143話 老いた強者の思い
〜モンティートside〜
オムツを買いに行かせた土龍<キアラ>から連絡が入り、メグミ君が期待どおりの少年だと分かったので、アイテムを使い交友を深めることに決めた。
メグミ君の彼女と思われるサーシャちゃんも、話していて楽しくなる感じのいい娘だったので、彼らならきっと次代の灯火となってくれるだろう。
「えっ!? モンティート先輩って、もう300歳超えているんですか!? 45歳のときに魔王転生して、その姿なのに250年も生きているなんて……」
「あはは。魔王ランキングの上位は、老化を遅らせるアイテムを常用しているからね。僕ら<農民>は、全員300歳超えのお爺ちゃん・お婆ちゃんだよ」
健やかな老後をおくるため、「安定してポイントを稼ぐ手段」を模索した僕は、戦いで消耗する魔王を抑えて上位に君臨。
ダンジョンが成長するにしたがって、自然とミッションの成績も良くなり……
特別無理しているわけでもないのに、「老化を遅らせるアイテム」を貰えるようになった。
「期を重ねるごとに似たような性格の友人も増え、<農民>同盟を結成してからは穏やかにやってきたんだ〜。相手を攻めるのって疲れるからね」
「ふふっ。ダンジョンマスターって、どう考えても防御力の方が高いですもんね。とはいえ……序列1位の先輩が、平和志向だとは思いませんでした」
「僕もゆっくりしたいんだけどさ〜。未だに上位を独占しているのは、他の古参と邪神への”嫌がらせ”。人面獣心の輩が、魔王界の支配者なんて嫌でしょ?」
「えぇ。”新米狩り”の三人が、モンティート先輩みたいに長生きすると思うとゾッとします。6〜9位の先輩も、ハイドンと似たような感じなんですか?」
「うん。それぞれ趣向は違うけど、顔をしかめたくなるようなクズってところは同じかな。関わると疲れるタイプ」
「「うわぁ〜」」
奴らが天下を取ったら、同盟仲間や配下のモンスターがどんな目に遭わされるか、分かったもんじゃない!
僕の目が黒いうちは、絶対に1〜5位の座は渡さないよ!
ねぇ、君たち。
今さぁ〜、「そんなクズなら、力があるうちに同盟メンバーと協力して刈りとれよ!」って思ったでしょ?
昔は、他にも似たような古参魔王がいて……僕も若かったから、其奴らを何十人も殺したんだけど……
結局、「新しいクズ」が補充されるだけだと気付いて諦めたんだよね。
報われないことに労力を費やすより、「クズにクズを殺させる」自浄作用に期待する方が楽だったのだ。
「なんとなく想像ついて笑えないです。ところで……もしハイドンや他のヤバイ先輩が、<農民>同盟の座を脅かすほど成長したらどうなさるんですか?」
「ん? そこまで大きくなる前に殺すよ。君たちがいなかったら、ハイドンを今期の”殺戮ポイントランキング”で糧にしていただろうし」
アイツは期が変わるたびに後輩から搾取して、チマチマ勢力を伸ばしていたからね。
そろそろ「バカな新人」だけでなく、「将来有望な子」も喰われると思ったから、刈り取ろうと狙っていたのだ。
「うわぁ〜。獲物を横取りしちゃってスミマセン! どうしよう!? あっ、オムツの枚数サービスします!」
「あはは、大丈夫大丈夫。代わりに6位のコーランを、順位落ちするまでポイント化したから! 魔王界はクズばかりだから獲物に困らないんだよ」
腰痛・尿モレ・記憶力の低下など……
酷くなる一方な老化現象が嫌で、薬代わりに「老化を遅らせるアイテム」を使い続けるうち、僕ら<農民>は歳をとりすぎた。
もう生きるのにも飽きたから、所属モンスターの引取先さえ見つかれば自刃したいと考え、「強くて性格もマトモな次世代」を待ち望んでいたんだ。
“新米狩り”の三人は、次世代のリーダーになりそうなメグミ君とサーシャちゃんにとって、手頃な試練になりそうだから……
「ハイドンが他者の役に立つなんて! ラッキー」と思い、仲間と一緒に一連の流れを見守っていたの。
「なるほど。僕らだけじゃ、人数不足で上位5枠を独占できないですし……あと100年は生きてもらいますよ。オムツの供給はするので安心してください」
「ありがとう。優しいね。君らが僕を追い抜かして、トップの座を守れるようになるまでは居座るつもりだから。それまでに、他の新星も現れるでしょう」
僕らの死後、遺されたモンスター達が悲惨な目に遭うのは嫌だから、養殖しなきゃ育たないレベルの軟弱な「跡継ぎ」はいらない。
自力で僕をトップの座から引きずり下ろし、「ウチの子達をお願いします」と頭を下げたくなるような魔王に、メグミ君たちが成長するまで……
<農民>同盟の5人全員で仲良く生きながらえ、のし上がろうとしてくる「欲望に正直なクズ共」を抑えておくよ。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






