145話 メグミとサーシャは答えを出す
「サーシャはどう思う? もし意見が違っても遠慮なく言ってほしい。将来に関わる事だから、ここでキッチリすり合わせておこう」
「うん。私は今のままでいいというか……上を目指すべきだと思うけど、無理するのは良くないと思う。自然と1位になっちゃった……が理想かな」
「なるほど。ちなみに、そう思う理由は?」
「短期間で大きな力を手に入れると、それを扱うだけの器が育っていないから傲慢になる。だから身の丈に合うペースで、ジワジワ強くなりたいの」
ふむ……数年で先輩方をごぼう抜きして持て囃されると、自信が過度に肥大しクズ野郎になるかもしれない……と言いたいわけか。
「僕らなら大丈夫」と返せればいいけど、人間(魔王だけど……)は環境の生き物だから否定できないんだよなぁ〜。
若くして成り上がった豪商とか、玉の輿にのった女性とか、兄が死んで跡目の座が転がり込んできた次男とか……
人間時代、ビックリするほど性格が変わった連中は何人も見てきたし、僕はいたって平凡な男だから気をつけねばならないと思う。
大丈夫だと思うけど……サーシャがガッカリするような傲慢野郎に成り下がって、別れを切り出されたら嫌だもん!
そういう不幸な将来を回避する為にも、彼女の言うとおり、「上は目指すけど無理のないペースで」が理想だろう。
僕がサーシャの意見に同意し、「無理のないペースでダンジョンを育て、気付いたら序列も上がっていました」パターンを目指すと決めたとき……
管理モニターに何通ものメッセージが表示され、「<農民>同盟に老人グッズが行き渡った」と分かった。
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〜モンティートだよ!〜
きのう購入させてもらった商品、早速使ってみました!
オムツはこの世界の高級品よりずっと良質だし、目薬や肌クリームも効果バツグンだったよ!!
個人的には、「ポーションでも完治しない腰痛」が布一枚貼るだけでおさまったのが、一番の衝撃です。
商品を分けっこした同盟メンバーも、「信じられないほど使いやすい」って喜んでいて、メグミ君にお礼の手紙書くって言っていました。
だから、突然”知らない人”からメッセージ届いても驚かないでね。
*追伸*
君が勇者の血を引いていて、ロミオット達を殺したことで能力開花しちゃった事を話したら、皆「邪神ざまぁ!」と爆笑していました。
この話は<農民>同盟の外には漏らさないので、もし不自然に情報漏洩していたら教えてください。
敵対勢力のスパイに隙を突かれた可能性が高いので、本気でシャレにならない事態です。
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モンティート先輩の言葉どおり、序列2〜5位の魔王がくれたメッセージにも感謝の気持ちが綴られており、読んで心が温かくなった。
女性のアスタリア先輩には、「次から自分で買いつけたい。同じ条件で認めてくれる?」と言われたし、初めての本格的なやり取りにしては好感触だと思う。
「ねぇサーシャ。顧客確保でガッポリ……とかいう思いもあるんだけど、それ以上に”先輩方の役に立てた”のが嬉しい。自販機作成ギフトを選んで良かったよ」
「ふふっ。先輩方もそうだし、オアシスフロアの人たちも”買える種類”が増えて喜んでいたもんね。メグミ君はこれからも沢山の人を幸せにできると思うよ」
喜びを分かち合ってくれるサーシャを見て、たとえ皺クチャのお婆ちゃんになろうとも、「僕はサーシャにゾッコンだろうな」と確信した。
モンティート先輩みたく300年以上生きることを考えると、生き甲斐を感じるためにも、「大切な人に喜ばれること」は大切だけど……
やっぱり「サーシャが喜んでくれる」と、何にもまして胸が高鳴り幸せな気持ちになれるから。
「二人でジワジワ実力つけて、どんな敵でもはね除けられる……そして、大切なヒトを喜ばせる事ができる存在になろうね。ずっと一緒!」
「うん。お婆ちゃんになったとき、メグミ君と”楽しい人生だったね”って笑い合えるような生き方をしたい!」
その為にも……ムダに力をつけている”新米狩り”は、綺麗サッパリ取り除かなきゃ!
優れた配下の力を借りて11階層まで進んでいるし、明々後日にはロミオット達を葬った「狩りゾーン」で、本格的な討伐を始められるかな?
「ハイドンの配下には、モンティート先輩の土龍と同じSSランクの怪物……水龍がいる。飛び抜けた猛者を、潰す対策は用意しているけど……」
焦って事をし損じると全てが台無しだし、危機感を持った”新米狩り”三人に逃げられると面倒だから、ジワジワじっくり削っていくぞ!
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






