料理は……?」
<−−− レベル4のメニューは、“目玉のスパイス詰め”です。つるんとした食感と、シンプルな辛さをお楽しみください −−−>
「……………………」
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






