131話 「肉を取る前の鳥」と大差ない
〜ナステックside〜
高利で押し付けられた借金を返さなければと、意地で地獄のようなバイトを頑張っていたが……もう限界だ!
「うぅ……ああぁぁあぁぁ!!」
なぜ高貴な生まれであるこの私が、ゾンビの相手などせねばならん!
奴の身体が動くたび、ボトボトと腐肉や飯の残骸がこぼれ落ち、あまりの臭さに吐きそうなんだよ!
「ぁぁぁ……ああぁぁあぁぁ!!」
「うるさい、この下等生物! 薄汚い身体で私に近寄るな!!」
我慢すること30分……ついに我慢の限界がきてしまい、私はあらん限りの力でゾンビを殴り飛ばした。
<−−− お客様への暴力が確認されました。店への罰金・および賠償金として500万バイト頂きます −−−>
くっ、また借金が増えてしまった。
だが今回の件は仕方ない。
ゴーレム3体とともにバリバリ働いて、利息が増えないうちに返せば問題にはならないはず……
<−−− 今回の暴力事件で、ナステック名義の借金が1000万バイトを超えたので、フロア規定により”返済不可能”と見なし内臓払いといたします −−−>
「なんだと!? そんなこと書いてあった気もするが、今回のは不可抗力だろう。撤回を要求する!」
<−−− 3分以内に、ナステック名義の借金が1000万バイトを下回らない場合、 強制執行となりますのでご了承ください −−−>
返済する気はあるというのに、アナウンスの声は淡々と「ルール通り」の対処を宣告してきた。
「ヤバイぞ。ここの時給なんて、どれだけ身をすり減らし働いても5000バイト程度だ。3分で返済できるわけ……」
<−−− 3分経過しましたので強制執行に移ります。返せないものは、身体を売ってでも支払ってください −−−>
非常なアナウンスが流れた瞬間、オリハルコンゴーレムに容赦なく拘束された私は……部屋へなだれ込んできた敵どもの中に、旧知の顔を見つけて驚く。
「メグミ、サーシャ……なぜ貴様らがここに居るんだ!?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜メグミside〜
ゾンビをお客さんとして送り込んだところ、ナステックが「客に暴力をふるう」という禁忌を犯したので、Sランクモンスターと一緒に現場へ乗りこむ。
耐えきれず逃げ出すパターンだと思っていたのに、まさか再び借金を重ね自ら「内臓払い」へ導くとは……バカにも程があるだろう!
人間だった頃、コイツの世話を任されていた使用人は、主人の愚かさに陰で呆れていたんだろうなぁ。
「メグミ、サーシャ……なぜ貴様らがここに居るんだ!? 元クラスメイトにこんな事するなんて卑怯だぞ!!」
僕としては、すでに「肉を取る前の鳥」と大差ない存在だから、目的のモノさえ回収できればそれでいいんだけどね。
「黙れ、元イジメっ子C! 自分の愚かさの報いが、今返ってきただけだろ? 諦めて全てを差し出すんだな。まずは、モンスターの譲渡手続きをするぞ」
僕が「ナステック配下を全員引き取る」と言うと……案の定ヤツは、拘束された手足が引き千切れんばかりに暴れ出した。
「ふざけんなよ下民! 私が育ててきた戦力を、なぜ貴様なんぞにくれてやらねばならん! 死ねっ、今すぐ死んでモンスターの糞になれ!」
ホムビッツ&ロミオットの時も思ったが、コイツ等には学習能力というものがないようだ。
<−−− ダンジョンマスターへの暴言が確認されました。ペナルティーとして、ゾンビからの熱いキスを与えます −−−>
「やっ、やめ……おエェェェッッッ…………」
殴られた怨みを晴らすように、ゾンビはナステックを抱きしめ熱いキスを交わす。
ダイレクトに鼻をつんざく腐臭に白旗をあげたヤツは、ペナルティーから解放されてすぐ、「従う! メグミ様に従います!」と180度意見を変え……
泣きながら、モンスターの移籍同意書にサインした。
モンスター達の命が保証されたことで安心した僕は、サーシャとともに拘束された奴の手を認証したあと……
仕上げに取り掛かるため、ナステックの汚い腹に消毒液を吹きかける。
するとヤツは「自らの内臓を取られる」と悟ったのか、青白い顔で助命を懇願してきた。
「めっ、メグミ様・サーシャ様……お願いです! 借金はコツコツ働いて返すので、それだけはやめてください! 心臓とか脳取られたら死んじゃう」
僕としては、クズが世の中の酸素を消費するだけで不快だから、もう汚い口を開かないで欲しいんだけど……心臓はサーシャのモノだからな。
メスを引いてザクっと腹を開きつつ、昔ナステック本人が言っていた「強者こそ正義」という主張を、そのまま返してやったよ。
「敗者が勝者に虐げられるのが世の定めだろ? 恵まれた立場を与えられたのに、ここまで落ちぶれたのは自分の責任……大人しく僕らの糧となれ」
「なっ……!? くそぅ……このフロアさえ抜ければ私の勝利だったのに! 運良く勝った分際で調子に乗るなぁ……この外道が…………!!」
僕の運と、コイツが落ちぶれたことに因果関係など無いのだが、本気で勘違いしているので最期に一つ教えてやる。
「ウチは、60階層まである大型ダンジョンだぞ。この辺りの階層は、コアルームを守る壁じゃなく……獲物を誘い込んで捕らえるための狩場にすぎんよ」
「そんなっ!?」
良かったな、ナステック……最期に「自分の都合で物事を決めつけちゃいけません」という、一般常識を”お勉強”できて。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






