149話 えっ? アンタ達もダメなのかよ!
<−−− まったく……。1時間で30枚しか洗えないとか、どんな教育を受けてきたんですか? 5,6歳の子供でも、貴方よりはマトモに働けますよ −−−>
『くっ……申し訳ございません』
<−−− 謝罪ばかり上達しても意味ないんですよ。これだから、口先だけの老害は嫌なんだ。オムツはいて、樹海に連れて行ってもらっては? −−−>
『っ……次は善処いたします…………』
<アルバイトフロア>で”鬼畜上司モード”のオートマタに嫌味を言われ、悔しそうに頭を下げるハイドンを観察する。
ヤツは200歳超えだけあって、「キッチンの使い方」や「皿洗いのやり方」は知っていたんだけど……
モンスターに傅かれる生活に慣れすぎて作業が遅く、何度やってもノルマを達成できなかったのだ。
ナステックみたく、上司に逆らったり物を壊して傷口を広げる事はないけど、成長も見られないから人間社会じゃ3日でクビだよ。
<−−− ノルマ未達成により、ペナルティーとして100叩きを行います。クソの役にもたっていませんが、30枚は洗えているので150バイト支払いましょう。雇用主のメグミ様に感謝して、土下座姿でペナルティーを受けるように −−−>
『ありがとうございます(クソッ! なぜ儂がこんな目に遭わんといかんのじゃ!? 根性ひん曲がったクソ餓鬼共、死にさらせ!!)』
〜食器洗い〜
報酬:食器を一つ洗うごとに10バイト
雇用条件:認められるまで試用期間アリ
試用期間中は報酬が半額となる
食器を割った場合、新品の購入価格を報酬から差し引く
最低就労時間:30時間
ゴーレムに先行調査させて、バイトの難易度を判断するところまでは良かったけど、自分とゴーレムのスペックを同列扱いしちゃダメだよね。
僕も仕事部屋がジジ臭くなるから、ハイドンに長々と居座らせたくはないのだが……
<バイトフロア>のルール上、最低就労時間が終わるまで出られない仕組みなので、せいぜい頑張ってくれ。
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<−−− ハァ……。つり銭の計算が間違っています。どうして10回もやって合計金額が合わないのですか? 給料泥棒も大概にしてください −−−>
『…………申し訳ありません(チッ! 1万枚以上の銅貨を、チマチマ数えさせるのが悪いんだろうが!! 俺のせいにしてんじゃねぇよ!!)』
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<−−− 編み物一つできないなんて、女性としてどうなんでしょう? 貴女の旦那になる男性、可哀想ですね。あっ、生涯”独り身”だからいいのか −−−>
『…………。(うるさいわね。魔王に”レース編み”の技術なんて要らないのよ! それに私だって、若い頃はモテたんだから!!)』
<−−− 雇用主であるメグミ様の彼女は、容姿が美しいだけでなく編み物も上手で……。ほんと、女としての格が違うわ −−−>
『…………。(サーシャって女郎の事でしょ!? 数日後には、生皮剥がれた醜い姿になってるわよ。暴れたらダメなのは分かっているけど、ムカつく!!)』
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同じように「ゴーレムは稼げた仕事」で、楽して最低労働時間をクリアしようとしたクルスとアリスも、懲罰地獄におちいっている。
僕は27階層にある<内職フロア>で、「お金を稼ぐ大変さ」を味わってもらおうと思ったんだけど、なぜ三人はこんな所で自滅したのだろう?
「落ちた犬は棒で叩く」のがセオリーだから、懲罰で意識が”痛み”に集中している間に、「卵持ちの寄生型モンスター」を仕込ませてもらったけど……
少しは、「ボケ防止のために働こう」とか思わないのかね〜。
庶民生まれの僕には……コイツ等やロミオット達みたいな、「やってもらって当たり前」タイプの価値観が理解できないよ。
『『『ハァ……。行くか……』』』
一生の思い出になるほど、衝撃的な「アルバイト体験」をした三人は……最低労働時間を終えてすぐ、ゴーレム達が稼いだお金で24階層へ降りた。
安全面を考えると、「充分な数の護衛を同行させられる金額」が貯まるまで23階層で待つのがセオリーだが、頭を動かす余裕すらなかったらしい。
SSランクモンスターの”水龍”と3体のSランクだけを連れ、逃げるように「脱出ボタン」を押していたよ。
「メグミ君、今なら勝ち目あると思うけど……アイツ等の首、取りにいく? それとも、予定どおり安全優先?」
「安全優先で。SSランクを足止めするには、味方のSランクモンスターを何体も”捨て駒”にしなきゃいけないから嫌なんだ。予定どおり下層階で仕留めよう」
「了解。隙を見せないメグミ君、素敵だよ♪」
「ふふっ。ありがとね」
僕とサーシャも、「魅了ギフト」を使おうとするアリスを躱しながら、”新米狩り”三人に地獄を見せたり……
自力で<手形フロア>脱出を試みるモンスターを、削り続けたことで疲れが溜まっているが……ここで、安易な方へ流れてはいけない!
仮にも相手は、「序列10位の魔王」と「長年生き残っているベテラン」だから、油断禁物。
味方の犠牲少なく敵を屠るため、ハイドン達の息の根を止めるまでは頑張るぞ!!
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






