141話 取引の副産物
モンティート先輩の側近である土龍さんは、<第4の試練>まで来ていたので、<第5の試練>にセレクト自販機を出現させて待機。
ランクアップした事で、自分のダンジョン以外でも出し入れできるようになった自販機を活かし、「商品の実物」を目で見てもらうことにした。
<第4の試練>のルーレットで、土龍さんが<ウ○コ砲>を引き当てたときは焦ったけど……さすがはSSランクモンスター。
汚物が発射された瞬間に全身を魔法結界で包み、一滴も浴びることなく爆笑していたよ。
そんな彼は意気揚々と<第5の試練>へ進み、部屋の端に置かれたセレクト自販機を見つけて驚いている。
『おぉ、これが主様の言っていた”オムツを売る機械”じゃな! オムツの他にも、珍しい商品が並んでおるのぉ〜。”思わず押したくなるボタン”も素晴らしい!』
商品カタログには、杖・ポータブルトイレ・車椅子etc.……もっと便利そうで、お年寄り向きの商品も載っていたんだけど……
Aランクの状態では選択制限があり、「片手で持てるサイズの商品」しか選べなかったので、このラインナップになっているよ。
『この冊子が、商品の説明書かのぉ? ふむふむ、なるほど……。目薬とクリームを買えば、目と肌の乾燥に悩んでおる主様が喜ばれるやも……』
格下だからって極端に譲歩する気はないけど、互いに納得できる条件でwin-winの取引ができたらいいな。
「土龍さん、はじめまして。僕は、<恵のダンジョン>を管理している魔王メグミです。早速ですが、売買交渉に入ってもよろしいでしょうか?」
試練部屋にはスピーカーも置いてあるため、失礼にならない程度に親しい口調で話しかける。
相手はモンティート先輩の腹心だから、(魔王アリスみたいな)洗脳系ギフトを持っている可能性もゼロじゃないけど……
疑いすぎて不信感を持たれては本末転倒なので、魔王の僕自ら話しかけることで、「先輩への信頼」をアピールしたのだ。
『おぉ、メグミ殿か。待っておったぞ! サーシャ殿のダンジョンは、斬新な造りでワクワクするのぉ〜。主様から、”コレで支払え”と言われたのじゃが……』
僕の声を聞いた土龍さんは、コチラの気持ちを察してくれたのかモニターに笑顔を向け、主人に渡された物をアイテムボックスから取り出した。
『各種スキルの習得用スクロールじゃ。得られるスキルのランクはFばかりじゃが、年若き魔王は入手に苦労すると聞く。数があると便利じゃろう』
そしてテーブルの上に並べられる、喉から手が出るほど欲しいスクロールの数々。
・火魔法Fのスクロール
・水魔法Fのスクロール
・土魔法Fのスクロール
・風魔法Fのスクロール
・雷魔法Fのスクロール
・回復魔法Fのスクロール
・アイテムボックスFのスクロール
僕やサーシャの強化は終わっているけど、配下の高ランクモンスターにスキルを与えられるチャンスだし、これを逃す手はない!
ダンジョンポイントで買おうとすると、「平凡なFランクのスクロール」1つでも300万ロル以上するのだ。
「スクロールを頂けるのは助かります。商品との交換レートはどうしますか? 一応自販機に値段は書いてあるのですが、気持ち上乗せして欲しいです」
『うむ。主様には、”1日10万ロル以下に抑えろ”と言われてきたが……随分と安いからな。スクロール1つで、30万ロル分の”買い物権”……どうじゃ?』
相場の11倍で、好きな数だけ買えるタイプの契約か。
「交換レートはそれでいいですが……ギフトの制約上、商品を揃えるのに時間がかかります。買い物するときは、10日前までに教えてください」
『分かった。ギフトの制約なら致しかたないな。では、主様への土産に爆買いして帰ろう』
僕が同意するや否や、貴重なスクロールをテーブルの上へ放り出し、自販機へ金貨を投入し始める土龍さん。
「希望があれば、次回以降”商品のラインナップ”も合わせますよ」と伝えると、小躍りしていたし……ものすごく、主人のモンティート先輩が好きなんだね。
『いや〜、ここまで爆買いしたのは久しぶりじゃった。主様は倹約家ゆえ、無駄な買い物はなさらぬからのぉ〜。助かったわい!』
こちらこそ、お買上げありがとうございます!
貴方が爆買いしてくれたおかげで、ウチも「配下用のスクロール」を14本入手できたし、万々歳ですよ!
持つべきものは、「優しくて気前のいい先輩」だね♪
僕もサーシャとコアルームで小躍りしていたところ、マジックバッグに爆買いした商品を詰め込んだ土龍さんが、意外な提案をしてきた。
『メグミ殿、せっかくじゃし主様と話してみるか? ここからでも繋げるぞ』
「えっ、いいんですか? 僕は歓迎ですけど、格違いだし迷惑なんじゃ……」
『構わんよ。”面白いヤツだ”と感じたら、取り次げと言われておるしな』
「あっ、ならえっと……ありがとうございます」
どうしよう、ついウッカリOKしちゃった!
天国のお父さん……僕<勇者>でもあるのに、今から「序列1位の魔王」と話すみたいです。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






