137話 殺戮ポイントランキング終了
身体を洗いすぎて、解像度を落とした映像でも分かるほど真っ赤になったり、小型モンスターが近寄れないくらい殺気を振りまいていた先輩トリオ。
音声をカットしていても伝わってくるイライラ感に、「このままロミオット化するかも」と思ったが……
そこら辺は、ベテランの意地もあるのだろう。
主力となるモンスターが2階層へ到着すると、怒りで時間を無駄にすることなく攻略を再開した。
「ふむ。風属性のアリス配下が、熱風の遮断とスピーディーな移動を提供。それでも防ぎきれない暑さは、水属性のハイドン配下が”氷”を出してカバーか」
先輩トリオの進み方は、派手さこそないものの危険を伴わぬよう考えられており、モンスターに無理を強いて忠誠心を枯渇させることもない。
「配下を手荒に扱うのは損」と分かった上での、打算的な配慮なんだろうけど……
敵のダンジョンで一丸となって行動できる様は、見ていて勉強になるし、性根が腐っている事を除けば参考にしたいと思うよ。
「あっ! メグミ様、また魔王アリスのカツラがズレました。次の映像コーナーへ到着される前に、"ズラずれ系の動画"も一本撮っていいですか?」
「もちろん! 女性だから断腸の思いで坊主にしたと思うし、存分にイジってやってくれ。アリスの感情が乱れれば、一緒に動いている二人にも波及する」
「かしこまりました。ついでに白髪ネタも組み込んでおきます」
「<ウ○コ砲>を浴びたら髪は凶器に変わる」と学んだアリスが、薄くて二次被害の少なかったハイドンを真似、ツルピカ坊主にしたり……
坊主を隠すカツラがずれる度、男性二人がリアクションを取り一悶着あったりと、見苦しい部分も見え隠れするけどね。
予想より速いペースで、ダンジョンを攻略されているが……僕も黙って見ているわけじゃない!
主力が庇えない位置にいる中堅モンスターや、偵察で別行動している斥候を奇襲攻撃で間引き、ジワジワと奴らに痛手を与えているのだ。
戦力って意味では殆ど減っていないけど……「目鼻の役割をこなす偵察班」や「当て馬役の中堅」を削ることで、後々の安全性を低下させることができるからね。
コッチは快適なコアルームでターゲットの能力を判定し、それより格上のモンスターを「倍の数」派遣するだけだから……
犠牲も出ないし、前半戦としては理想的だと思うよ。
殺戮ポイントランキングのために、<未設定のダンジョン>周辺でウチの子達と”狩り”をしているサーシャも、順調そのもの。
犠牲者が出るほどの大物は避け、手頃なランクのモンスターを安全に倒すことで、堅実にポイントを稼いでくれている。
<蠱毒のダンジョン>にいるハイドンの配下も、僕らと同じような方法でラストスパートをかけているのか、ポイント差は縮まっているけど……
残り時間が半日もないことを考えると、ここから逆転される可能性は低いだろう。
魔王掲示板に所在地を書き込まれたせいで、「カモろう!」と周りをうろついていた”ハイエナ魔王の偵察隊”も、時期が時期だけに姿を消した。
僕らは今もバトルのまっ最中だけど……魔王界全体の流れとしては79期を迎える態勢に入っているため、得もないのに争って戦力消耗したくないんだよ。
年老いすぎて空気の読めない”新米狩り”は、今も<未設定のダンジョン>の所在地を魔王掲示板にさらして、「包囲網をしき潰すべきだ!」と主張しているが……
金・戦力・時間を消費してまで、ミッションの足しにもならず宝箱すらほとんど出ない、”地雷ダンジョン”を攻める物好きはいないよね〜。
そんなこんなで、慌ただしい時間を過ごしていると……期間限定ミッションが入れ替わり、殺戮ポイントランキングの結果が送られてきた。
「メグミ君ただいま〜。順位確保できたかな?」
「うん。ラストスパートで差は縮まったけど、無事10位・11位でフィニッシュできたよ!」
「良かった〜♪」
〜殺戮ポイントランキング・最終結果〜
10位:恵のダンジョン(1693,7518P):魔王メグミ
11位:未設定のダンジョン(1693,7518P):魔王サーシャ
12位:蠱毒のダンジョン(1546,3962P):魔王ハイドン
13位:陽炎のダンジョン(1546,3962P):魔王クルス
14位:魅惑のダンジョン(1546,3962P):魔王アリス
<−−− 優秀な成績をおさめた魔王メグミには、報酬として上級カタログギフトをプレゼントします。3ヶ月以内に、好きなものを選んでください −−−>
いつもは「決まった報酬」を渡されるんだけど、今回は”カタログギフト”という冊子の中から自由に選べる形式みたいだ。
「11位」と表示されているサーシャも扱い的には「同率10位」らしく、同じ冊子が届いたので……二人でゆっくり、何をもらうか話そうと思う。
「う〜ん。8階層じゃ封鎖もままならないから……ミッションの結果で凹んだ三人が上へ戻らぬよう、一発あおる必要があるな。掲示板にイタズラ書きしちゃおっと!」
「ふふっ。メグミ君、私もお手伝いしま〜す♪」
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






