135話 細々した手の応酬
敵の会話を盗聴できずとも”喜怒哀楽”や”警戒心”だけは掴めるように、業務口からモスキートを300体送り出し、違和感がないよう四方に散りばめる。
相手は大ベテランばかりなので、蚊の気配にも気付くと思うが……MP消費や時間効率を考えると、攻撃するだけ損になる相手。
モスキートを自慢の魅了ギフトで手駒にしても、ストック数を無駄に消耗するだけだから、無視を決め込むしかないだろう。
「おや? 三人がなにか話し込んでいるな。あっ……配下の高ランクモンスターが、八方向全ての業務口へ向か……! マズイ。封鎖封鎖!!」
ハイドンの配下が業務口へ水魔法を打ち込む寸前、予備の小型モンスターを撤退させ、入り口から1mほどのところで遮断した。
「MP効率が悪くなる砂漠の真ん中で、水魔法を無駄打ちしてくるとは思わなかったよ。ダンジョンの機能で、さっさと水を回収して……あれ?」
あ〜なるほど、水の中に”召喚された小さなミジンコ”が大量に混ざっているな。
召喚モンスターが混入している状態じゃあ、それらを排除するまで「水の所有権」もあちら持ちになり、自動ではけさせる事ができないよ。
「メグミ様、業務口の処理はどういたしましょう? 敵の侵入を許したわけではないですし、大人しく召喚解除されるまで待ちますか?」
「いや……味方を避難させたあと、封鎖エリアを一段階引いて毒を混ぜ込もう。僕が、感情的になっている風を装いたい」
「かしこまりました。手配します」
敵が地上のモスキートを火魔法で駆除している間に、コチラも毒でミジンコを蹴散らし排水作業を終わらせる。
小型モンスターは、空気中に残った微かな毒でも生死に関わるほど影響を受けてしまうから、空気が循環するまでは封鎖を解除できないけど……
その気になれば、いつでも<モスキート攻撃・第二弾>を繰り出せるし、コチラの害意は充分に伝わったはずだ。
僕が強硬な姿勢を示すと、“新米狩り”の三人は「相手にするだけ時間のムダ」と諦めたのか、地上の拠点を引き上げて<天国と地獄>フロアへ移動。
<幸運系アイテム>と<透明化ギフト>の併用で、1階層突破を試みようとした。
「ふふっ。スピーカーの音量をゼロにしているから、何を言っているのか聞こえないけど……その部屋にいるのは分かるよ。酸素消費量が極端に多いからね」
<透明化ギフト>を使われると人数にカウントできず、ルーレットのミッションも課せないが、それだと敵にナメられるので僕なりのプレゼントを用意。
1〜10全ての試練で、三人に化けたドッペルゲンガーが演じる「ア〜ン♪」な映像を、延々と流してやった。
先輩トリオは「経験豊富なベテラン」らしく、怒りで壁を殴りつけ<透明化>を台無しにしない程度の、理性は持ち合わせていたけど……
動画が山場を迎えるたび、特定の部屋だけ酸素消費量が激しくなり、透明化せずミッションを受けている「気の毒なモンスター」がビビっていたよ。
<−−− 厳正なる抽選の結果、部屋番号4番の方に課されるミッションは、地獄”細菌シャワー”に決定しました。準備を行いますので暫くお待ちください −−−>
どうせ消毒するだろうから効果は見込めないけど、景気付けに「ウ○コ水のシャワー」も部屋全体に散布しておいたので、少しは嫌がらせできたはずだ。
「んみゅ〜。メグミ君おはよう。昨日は楽しかったね〜」
「おはようサーシャ。今”新米狩り”の先輩トリオが来ているから……上層階で抑えられているうちに、殺戮ランキングのポイント稼ぎたい。手伝って!」
「了解! メグミ君の配下を率いて、<未設定のダンジョン>周辺でモンスター狩りしてくるね♪」
「お願いします!」
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サーシャが起きたことでコチラの手札も揃ったから、<第10の試練>をくぐり抜けそうな先輩トリオに、”あおり用チラシ”をプレゼント。
室内の酸素消費量がしっかり増えたのを確認したのち、いつもの<天国と地獄フロア>になるよう設定を戻した。
ロミオット達の元配下をいじめた、”新米狩り”配下を引き取るつもりはないので、難易度を下げる気は毛頭ないが……
モンスターに「ア〜ン♪」な映像を見せても、趣深く鑑賞してくれないと思うので、元のスパルタコースに切り替えただけだ。
配下の中でも序列が高いモンスターは、<幸運系アイテム>でゴリ押してくると思うけど……2,3発はダメージを受けてもらうよ。
「あれ? 2階層へ入って、ようやくクルス達が<透明化>を解いたと思ったら……随分消耗しているなぁ。ちょっとサジ加減を間違えたか?」
とりあえず、紅一点のアリス先輩。
目元の“濃いクマ”をドーランで隠さないと、(魅惑?)の美貌が台無しですよ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






